「筋肉量が多い人」は要注意?“クレアチニン”数値の正しい見方と注意点【医師監修】

「筋肉量が多い人」は要注意?“クレアチニン”数値の正しい見方と注意点【医師監修】

尿素窒素(BUN)とクレアチニンは、腎臓の働きを評価するための代表的な血液検査項目です。この2つの数値には、それぞれ異なる特徴と役割があります。どちらか一方だけを見るよりも、組み合わせることでより正確な腎臓の状態の把握につながります。BUNとクレアチニンが何を示しているのか、またBUN/Cr比(比率)がどのように活用されるのかについて解説します。

田中 茂

監修医師:
田中 茂(医師)

2002年鹿児島大学医学部医学科卒業 現在は腎臓専門医/透析専門医として本村内科医院で地域医療に従事している。
専門は内科学・腎臓内科・血液透析・腹膜透析・臨床疫学・生物統計学

尿素窒素(BUN)とクレアチニンの基本的な関係

尿素窒素(BUN)とクレアチニンはどちらも腎臓の機能を評価するための血液検査項目です。この2つの数値を組み合わせて確認することで、腎臓の状態をより正確に把握できます。このセクションでは、それぞれの役割と相互の関係について解説します。

尿素窒素(BUN)とは何か

尿素窒素(BUN)とは、血液中に含まれる尿素に由来する窒素成分のことです。私たちが食事から摂取したたんぱく質は、身体の中でアミノ酸に分解されて利用されます。その過程で生じた不要なアンモニアは、肝臓において尿素という形に変換されます。この尿素は血液によって腎臓に運ばれ、尿として身体の外に排出されます。
BUNとはBlood Urea Nitrogenの略称で、血液中に残っている尿素の量を「窒素」の量として測定した値です。腎臓が正常に機能していれば、尿素は効率よく尿中に排出されるため、血液中のBUN値は一定範囲に保たれます。しかし腎臓の働きが低下すると、尿素を十分に排出できなくなり、血液中にBUNが蓄積して数値が上昇します。
一方で、BUNはたんぱく質の摂取量や身体の状態によっても変動するため、BUNだけで腎臓の機能を断定することは難しいとされています。たとえば、たんぱく質を多く含む食事を続けたあとや、激しい運動・脱水状態のときにもBUNが上昇することがあります。そのため、後述するクレアチニンと合わせて評価することが一般的な考え方です。

クレアチニンとは何か

クレアチニンは、筋肉のエネルギー代謝の過程で生成される老廃物です。筋肉中にはクレアチンリン酸というエネルギー物質が存在し、筋肉を動かすたびにクレアチニンが産生されます。このクレアチニンも血液によって腎臓に運ばれ、ほぼすべてが糸球体(しきゅうたい)と呼ばれる腎臓のフィルター部分でろ過されて尿中に排出されます。
クレアチニンの産生量は、その方の筋肉量にほぼ比例していることから、食事内容に関係なく比較的安定した値を示します。このため、クレアチニンは腎機能を評価するうえで信頼性が高い指標と位置づけられています。腎臓の機能が低下して尿中への排出が滞ると、血中のクレアチニン濃度が上昇します。
筋肉量が多い方(たとえば男性や運動習慣のある方)は、もともとクレアチニンの産生量が多いため、数値がやや高めに出る傾向があります。逆に、筋肉量が少ない高齢者や女性では数値が低くなりやすく、腎機能の低下があっても数値が正常範囲内に収まってしまうケースもあります。このため、年齢・性別・筋肉量を考慮して解釈することが大切です。

BUN・クレアチニン比(BUN/Cr比)の意味

BUNとクレアチニンを個別に見るだけでなく、その比率(BUN/Cr比)を計算することで、腎機能低下の原因や状態をより詳しく評価することができます。一般的に、BUN/Cr比の正常範囲は10〜20程度とされています。
この比率が20を超える場合、腎臓の手前(前腎性)で問題が起きている可能性があります。具体的には、脱水・出血・心不全などにより腎臓への血流が減少した状態や、消化管出血によってたんぱく質の分解産物が増えている状態などが考えられます。一方、比率が10を下回る場合は、腎実質(腎臓そのもの)に障害がある可能性や、たんぱく質摂取量が極端に少ない状態などが考えられます。
このように、BUNとクレアチニンは単独で評価するよりも、組み合わせて確認することで、腎臓のどの部分にどのような問題があるのかを推測する手がかりになります。実際の診療では、医師がこれらの数値と症状、その他の検査結果を総合的に判断したうえで、適切な対応を検討します。

まとめ

尿素窒素(BUN)とクレアチニンは、腎臓の働きを知るための大切な指標です。基準値を超えた場合は、食事内容の見直しや生活習慣の改善を行うとともに、医療機関での精密検査を受けることが大切です。早期発見と適切な管理で、進行を遅らせることが期待できます。健康診断の結果に異常を感じた際は、一人で抱え込まず、まずは内科や腎臓内科に相談してみてください。日々の小さな積み重ねが、腎臓を守ることにつながります。

参考文献

厚生労働省「第7回 慢性腎臓病(CKD)ってなぁに?」

日本腎臓学会「CKD診療ガイドライン2023」

東京大学医学部附属病院「腎臓・内分泌内科」

日本透析医学会「わが国の慢性透析医療の現況」

配信元: Medical DOC

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