妊婦さんは注意?赤ちゃんを守る“栄養素”の適正量と「3つの初期症状」【医師監修】

妊婦さんは注意?赤ちゃんを守る“栄養素”の適正量と「3つの初期症状」【医師監修】

悪性貧血は女性に多くみられる傾向があり、橋本病などほかの自己免疫疾患を合併するケースもあります。また、食生活によるビタミンB12の摂取不足も欠乏症の原因となります。自己免疫疾患との関連や、ヴィーガン・ダイエット中の方が知っておきたいリスクについて解説します。

山本 佳奈

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)

滋賀医科大学医学部卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科

妊娠・授乳中の女性とビタミンB12欠乏症のリスク

妊娠や授乳中は、胎児や乳児の成長・発達のためにビタミンB12の必要量が増加するため、ビタミンB12欠乏症に注意が必要な時期です。特に、悪性貧血などによる吸収障害や、動物性食品の摂取不足がある場合には、母体だけでなく胎児や乳児にも影響を及ぼす可能性があります。このセクションでは、妊娠・授乳期におけるビタミンB12の役割と、不足による母体や赤ちゃんへの影響について解説します。

妊娠中のビタミンB12需要の増加とその影響

妊娠中は、胎児の細胞分裂や脳・神経系の正常な発達を支えるため、母体のビタミンB12の必要量が増加します。

ビタミンB12は「葉酸(ようさん)」とともにDNA合成に重要な役割を果たすため、この時期にビタミンB12が不足すると、母体では貧血や倦怠感などの症状が現れることがあります。また、妊娠中のビタミンB12不足は、胎児の神経管閉鎖障害との関連が報告されており、適切なビタミンB12および葉酸の摂取が重要と考えられています。

特に妊娠初期から中期にかけて、悪阻(つわり)や食欲不振が続くと十分な栄養摂取が難しくなることがあります。吐き気のために肉や魚、卵などの動物性食品をほとんど摂取できない状態が続く場合には、ビタミンB12不足のリスクが高まります。さらに、妊娠前からヴィーガン(完全菜食)や動物性食品の摂取が少ない食生活を続けている方では、医師に相談のうえ、必要に応じて血液検査による栄養状態の評価やビタミンB12の補充を検討するとよいでしょう。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」においても、通常の成人女性のビタミンB12推奨量である「2.4μg/日」に対し、妊婦では目安用として1日4.0μgの摂取が推奨されています。胎児の正常な発育を支えるためにも、妊娠中は必要量を満たせるよう、バランスの良い食事や必要に応じた栄養補給を心がけることが大切です。

授乳中の注意点と赤ちゃんへのビタミンB12の影響

出産後の授乳期(母乳育児中)の赤ちゃんは、必要なビタミンB12を主に母乳から摂取します。しかし、母親にビタミンB12欠乏症があると、母乳中のビタミンB12濃度も低下し、乳児がビタミンB12欠乏症を発症するリスクが高まります。特に、母親がヴィーガンなど動物性食品をほとんど摂取しない場合や、悪性貧血、胃切除後などによる吸収障害がある場合には注意が必要です。

乳児期のビタミンB12欠乏症は、巨赤芽球性貧血だけでなく、脳や神経の発達にも影響を及ぼす可能性があります。具体的には筋緊張の低下、運動発達の遅れ、活気の低下、哺乳力の低下などがみられることがあり、発見や治療が遅れると神経学的な後遺症が残る場合もあります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、授乳婦のビタミンB12の目安量は1日4.0μgとされています。特に、ヴィーガンなど動物性食品の摂取が少ない方や、悪性貧血、胃切除後などの吸収障害がある方は、医師に相談し、必要に応じて血液検査やビタミンB12補充を検討することが大切です。

なお、完全菜食(ヴィーガン)などで動物性食品の摂取が少ない方や、胃切除後、悪性貧血などによってビタミンB12の吸収が低下している方では、食事だけで必要量を満たすことが難しい場合があります。妊娠中や授乳中は、自己判断で対応せず、産婦人科や内科の主治医に相談し、必要に応じてビタミンB12製剤(経口薬や筋肉注射)による補充療法を受けることが大切です。適切なビタミンB12管理は、母体だけでなく赤ちゃんの健やかな発育を支えることにもつながります。

まとめ

悪性貧血は、ビタミンB12の吸収障害によって起こる代表的なビタミンB12欠乏症です。疲れや息切れといった貧血症状だけでなく、手足のしびれ、舌の痛み、気分の落ち込み、記憶力の低下など、一見すると貧血とは結びつきにくい症状が現れることもあります。
ビタミンB12欠乏症の背景には、悪性貧血(自己免疫性胃炎)のほか、胃切除後、動物性食品の摂取不足、妊娠・授乳、加齢など、さまざまな原因が考えられます。症状が気になる場合やリスク因子がある場合は、自己判断せず、内科や血液内科などでビタミンB12値を含めた血液検査を受けることが大切です。
ビタミンB12欠乏症は、早期に発見し適切な補充療法を開始すれば改善が期待できる疾患です。一方で、神経症状は治療が遅れると回復に時間がかかったり、一部の症状が残ったりすることがあります。「年齢のせい」「疲れのせい」と見過ごさず、気になる症状があれば早めに医療機関へ相談しましょう。

参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

国立健康・栄養研究所「ビタミンB12の解説」

配信元: Medical DOC

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