妊娠中や授乳中は、胎児や赤ちゃんの発育のためにビタミンB12の必要量が増えます。母体のビタミンB12が不足すると、赤ちゃんの神経発達にも影響が及ぶ可能性があります。妊娠・授乳期に知っておきたい必要摂取量の目安や、不足を防ぐためのポイントについて解説します。

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
滋賀医科大学医学部卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科
ビタミンB12を効率よく摂る食事のポイント
ビタミンB12欠乏症の予防には、日頃からビタミンB12を多く含む食品を適切に摂取することが大切です。一方、悪性貧血など吸収障害が原因の場合は、食事だけでは十分に補えないため、医師の指導のもとでビタミンB12補充療法が必要になります。ここでは、ビタミンB12を多く含む食品や、効率よく摂取するためのポイントについて解説します。
ビタミンB12を多く含む食品とその摂取量の目安
ビタミンB12は、動物性食品に多く含まれますが、特定の食品だけに偏る必要はありません。魚、肉、卵、乳製品をバランスよく取り入れることが大切です。なお、妊娠中はレバーに含まれるビタミンAを過剰に摂取しないよう注意が必要です。また、悪性貧血や胃切除後など吸収障害がある場合は、食事だけでは十分に補えないため、医師の指導のもとでビタミンB12補充療法を受けることが重要です。
ビタミンB12を含む代表的な食品と、その含有量(100gあたりの目安)を以下に示します。
しじみ(生):約68μg/100g
あさり(水煮缶):約64 μg/100g
牛レバー(生):約53μg/100g
鶏レバー(生):約44μg/100g
さんま(焼き):約16μg/100g
まいわし(焼き):約22μg/100g
牛乳:約0.3μg/100g(コップ1杯〔約200mL〕あたり約0.6μg)
卵:約1.1μg/100g(Mサイズ1個あたり約0.5〜0.6μg)
※上記のビタミンB12含有量は、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を参考にしています。食品の種類や調理法によって数値は異なります。
成人女性のビタミンB12の推奨摂取量は1日4.0μg(※2025年版「日本人の食事摂取基準」)で、さんま1尾程度でも1日分をほぼ補うことができますしかし、動物性食品の摂取が少ない食生活が長期間続くと、体内の貯蔵量が徐々に減少し、ビタミンB12欠乏症を発症するリスクがあります。
一方で、ビタミンB12は水溶性ビタミンであり、通常の食事からの摂取で過剰摂取による健康被害はほとんど報告されていません。そのため、魚や肉、卵、乳製品などをバランスよく取り入れ、必要量を満たすことを心がけましょう。
食事でのビタミンB12吸収を高めるポイント
ビタミンB12は、胃酸によって食品から切り離された後、内因子と結合して回腸で吸収されます。そのため、加齢や胃酸分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など)、あるいはメトホルミンの長期服用などでは、ビタミンB12欠乏症のリスクが高まることがあります。長期間これらの薬剤を使用している方や、貧血、しびれなどの症状がある方は、必要に応じてビタミンB12値を確認するとよいでしょう。
また、葉酸(ビタミンB9)はビタミンB12とともにDNA合成や赤血球の産生に重要な役割を果たします。魚や肉、卵、乳製品に加え、緑黄色野菜や豆類も取り入れたバランスのよい食生活を心がけることが大切です。
まとめ
悪性貧血は、ビタミンB12の吸収障害によって起こる代表的なビタミンB12欠乏症です。疲れや息切れといった貧血症状だけでなく、手足のしびれ、舌の痛み、気分の落ち込み、記憶力の低下など、一見すると貧血とは結びつきにくい症状が現れることもあります。
ビタミンB12欠乏症の背景には、悪性貧血(自己免疫性胃炎)のほか、胃切除後、動物性食品の摂取不足、妊娠・授乳、加齢など、さまざまな原因が考えられます。症状が気になる場合やリスク因子がある場合は、自己判断せず、内科や血液内科などでビタミンB12値を含めた血液検査を受けることが大切です。
ビタミンB12欠乏症は、早期に発見し適切な補充療法を開始すれば改善が期待できる疾患です。一方で、神経症状は治療が遅れると回復に時間がかかったり、一部の症状が残ったりすることがあります。「年齢のせい」「疲れのせい」と見過ごさず、気になる症状があれば早めに医療機関へ相談しましょう。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
国立健康・栄養研究所「ビタミンB12の解説」
- 「貧血」と「低血圧」の”症状の見分け方”はご存じですか?受診の目安も医師が解説!
──────────── - 「貧血に良い食べ物」はご存知ですか?コンビニで売っている貧血に良い食べ物も解説!
────────────

