その役を生きている感覚
――お芝居の最中は、どのようなことを考えて演技をしていますか?森田:シーンにもよりますが、その役を生きている感覚を大事にしています。もちろん今の今も生きているけれど、たとえばけんかして泣いて、誰かが疾走してっていう出来事は普段はなく、家族でほっこりご飯を食べ、幸せを感じて、犬と散歩して、わたしの人生はなだらかに過ぎていきます。
今回の作品もそうですが、感情のふり幅が大きな部分を切り取っているものが映画やドラマだったりするイメージがあります。なので、普段生きている時よりも、感情をゆさぶられることが大きい。喜びも怒りもフォーカスされる部分が普段はなかなかないので、お芝居の最中にすごく人間をしている気持ちになります。それと同時にお芝居をしていると普段のわたしの、何でもない幸せを感じている状態もすごく好きだなと思うんです。なので、そういう意味では特殊な仕事なのかと思っています。
――20代、『全裸監督』や『虎に翼』『シティーハンター』など、大変充実されていたと思いますが、ご本人としてはどう受け止めていますか?
森田:コツコツ、一歩一歩なイメージですかね。自分がやってきたことが弾けて、飛び越えていけているということはなく、着実にやっていることがつながっている感じがあります。20代前半からやってきたことが、人としてもお仕事としても、環境としてもつながっていっている感じなんです。本当に一歩一歩のイメージですね。年々ひとつひとつの役をより大切にできている感覚はあります。たとえ失敗しても、前に進む際の栄養になっているような気がしているんです。
反響についてはもちろんうれしいです。その中でも自分が役を納得して楽しく演じられて、その役を好きでいられているかということを一番大切だと思っています。
『虎に翼』共演者との「猪爪子ども会」
――第50回放送文化基金賞で最優秀賞を受賞した『虎に翼』で共演したキャストのみなさんとは、いまでもつながりがあるそうですね。そういう関係性は、お芝居にもよい影響をもたらすものですか?森田:(受賞は)本当にすごいですよね。実は「猪爪子ども会」というものがありまして、優三さん役の仲野太賀さん、直道さん役の上川周作さん、伊藤沙莉ちゃんと私の4人で集まる会が定期的にあるんです。『虎に翼』に関しては、撮影前にみんなで折り紙をしたり、役じゃないところで時間を共有することも多かったので、その仲良しさがたぶん画面に映っていたと思います。
家族だから仲よくしようというわけではなく、結果としてなっていたなと思うので、そういうつながりはきっとお芝居をする上において、先ほど言ったお芝居をしないというわたしの目標と近いものだと思うんです。大切だったなと思います。みんなのことが大好きだから集まると思うんですけど、花江ちゃんも家族のことが大好きだったから、そこはウソなくできていたので、とても助けられました。役じゃない時のみんなが好きという空間にとても助けられた作品でした。

