血液検査でわかる!“肝機能の低下”を示す「3つの重要指標」と基準値【医師監修】

血液検査でわかる!“肝機能の低下”を示す「3つの重要指標」と基準値【医師監修】

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、異常があっても症状が現れにくい臓器です。初期の脂肪肝では体のだるさや疲れやすさといったぼんやりした不調にとどまり、健診で初めて気づくケースも少なくありません。一方、肝炎や肝硬変まで進行すると、黄疸・腹水・意識の変化など深刻なサインが現れます。どのような変化に注意すればよいかを、段階ごとに整理します。

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

アルコール性肝障害の診断と検査について

アルコール性肝障害の有無や病気の進行度を正確に確認するためには、医療機関での多角的な検査が欠かせません。このセクションでは、血液検査・画像検査・問診など、実際の診療現場で行われている診断の流れや各検査項目の見方について詳しく解説します。

血液検査で確認できる肝機能の指標

アルコール性肝障害が疑われる場合、最初に行われる最も基本的な検査が血液検査です。主に以下の数値を組み合わせて、肝臓のダメージ状態を評価します。

・γ-GTP(ガンマGTP):アルコールを分解する際や胆管に障害があるときに血中で急増する酵素です。アルコール性肝障害でとりわけ早期から跳ね上がりやすく、日頃の習慣的な飲酒量を推測する極めて重要な指標として広く使われています。

・AST(GOT)・ALT(GPT):壊れた肝細胞から血液中に漏れ出てくる酵素です。一般的な生活習慣病(MASLDやMASH)ではALTが高くなりやすいのに対し、アルコール性肝障害(特にアルコール性肝炎)ではアルコールがミトコンドリアを直接攻撃するため、「ASTの数値がALTよりも著しく高くなる(AST/ALT比が2以上)」という明確な臨床的特徴が見られます。

・総ビリルビン:古くなった赤血球が壊れた際に生じる黄色の色素です。通常は肝臓で処理されますが、肝臓の機能が著しく低下して血液中に溢れ出すと、黄疸(皮膚や目が黄色くなる症状)を引き起こします。

・アルブミン・プロトロンビン時間:どちらも肝臓が正しくタンパク質を合成できているかを示す重要な数値です。アルブミンは血中の主要なタンパク質であり、プロトロンビン時間は「血液を止める成分(凝固因子)」を作る力を測定します。肝不全や肝硬変が進行すると、これらの合成能力が低下して数値が悪化します。

・血小板数(けっしょうばんすう):出血を止める役割を持つ血液細胞です。肝硬変が進んで肝臓がゴツゴツと硬くなると、門脈と呼ばれる血管の圧力が上がり、脾臓(ひぞう)で血小板が過剰に破壊されるため数値が著しく減少します。

これらの数値を総合的にチェックすることで、肝障害の程度や現在どの段階にあるのかを詳しく把握することができます。ただし、血液検査の数値だけで病気全体の進行度を判断することは難しいため、問診や画像検査と組み合わせた精度高い診断が行われます。

画像検査・問診による総合的な診断

血液検査に加えて、身体への負担が少ない「腹部超音波検査(エコー検査)」が広く用いられます。超音波検査では、肝臓の大きさや形、内部組織の状態をリアルタイムで観察します。脂肪肝の段階では溜まった脂肪によって肝臓全体が白く明るく見える「輝度上昇(きどじょうしょう)」が確認され、肝硬変の段階では表面が凹凸に波打ち、全体が萎縮して変形していく変化が観察されます。

また最近では、超音波の振動を利用して肝臓の硬さ(線維化の進行度)を非侵襲的に数値化する「エラストグラフィ検査(フィブロスキャンなど)」も広く普及しています。さらに詳細な病変や腫瘍(肝がん)の有無を確認する必要がある場合は、精密なCT検査やMRI検査が選択されます。

そして診断において何より重要なのが「問診」です。問診では、飲酒歴の長さ、1日に飲むお酒の種類と量、1週間の飲酒日数などを医師へ正確に伝えることが不可欠です。日本消化器病学会などの診断基準では、一般的に「1日平均の純アルコール摂取量が60g以上(男性:ビール500mL缶3本分相当、女性は40g以上)」の過剰な飲酒が5年以上続いていることが、アルコール性肝障害の重要な診断要件のひとつとなっています。

さらに、B型やC型などの「ウイルス性肝炎」や「自己免疫性肝疾患」など、ほかの原因による肝障害を検査で除外することによって最終的な診断が確定します。「お酒の量を少し減らして伝えてしまった」となると誤った診断につながる恐れがあるため、問診票や診察の際には実際の飲酒量を正直に伝えることが最も大切です。肝機能の数値を指摘されたり気になる症状がある人は、自己判断せず、消化器内科や肝臓専門外来を受診して専門医に相談しましょう。

まとめ

アルコール性肝障害は、初期段階では自覚症状がなく気づきにくい反面、飲酒習慣を見直すことで回復が期待できる病気でもあります。毎日の飲酒量を把握し、適正量を守り、休肝日を設けることが予防の基本です。症状が現れていなくても、習慣的な飲酒がある人は定期的な血液検査を受けて肝機能を確認することをおすすめします。気になる症状がある人や肝機能の異常を指摘された人は、早めに消化器内科や内科を受診し、専門の医師に相談してみてください。

参考文献

厚生労働省「アルコールと肝臓病」

厚生労働省「飲酒に関するガイドライン」

日本消化器病学会「患者さんとご家族のための肝硬変ガイドブック2023」

配信元: Medical DOC

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