「両目で見ると物が二重に見える複視」は危険?女性になりやすいバセドウ病眼症の症状

「両目で見ると物が二重に見える複視」は危険?女性になりやすいバセドウ病眼症の症状

バセドウ病眼症は、目に現れる症状だけでなく、外見の変化を通じて女性の日常生活に深刻な影響をもたらすことがあります。眼球突出やまぶたの腫れにより、周囲から誤解されたり、自己肯定感が低下したりすることも少なくありません。また、ドライアイや複視(物が二重に見える)により、仕事や家事など日常のあらゆる場面に不便が生じます。どのような支障が起こりうるのかを具体的にご紹介します。

柳 靖雄

監修医師:
柳 靖雄(医師)

東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

バセドウ病眼症が女性の日常生活に与える影響

バセドウ病眼症は目に現れる局所的な症状だけでなく、外見の変化や深刻な精神的負担を通じて、女性の日常生活全般に大きな影響を及ぼすことがあります。外見に関するストレスは、社会生活やメンタルヘルスに直結しやすい点も正しく理解しておく必要があります。

外見の変化と精神的な負担

バセドウ病眼症の代表的な症状のひとつが「眼球突出(がんきゅうとっしゅつ)」です。目が前に飛び出したように見える、目がギョロっと大きくなったように感じるといった外見の変化は、本人だけでなく周囲の方にも気づかれることがあります。鏡を見るたびに以前の自分の顔とのギャップに悩み、人と目を合わせて話すことに強い抵抗や恐怖を感じるなど、深い精神的苦痛を抱える方が少なくありません。

また、上まぶたが吊り上がる「上眼瞼後退(じょうがんけんこうたい)」や、まぶたの強い腫れ、結膜(白目の部分)の充血・むくみ(結膜浮腫)なども現れやすく、「疲れているの?」「怒っているの?」と周囲から誤解されたり表情が変わったと言われたりすることが、日々のコミュニケーションのストレスになります。こうした外見の変化は、仕事や交友関係など社会的な場面で人と接する機会の多い女性にとって、自己肯定感の低下やQOL(生活の質)の著しい損失につながりやすいといわれています。

精神的なストレスは、自律神経や免疫機能の乱れを引き起こし、バセドウ病そのものの経過にも不調をもたらすことがあります。不安や抑うつ感が強く続く場合は、一人で我慢せず、医療機関での甲状腺・眼科治療と並行してカウンセリングや精神科・心療内科での適切なサポートを受けることも、回復への非常に大切なステップです。

日常生活での具体的な不便さ

バセドウ病眼症が進行すると、見た目だけでなく目の機能そのものに支障が出てきます。目が乾きやすくなる「ドライアイ」、光を過剰に眩しく感じる「羞明(しゅうめい)」、物が二重に見える「複視(ふくし)」、そして進行すると生じる視力低下などが代表的な症状です。

ドライアイは目の表面が乾燥することによって引き起こされます。バセドウ病眼症では眼球が突出することでまぶたが完全に閉じにくくなり(兎眼:とがん)、目の表面が空気にさらされる時間が長くなります。その結果、涙の蒸発が早まり、異物感や強い痛みを伴うようになります。ひどくなると黒目(角膜)に傷がつき感染症を起こす危険性もあるため、人工涙液の点眼や保護用の眼膏(軟膏)の使用、就寝時の眼帯装着などが推奨される場合があります。

複視とは、片目を閉じると普通に見えるものの、両目で見ると1つのものが2つに重なって見える状態のことです。眼の奥(眼窩内)の筋肉が炎症を起こして太くなったり、炎症が長引いて硬く縮む(線維化する)ことで、眼球の動きに左右差が生じ、両目の視線が合わなくなることで起こります。複視が生じると、歩行中に階段の段差を踏み誤ったり、足元がつまずきやすくなったり、車の運転やパソコン作業に深刻な影響が出るなど、事故や怪我への配慮が必要になります。

こうした症状は仕事・家事・育児・運転などあらゆる日常活動に不便をもたらします。「体調のせい」と我慢したりメイクで隠そうとしたりせず、気になる症状がある場合は、甲状腺治療の担当医に伝えるとともに、バセドウ病眼症に詳しい専門の眼科医を早めに受診することを強くおすすめします。

まとめ

バセドウ病眼症(甲状腺眼症)は、バセドウ病に関連して眼窩の組織に炎症・腫脹が起きる状態で、女性に多くみられます。初期は異物感・充血・まぶたの腫れ・眼瞼後退など、疲れ目や花粉症と紛らわしい症状から始まることがあり、放置すると複視や、まれに視神経障害など視機能に関わる状態へ進むことがあります。評価では「炎症が今あるか(活動性)」と「症状の重さ(重症度)」を分けてみるのが重要で、時期によって薬物治療と手術の役割が異なります。喫煙は悪化と強く関連するため禁煙が大切です。治療費は保険診療と自由診療の境界、高額療養費・医療費控除などの制度を医療機関や相談窓口で確認すると安心です。目の調子がいつもと違う、バセドウ病治療中に眼症状が気になる場合は、内分泌内科と、バセドウ病眼症に詳しい眼科へ早めに相談してください。

本記事の数値や費用は一般的な目安です。症状の進み方や必要な検査・治療は個人差が大きく、すべての方に同じ経過・同じ費用が当てはまるわけではありません。

参考文献

日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」

厚生労働省「健康・医療高額療養費制度を利用される皆さまへ」

東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科「甲状腺」

配信元: Medical DOC

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