“背中の激痛”は「脊髄梗塞」のサイン? 見逃せない“3つの初期症状”【医師監修】

“背中の激痛”は「脊髄梗塞」のサイン? 見逃せない“3つの初期症状”【医師監修】

脊髄梗塞の初期症状として、前触れなく突然始まる激しい背中や首の痛みが挙げられます。障害される脊髄の部位によって、両足の麻痺や両手・両足の麻痺といった運動障害が急激に現れることがあります。このセクションでは、どのような症状の現れ方が脊髄梗塞の特徴といえるのか、具体的に解説します。脊髄梗塞では、突き刺すような背部痛や頸部痛が数分から数十分以内に強まり、その後すみやかに運動障害が現れることがあります。胸髄が障害されると両足の麻痺が、頸髄が障害されると四肢すべての麻痺が起こりやすいとされています。麻痺は完全に動かせなくなる場合から、力が入りにくい程度のものまでさまざまです。大切なのは、こうした変化が「数分〜数時間という短時間で」「左右対称的に」現れるという点です。「歩いていたら急に足の力が抜けた」「朝起きたら両足がまったく動かなくなった」といった変化がみられたときは、すみやかに119番通報で救急車を要請されることをおすすめします。

伊藤 たえ

監修医師:
伊藤 たえ(医師)

浜松医科大学医学部卒業。浜松医科大学医学部附属病院初期研修。東京都の総合病院脳神経外科、菅原脳神経外科クリニックなどを経て赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長に就任。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳ドック学会認定医。

脊髄梗塞の初期症状:発症直後に現れるサインとは

脊髄梗塞(せきずいこうそく)は発症のスピードが極めて速く、初期症状に気づいた時点での迅速な行動(救急搬送など)が極めて重要です。早期に医療機関を受診することで、背景に潜む大動脈解離などの命に関わる重篤な病気を見極め、症状の悪化を防ぐための適切な全身管理(血圧管理など)をいち早く開始することができます。このセクションでは、脊髄梗塞が発症した直後に現れる代表的な初期症状と、その医学的な特徴について詳しく説明します。

突然始まる痛みと運動障害

脊髄梗塞の最も決定的な初期症状のひとつが、『前触れもなく突然発症する激しい背部痛や頸部痛』です。多くの場合、背中や首のあたりに突き刺すような、あるいは締め付けられるような激痛が数分から数十分以内に急速に強まり、それに続いて手足の運動機能の障害が急速に現れるとされています。

この運動障害は、血管が詰まった脊髄の部位によって現れ方が大きく異なります。胸髄(背中側の脊髄)が障害された場合には両足の麻痺(対麻痺)が起きやすく、頸髄(首側の脊髄)が障害された場合には両手・両足のすべてに影響が及ぶ四肢麻痺を引き起こします。麻痺の程度は、手足が完全に動かせなくなる重症な場合もあれば、脱力感が生じて力が入りにくい不完全なものにとどまる場合もあります。

重要なのは、こうした運動障害が「急激に(分・時間単位で)」「左右対称的に」現れるという点です。「歩いていたら突然足の力が抜けて倒れた」「朝起きたら急に両足がまったく動かなくなった」といった激しい変化が当てはまります。このような異変を感じた場合には、時間を置かずにただちに119番通報で救急車を呼び、脳神経内科や脳神経外科などの専門医療機関へ緊急搬送してもらうことが何より大切です。

感覚の変化と排泄機能への影響

運動障害と並んで極めて高い頻度で現れるのが、自覚しやすい感覚の異常です。脊髄梗塞(特に最多とされる前脊髄動脈症候群)では、障害された部位より下の領域に「手足のしびれ」「皮膚の感覚が鈍い」「何も感じない」といった感覚障害が生じます。

ここで特徴的なのは、触られている感覚(触覚)は比較的残っているにもかかわらず、「お湯の熱さがわからない」「ピンで刺されても痛くない」といった熱さ・痛みの感覚だけが選択的に消えてしまう「感覚解離(かんかくかいり)」という現象が起きやすい点です。腰から下の皮膚を触っても感触のズレが生じるなど、通常のしびれとは異なる不快な変化が起こります。

さらに、脊髄は排泄をコントロールする神経系にも深く関わっているため、初期症状として「尿意はあるのに尿が全く出なくなる(尿閉)」、あるいは「自分の意思に反して尿が漏れてしまう(尿失禁)」といった深刻な排尿障害が同時に現れるケースが非常に多く見られます。排便のコントロールが効かなくなる排便障害が同時に起きることも少なくありません。こうした症状は、患者さん本人が「恥ずかしい」と感じて医療陣に伝えるのを躊躇してしまい受診が遅れる要因になりがちですが、脊髄梗塞の正確な診断を下すうえで極めて重要な医学的手がかりとなります。

初期症状全体を通じて言えるのは、発症から症状が完成するまでの時間が数十分〜数時間と極めて短いということです。脊髄梗塞には脳梗塞のような「血栓を溶かす特効薬」は現在確立されていませんが、血圧などを適切にコントロールして脊髄へのこれ以上のダメージを防ぐためには一刻も早い医療介入が必要です。少しでも首や背中の激痛に伴う手足の脱力やしびれ、排尿異常を感じたら、迷わず救急受診することが強く求められます。

まとめ

脊髄梗塞は、急激な背部痛・麻痺・感覚障害・排尿障害といった症状が特徴で、発症後の迅速な対応が回復の可否に関わります。糖尿病をはじめとする生活習慣病がリスクを高めることから、日頃からの血圧・血糖・脂質の管理が予防の鍵となります。少しでも異変を感じた場合は、脳神経外科への早めの受診を心がけてください。

参考文献

厚生労働省「糖尿病の合併症 | 健康イベント&コンテンツ」

日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイドライン2024」

配信元: Medical DOC

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