飲酒によるリスクを下げるには、「純アルコール量」で飲酒量を把握することが基本です。厚生労働省の指針では、男性は1日40g程度、女性は20g程度が節度ある飲酒量の目安とされています。また、週に2日以上の休肝日を設けることも肝臓の回復に役立ちます。すでに肝機能の異常を指摘されている方には、節酒ではなく断酒が原則となりますが、離脱症状が心配な場合は医師に相談のうえで進めることをおすすめします。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
お酒をやめると肝臓はどのくらい回復するのか
アルコール性肝障害と診断された人にとって、「お酒をやめれば回復するのか」という点は大きな関心事のひとつです。このセクションでは、断酒後の肝臓の回復経過と、回復の限界についても正直に説明します。
断酒後の回復経過と段階ごとの見通し
アルコール性脂肪肝の段階であれば、断酒と生活習慣の改善によって数週間〜数ヶ月で肝機能の数そ値が正常化に向かうことが期待できます。脂肪肝はまだ肝臓の細胞に不可逆的な損傷が生じていない段階であるため、回復の可能性がとりわけ高い時期です。
アルコール性肝炎についても、軽度〜中等度であれば断酒を継続することで炎症が落ち着き、肝機能が改善していくことがあります。ただし、重症のアルコール性肝炎では、断酒だけでなく入院加療やステロイドなどによる薬物療法が必要になる場合があります。重症度の判断には「Maddrey判別式」などの指標が使われますが、詳細については担当医の説明を参考にしてください。
アルコール性肝硬変に進行した段階では、線維化した組織が元の状態に完全に戻ることは難しく、根本的な回復には限界があります。しかし、それ以上の進行を食い止めることは可能です。断酒を継続することで肝機能の悪化を抑え、肝不全や食道静脈瘤破裂などの重篤な合併症のリスクを下げることが期待できます。
断酒継続を支える取り組みと周囲のかかわり方
断酒を継続することは、本人にとってとても大変な取り組みです。アルコールへの依存性がある場合には、意志の力だけで断酒を維持することが困難であることも少なくありません。医療的なサポートとして、断酒補助薬(アカンプロサートなど)の使用が選択肢として挙げられる場合があります。また、自助グループ(断酒会など)への参加が、長期的な断酒継続を支える大きな助けになるとされています。
家族や周囲の人が「飲んでいないか監視する」「お酒を隠す」といった過度な介入を繰り返すことは、本人との関係を悪化させることもあります。周囲ができる関わり方としては、断酒の決意を尊重し、生活全体を支えるかかわりが有効です。必要に応じて、依存症を専門に扱う外来への相談も一つの選択肢です。
まとめ
アルコール性肝障害は、初期段階では自覚症状がなく気づきにくい反面、飲酒習慣を見直すことで回復が期待できる病気でもあります。毎日の飲酒量を把握し、適正量を守り、休肝日を設けることが予防の基本です。症状が現れていなくても、習慣的な飲酒がある人は定期的な血液検査を受けて肝機能を確認することをおすすめします。気になる症状がある人や肝機能の異常を指摘された人は、早めに消化器内科や内科を受診し、専門の医師に相談してみてください。
参考文献
厚生労働省「アルコールと肝臓病」
厚生労働省「飲酒に関するガイドライン」
日本消化器病学会「患者さんとご家族のための肝硬変ガイドブック2023」
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