ただの“頻尿”は落とし穴?女性の「膀胱がん」発見が遅れる危険な理由【医師監修】

ただの“頻尿”は落とし穴?女性の「膀胱がん」発見が遅れる危険な理由【医師監修】

膀胱がんが疑われた場合、尿検査や膀胱鏡(ぼうこうきょう)検査、CT・MRIなどの画像検査が段階的に行われます。がんの深さや広がりによって、ステージ0から4までに分類され、治療の方針が決まります。各ステージの特徴と、それぞれにどのような対応が考えられるかを、わかりやすくご紹介します。

村上 知彦

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

膀胱がんの診断と病期(ステージ)の分類

膀胱がんと診断された場合、がんの大きさや悪性度、どの深度まで進行しているか(根を張っているか)を正しく把握することが、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決定するうえで極めて重要です。このセクションでは、膀胱がんの精密な診断方法と病期(ステージ)の分類についてわかりやすく解説します。

診断に用いられる主な検査

膀胱がんが疑われる場合、段階に応じてさまざまな臨床検査が行われます。最初のスクリーニングとして、手軽に受けられる「尿検査」が実施されます。尿の中に血液の成分が混じっているかを確認する尿潜血検査のほか、尿の中に剥がれ落ちたがん細胞が含まれているかを顕微鏡で調べる「尿細胞診(にょうさいぼうしん)」を行います。尿細胞診は体に傷をつけずにがんの可能性を調べる優れた検査です。

さらに、確定診断の決め手となるのが「膀胱鏡(ぼうこうきょう)検査」です。細く柔らかい内視鏡(ファイバースコープ)を尿道から挿入し、おしっこの通り道や膀胱の内壁を直接モニターで観察します。腫瘍が確認された場合は、同時に組織の一部を切り取って「病理検査(びょうりけんさ:細胞の悪性度や種類を顕微鏡で確定する検査)」を行い、がんの性質を詳しく調べます。

画像検査としては、超音波(エコー)検査、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)検査などが組み合わせて行われます。これらの検査は、腫瘍の大きさや位置はもちろん、がんが膀胱の壁の奥深くまで染み込んでいないか(浸潤状況)、あるいは周りのリンパ節や他の臓器へ飛んでいないか(転移の有無)を立体的に確認するために実施されます。

膀胱がんの病期(ステージ)と特徴

膀胱がんの病期(ステージ)は、がん細胞が膀胱の壁のどこまで深く根を張っているか(浸潤度)と、リンパ節や遠くの臓器への転移の有無によって分類されます。大きくステージ0からステージ4の5段階に分けられ、ステージに応じて治療アプローチが大きく異なります。

ステージ0〜1(筋層非浸潤性膀胱がん)
がんが膀胱の最も表面にある粘膜や、そのすぐ下の粘膜下層にとどまっており、深い筋肉の層(筋層)までは達していない段階です(以前は「表在性膀胱がん」とも呼ばれていました)。この段階では、お腹を切らずに尿道から内視鏡を入れて腫瘍を電気メスで削り取る手術「TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)」が行われます。
この手術によって、身体への負担を抑えながらがんの切除を目指すことができます。ただし、このタイプのがんは膀胱内で再発しやすい性質を持っているため、一度の手術で終わりではありません。術後の再発予防(膀胱内への薬物注入療法など)と、定期的な内視鏡による経過観察を継続し、適切にコントロールしていくことが非常に重要です。

ステージ2〜3(筋層浸潤性膀胱がん)
がん細胞が粘膜を突き破り、膀胱の壁を構成する深い筋肉の層(筋層)にまで深く根を張っている状態です。この段階では、がんの全摘出を目指して膀胱そのものを取り除く手術(膀胱全摘除術)が標準的な選択肢となります。手術前後に抗がん剤による化学療法を組み合わせることで、目に見えない微小ながん細胞の増殖を抑え、治療成功率を高める工夫が行われます。

ステージ4(進行・転移性膀胱がん)
がんが膀胱の壁を越えて周囲の骨盤内や脂肪組織へ大きく広がり、あるいは遠くのリンパ節や肺、骨、肝臓などの他臓器へ転移(遠隔転移)している状態です。この段階では、全身にアプローチするために抗がん剤(化学療法)や免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法、放射線療法などを組み合わせた「集学的治療(複数の治療法を合わせた治療)」が主軸となります。近年では新しい薬物療法の選択肢も広がっており、患者さんの全身状態に合わせた個別化治療が進められています。

まとめ

膀胱がんは女性も発症しうる疾患であり、血尿や頻尿などの症状を見逃さないことが早期発見につながります。特に女性は婦人科疾患との混同や受診の遅れが課題とされています。少しでも尿の異常や排尿時の違和感に気づいたら、「恥ずかしい」「一時的なものだろう」と自己判断せず、ためらわずに泌尿器科の受診を検討してください。治療法や費用に関しても、利用できる公的制度を活用しながら、担当医と丁寧に相談することが大切です。

参考文献

国立がん研究センター がん情報サービス「膀胱がん」

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

国立がん研究センター がん情報サービス「がんの統計」

日本年金機構「障害年金」

日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン」

配信元: Medical DOC

提供元

プロフィール画像

Medical DOC

Medical DOC(メディカルドキュメント)は800名以上の監修ドクターと作った医療情報サイトです。 カラダの悩みは人それぞれ。その人にあった病院やクリニック・ドクター・医療情報を見つけることは、簡単ではありません。 Medical DOCはカラダの悩みを抱える方へ「信頼できる」「わかりやすい」情報をお届け致します。