黄体機能不全とは女性の卵巣に関わる病気の1つです。
何らかの原因で、妊娠維持に重要な役割を果たす黄体から十分なホルモン分泌が行われない状態を指します。
黄体が担うホルモン分泌が正常に行われないと、月経周期の乱れ・不正出血が見られたり、不妊の原因になったりします。
今回は女性の病気である黄体機能不全について、その原因と検査・治療方法を紹介していきましょう。
※この記事はメディカルドックにて『「黄体機能不全」とは?症状・原因・改善する食べ物も解説!医師が監修!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
前田 裕斗(医師)
東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。
黄体機能不全の検査と治療方法

受診の目安を教えてください。
この病気の症状としては、黄体期が短くなることや黄体ホルモンの量が不十分になることによる月経周期の短縮化・不正出血が挙げられます。普通約14日間ある黄体期は月経周期のうち体温が高くなる高温期ですので、基礎体温を付けている方は、高温期が10日以内と短い場合に受診をおすすめします。また不正出血が見られる場合は黄体機能だけでなく、それ以外の病気が潜んでいる可能性がありますので早めに婦人科を受診してください。一方、この病気は自覚症状が少ない方も多く、不妊の検査において発覚する場合も多いです。
どのような検査がありますか?
基礎体温で高温期が12日以下である・黄体期の途中で体温が下がる・高温期の体温が36.7度以下もしくは低温期との体温差が0.3度以内の時にこの病気を疑います。また、黄体期の5日~7日頃に採血を行い、血液に含まれるプロゲステロンの値も測定します。プロゲステロン値が1ml 当たり10ng未満である場合、黄体機能不全の可能性があると診断されます。ただ一度の検査で確定することは困難で、もし異常値が出た場合は、再度翌月以降に検査を行う場合もあります。
黄体機能不全の治療方法が知りたいです。
排卵後のタイミングで黄体ホルモンを毎日投与します 。プロゲステロンの作用がある薬剤は、内服薬・注射での投与ができます。特に妊娠を希望している方には、排卵期から黄体ホルモン製剤の投与が必要です。この場合は妊娠後、黄体ホルモンが胎盤で生成されるようになる妊娠8~10週頃まで筋肉注射や経腟投与で続けられます。また、体質を整えるために漢方を併用することもあります。ほか特に妊娠希望がない場合の治療としては、月経周期を整えるために低用量ピルを用いることもあります。また黄体機能を活性化するために使っているのがhCGという薬です。この薬で黄体機能を刺激するという治療方法もあります。
編集部まとめ

黄体機能不全は、黄体ホルモンが機能しない女性特有の病気です。
黄体期に適切なホルモンが放出されないことで、月経周期が極端に短くなったり、不正出血が起こったりします。
また妊娠とその維持に関して重要な役割を持つ黄体ホルモンが正常に機能しないと、妊娠できなかったり、流産を繰り返したりすることもあります。
一方で黄体機能不全は排卵期に黄体ホルモンを投与することで改善する病気です。妊娠を考えている方は、しっかりと基礎体温をつけて黄体期に異常がないかを確認しましょう。
妊娠を考えていない方には、低用量ピルや漢方で治療を行っています。早めに治療を開始することが、病気を改善させるためのポイントです。
参考文献
黄体機能不全|yomiDr.
黄体機能不全と漢方について|漢方専門後楽堂薬局
月経不順|一般社団法人日本女性心身医学会

