
三谷幸喜が脚本、菅田将暉が主演を務めるドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(毎週水曜夜10:00-10:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)の第3話が、10月15日に放送された。ストリップ劇場のダンサーやスタッフたちと芝居をする久部(菅田)の計画が始動。その中で劇場の用心棒・トニー安藤(市原隼人)にも視聴者が注目した。(以下、ネタバレを含みます)
■昭和の渋谷を舞台にした青春群像劇
本作は、脚本家・三谷幸喜自身の経験に基づくオリジナルストーリーで、1984(昭和59)年の渋谷を舞台にした青春群像劇。
菅田演じる成功を夢見る演劇青年の主人公・久部三成や、ミステリアスなダンサー・倖田リカ(二階堂ふみ)、三谷をモチーフにした新人放送作家・蓬莱省吾(神木隆之介)、渋谷にひっそりとたたずむ神社の巫女・江頭樹里(浜辺美波)ら、若者たちのくすぶり、情熱、苦悩、恋を描く。
■久部版「夏の夜の夢」の稽古が始まる
「やろうと思ったことは、思ったときにやるべきだ」という、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」から引用したエピグラフで始まった第3話。経営難から閉鎖が決まったストリップ劇場のWS劇場で芝居をすると決めた久部は、ほとんどが演技経験のないリカをはじめとするダンサーやスタッフたちのためにせりふを少なくし、時間のない中、なんとかシェイクスピアの「夏の夜の夢」の台本を仕上げた。
演出助手を務めることになった蓬莱が配役を発表し、台本の読み合わせを始めるが、せりふにツッコミをいれるお笑い芸人の彗星フォルモン(西村瑞樹/バイきんぐ)や、声が小さ過ぎる用心棒のトニー安藤、勝手にせりふを変える客引きのうる爺(井上順)など前途多難だ。
クセ強キャラたちのクスっと笑えるやり取り。その中にあった、「せりふがつまらない」と文句を言うダンサーの毛脛モネ(秋元才加)に、久部が「シェイクスピアは詩」とこだわるものの、モネに「理解できませ~ん」とあっさり返すと、「理解なんかしなくていいんです。書かれたとおりに言って、言われたとおりに動いてくれれば、それでいいんだ!」と声を荒げる場面では、演技とは、舞台とは、ということを思わず考えさせられた。
■芝居対決に応じたトニーに「エモい」「シビレた」と反響
3日後には幕が開く。リカから「ここに芝居を愛している人間なんて一人もいない」と改めて現実を突きつけられた久部が、自分を追い出したかつての仲間たちを見返すために利用しているだけと強がるのが、なんだか切ない。
さらに、WS劇場のオーナー・ジェシー才賀(シルビア・グラブ)は、「夏の夜の夢」はたくさん上演されている作品だけに「よほどのことをやらない限り、話題にもならない」と迫った。
追い込まれていく久部だが、いい兆しが見える。
久部が演出するはずだった「夏の夜の夢」を上演する劇団「天井天下」へ、WS劇場のチラシを置いてもらおうとトニーを連れて乗り込んだときのこと。久部とは一触即発の関係だった劇団主宰の黒崎(小澤雄太)が、トニーと同じ役をする「天井天下」の俳優との芝居対決を仕掛けた。
「そのシーンはまだ稽古していないんだ」と断りを入れる久部のくやしそうな顔を見たトニー。声は小さいながらも、完璧なせりふで情感たっぷりに演じ、黒崎たちを圧倒した。
これにはSNSでも「トニーが覚醒した!」「圧倒的だったトニーさん凄い」「トニーの語り演技にシビレたわ」「トニーがエモい」と大反響に。
また、その後の立ち稽古では、彗星フォルモンにも変化が。彗星フォルモンは妖精の王・オーベロン役で、その妻である妖精の女王タイテーニアを演じるダンサーのパトラ鈴木(アンミカ)にアドリブで蹴りを入れられて怒った。お笑いコンビとしてツッコミを担当する彗星フォルモンにとって面白くないイジリといえるものだったのだ。
ところが、久部や蓬莱に説得され、休憩中に相方の王子はるお(大水洋介/ラバーガール)と持ちネタで役を逆にしてみたことで自分でも納得。稽古再開では嬉々として蹴りを受け入れて笑いを取った。
キャラクターたちが劇中劇を機に変化していく。その面白さが物語の楽しみを引き上げる。次は誰が覚醒するのか、楽しみが止まらない。
◆文=ザテレビジョンドラマ部

