長男が6歳、長女が3歳だったころの出来事です。休日の昼どき、混雑するフードコートでようやく空いた席に座り、家族で食事を始めました。すると突然、見知らぬ女性から「私たちが取っていた席です」と詰め寄られ、何度説明しても引き下がってくれません。子どもたちまで不安そうにする中、女性の夫が慌てて駆け寄ってきたのです……。
「私たちの席です」と譲らない女性
私たちが座ったのは、大きな柱のすぐ近くにある4人掛けのテーブルでした。子どもたちのために給水機から水をくみ、紙コップを2つテーブルに置いたところで、家族そろって食事を始めました。
すると、料理を載せたトレーを持った50代くらいの女性が、まっすぐこちらへ近づいてきました。女性はテーブルの紙コップを見るなり、確信したような表情で言ったのです。
「すみません。ここ、私たちが取っていた席なんですけど!」
突然のことに、私は一瞬、何を言われているのかわかりませんでした。
「いいえ。私たちが来たときには空いていましたが……」
そう答えると、女性は紙コップを指さしました。
「でも、主人が水を2つ置いておいたと言っていました。柱の隣の4人席です」
たしかに、私たちのテーブルは大きな柱のすぐ近く。しかもテーブルの上には、女性の言う通り水が2つ置かれています。でも、これは子どもたちのために私が給水機から取ってきた水です。どうやらその水を、自分たちのものだと思い込んでいるようでした。
「この水は私が取ってきたものです。ここには何も置いてありませんでしたよ」
そう説明しても、女性は信じられないという表情を崩しません。「そんなはずはありません。主人が柱の隣に席を取ったと言っていました」と、いっこうに引き下がらないのです。
「本当に空いていたんです」と繰り返しても、女性は納得しません。
「もう料理も受け取っています。先に取っていた席なので、空けてもらえませんか」
次第に大きくなる声に、周囲の人たちも何事かとこちらを見始めました。子どもたちは不安そうに食事の手を止めています。どう説明すればわかってもらえるのか、私も困り果ててしまいました。
そのときです。女性の夫と思われる50代くらいの男性が、慌てた様子で駆け寄ってきました。
「違うだろ。席はここじゃない」
男性が指さしたのは、同じ柱の反対側にある、よく似た4人掛けのテーブルでした。そしてテーブルには、水が2つ置かれていたのです。
「本当に申し訳ありません。私が『柱の隣の4人席に、水を2つ置いた』と伝えたので、間違えてしまったようです」と、男性は深く頭を下げました。
女性は2つのテーブルを交互に見比べ、状況を理解したのか、みるみる顔を赤くしていきます。そして「申し訳ありませんでした」と小さく言い残し、男性とともに隣の列へ戻っていきました。
2人の姿が離れてから、長男がぽつりと「びっくりしたね」。私もようやく、張り詰めていた気持ちがほぐれました。
柱の隣の4人席、そして2つの水。いくつもの条件が重なったことで、女性は私たちの席を自分たちのものだと思い込んでしまったのでしょう。混雑した場所では、思い込みから思わぬ行き違いが起こることがあります。それでも、確かめないまま相手を責めれば、トラブルはかえって大きくなってしまいます。突然強い口調で責められたときほど、感情的にならず、事実を一つずつ落ち着いて伝えたい——そう感じた出来事でした。
著者:本橋 かな/30代女性/2018年生まれの長女、2020年生まれの次女、夫の4人暮らし。介護福祉士としてデイサービスに5年間勤務し、出産を機に退職。現在は在宅でライターやデザイン制作などの仕事をしながら、2人の娘の子育てに奮闘中。休日は家族で公園やお出かけを楽しむことが多く、旅行や季節のイベントを楽しむのが好きです。育児中に感じたことや日常の出来事を、等身大の目線で発信しています。
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年8月)
※AI生成画像を使用しています

