クレアチニンとは、筋肉が活動するときに生じる老廃物の一種です。腎臓でろ過されて尿として排出されますが、腎機能が低下すると血液中に溜まりやすくなります。そのため、クレアチニン値は腎臓の働きを測る指標として広く活用されています。腎細胞がんとの関係や、どのような場面でこの値が重要になるのかを確認しておくことが大切です。

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科
腎細胞がんとクレアチニンの基本的な関係
腎細胞がんとクレアチニンは、腎臓の機能を通じて深く結びついています。このセクションでは、クレアチニンとはどのような物質であるか、そして腎細胞がんがクレアチニン値にどのような影響を与えるのかについて解説します。
クレアチニンとはどのような物質か
クレアチニンとは、筋肉が活動するときに生じる老廃物の一種です。筋肉の中にある「クレアチン」という物質がエネルギーとして使われると、その最終産物としてクレアチニンが生成されます。生成されたクレアチニンは血液中に溶け込み、腎臓でろ過されて尿として身体の外に排出されます。
腎臓が正常に機能している場合、クレアチニンは一定の速さで血液中から取り除かれるため、血液中の濃度は安定しています。しかし腎臓の機能が低下すると、クレアチニンをうまくろ過できなくなり、血液中の濃度が上昇します。このため、血液中のクレアチニン値は腎機能を測る指標として広く活用されています。
クレアチニンの産生量は筋肉量に比例するため、男性は女性よりもやや高い値になる傾向があります。また、筋肉量が多いスポーツ選手や、逆に筋肉量が少ない高齢者では、腎機能が同じであっても値に差が出ることがあります。クレアチニン値だけで腎機能を判断することは難しく、年齢・性別・筋肉量なども考慮したうえで総合的に評価されます。
腎機能の評価には、クレアチニン値をもとに計算される「eGFR(推算糸球体ろ過量)」という指標もよく用いられます。eGFRは、腎臓が1分間にどれだけの血液をろ過できるかを推定した数値で、腎機能の程度を把握するうえで重要な参考値となります。
腎細胞がんがクレアチニン値に与える影響
腎細胞がんは、腎臓の細胞ががん化して発生する悪性腫瘍です。人間には腎臓が左右に2つあるため、仮に片方の腎臓に腫瘍ができても、もう片方の腎臓が正常に働いていれば不足分を補う(代償機能)ため、クレアチニン値は正常範囲に保たれることがほとんどです。両側の腎臓にがんができた場合や、末期まで進行した場合など極めて稀なケースを除き、「がんができたこと」そのものが原因で急激にクレアチニン値が上昇することはあまりありません。
一方で、腎細胞がんの診療においてクレアチニン値が大きく変動し、注意が必要になるのは「がんの治療時」です。
治療として腎臓の一部または全部を摘出する手術が行われた場合、術後は腎機能の全体量が低下するため、クレアチニン値が上昇することが一般的です。特に片方の腎臓をすべて摘出した場合は、もう一方の腎臓だけで機能を担うことになるため、術後のクレアチニン値の厳重な管理が欠かせません。
さらに、腎細胞がんの治療に用いられる分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬(がん細胞を狙い撃ちしたり、免疫の力を利用したりする薬)などの薬物療法によっても、副作用として腎機能にダメージが生じることが報告されています。そのため、治療前はもちろん、治療中も定期的にクレアチニン値を確認し、腎機能の変化をモニタリングすることが極めて重要になります。
まとめ
腎細胞がんは初期症状が現れにくいため、早期発見には健康診断での超音波(エコー)検査や尿検査が非常に有効です。また、血液検査でわかる「クレアチニン値」は、がんの直接的なサインではありませんが、いざ手術や薬物療法を行うとなった際に、残された腎臓の機能を評価するための重要なバロメーターとなります。クレアチニン値の異常を指摘された場合は慢性腎臓病などの可能性もあるため、自己判断せずに腎臓内科を受診し、ご自身の腎機能を正しく把握しておくことをおすすめします。
参考文献
国立がん研究センター「腎がんとは | 国立がん研究センター中央病院」
厚生労働省「健康・医療腎疾患対策」
がん情報サービス「腎臓がん(腎細胞がん) 検査」
- 「転移性肝臓がん」を発症すると”目”に現れる症状とは?他の症状も医師が解説!
──────────── - 何をし続けると「腎臓がん手術後の予後」が悪くなる?生存率や症状も医師が解説!
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