「ほろ酔い」と放置は危険?急性アルコール中毒で現れる“3つの進行症状”【医師監修】

「ほろ酔い」と放置は危険?急性アルコール中毒で現れる“3つの進行症状”【医師監修】

急性アルコール中毒の症状は、血中アルコール濃度の上昇とともに段階的に変化します。軽症では顔面紅潮や判断力の低下が起こり、中等症では嘔吐や運動失調が現れます。重症になると意識を完全に失い、呼吸が著しく低下するなど、命に直結する状態へと進行します。各段階でどのような症状が見られるのか、また周囲にいる方がとるべき対応についてご説明します。

宮崎 直

監修医師:
宮崎 直(医師)

【経歴】
京都府立医科大学卒業
東京都立墨東病院 集中治療科勤務
【資格】
JSPO公認スポーツドクター
救急科専門医

急性アルコール中毒の症状と重症度の段階

急性アルコール中毒の症状は、摂取したアルコールが血液に吸収され、血中アルコール濃度が上昇するのに伴って段階的に激しく変化します。このセクションでは、軽症(爽快〜酩酊)から重症(昏酔)までの症状の特徴と、それぞれの段階で周囲が取るべき適切な応急対応について詳しく解説します。

軽症段階の症状:陽気・ふらつき・判断力の低下

血中アルコール濃度が低い段階(概ね0.05〜0.15%程度)では、顔が赤くなる、陽気になる、少し話し方がルーズになるなど、いわゆる「ほろ酔い」として認識される状態が表れます。この段階では本人に深刻な自覚がないことも多く、「まだ飲める」「平気だ」と感じてお酒を飲み進めてしまいやすい危険な状況にあります。

しかし、一見元気に見えても脳の理性や運動機能を司る部分が麻痺し始めており、すでに判断力や反射神経の低下が起きています。車の運転や危険な機械の操作が厳禁であることはもちろん、階段での足踏み外しや転倒による頭部外傷(けが)のリスクも大きく高まります。軽症段階であっても、短時間でお酒を大量に流し込む「イッキ飲み」などを続けると血中濃度が急上昇し、一気に重症化する危険があるため、周囲による飲酒量のコントロールが大切です。

軽症段階での主な症状をまとめると、以下のとおりです。

・顔面紅潮(顔や耳が赤くなること)

・陽気になる、声が大きくなり気分が高揚する

・軽いふらつきや身体のバランスの乱れ

・判断力・集中力の低下

・言葉がやや滑舌不良(不明瞭)になる

中等症段階の症状:嘔吐・意識の混濁・運動失調

血中アルコール濃度がさらに上昇(概ね0.16〜0.30%程度)すると、医学的に「深酔い・泥酔」と呼ばれる中等症段階に進みます。この段階では、激しい嘔吐、ろれつが回らない、まっすぐ歩けず千鳥足になる(運動失調:脳の麻痺で運動制御ができなくなること)といった症状が顕著に表れます。また、脳のコントロールが効かなくなることで感情の制御が難しくなり、大声を出す・暴れる・攻撃的な言動をとるなど周囲とのトラブルも増えていきます。

特に注意が必要なのが「嘔吐」です。嘔吐は身体が有害なアルコールを排出させようとする防衛反応ですが、意識が混濁した状態で吐くと、吐いた物(吐物)が気道に詰まって窒息する危険性を強く伴います。特に、周囲に介助者がいない一人きりの環境では、吐物誤飲による気道閉塞(きどうへいそく)や窒息が直接的な死因となることがあります。

中等症段階では、本人の危険に対する認識が著しく欠如するため、周囲の人が異変を正しく察知して介助することが求められます。無理に歩かせず、水分を補給させるとともに、嘔吐による窒息を防ぐため顔と体を横に向けた姿勢(回復体位)で静かな場所に寝かせることが基本の応急対応となります。

重症段階の症状:意識消失・呼吸抑制・生命の危機

血中アルコール濃度が非常に高い状態(概ね0.31%以上)に達する重症段階(昏睡期)では、脳の脳幹(呼吸や心臓を司る生命維持のセンター)まで麻痺が及び、意識を完全に失う、呼吸が浅く遅くなる、脈拍が弱くなるなど、いつ命を落としてもおかしくない極めて危険な状態に陥ります。この段階では、一刻を争う救急要請が必要です。

重症の急性アルコール中毒(生命の危機)を示す重大な兆候として、以下の点が挙げられます。

・強い呼びかけや身体を揺さぶっても全く反応しない、起きない

・呼吸が異常に遅い(1分間に8回以下)、または息が不規則・途切れ途切れになる

・唇や指先・爪が青紫色や土色に変化している(チアノーゼ:酸素不足のサイン)

・体全身のけいれんが起きている

・体温が下がり、皮膚が冷たく湿っている(低体体温症)

このような危険な状態が一つでも見られる場合は、様子を見たり放置したりせず、直ちに119番通報で救急車を要請してください。また、アルコールによって低血糖を引き起こしている可能性もあります。救急隊が到着するまでの間、窒息を防ぐ「回復体位(横向きの体勢)」を維持し、呼吸が止まっていないかを観察し続けることが極めて重要です。周囲にいる人が正しい知識を持ち、躊躇なく素早く行動することが、倒れた人の命を救うために極めて重要です。

まとめ

急性アルコール中毒は、適切な対処と知識があれば多くの場合に防ぐことができ、早期に対応すれば命を守ることも可能です。症状の段階、致死率に関わるリスク、大人特有の背景、そして正しい対処法と予防策を理解しておくことが、自分自身と周囲の大切な人を守ることにつながります。「もしかして」と感じたときは、ためらわず医療機関や救急へ相談してください。この記事が、急性アルコール中毒についての正しい理解と行動への一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

参考文献

厚生労働省「飲酒」

国立病院機構久里浜医療センター「アルコール科」

厚生労働省「アルコール健康障害対策推進基本計画」

配信元: Medical DOC

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