「しめさば」はNG? 激痛を伴う“腸アニサキス症”の原因と治療費【医師監修】

「しめさば」はNG? 激痛を伴う“腸アニサキス症”の原因と治療費【医師監修】

生の魚介類を食べた後、激しい腹痛に見舞われた経験はありますか?その原因の一つとして挙げられるのが、腸アニサキス症です。アニサキスはサバやアジ、イカなど身近な魚介類に寄生する線虫の一種で、適切な処理をせずに食べることで感染するおそれがあります。ここでは、どのような食べ物にリスクがあるのか、また腸アニサキス症が起きやすい食べ方について詳しくご紹介します。

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

腸アニサキス症を引き起こす食べ物の種類と特徴

腸アニサキス症(ちょうアニサキスしょう)を正しく理解し防止するうえで、まずどのような魚介類や調理法がリスクになるのかを把握することが重要です。このセクションでは、アニサキスが多く寄生する食べ物の種類と、それぞれの医学的な特徴について分かりやすく解説します。

アニサキスが潜む代表的な魚介類

アニサキスは、主に海に生息する魚類や一部の頭足類(スルメイカなど)の内臓表面や筋肉(身)に寄生する寄生虫(線虫類)の一種です。体長は約2〜3cmほどで、白色または半透明の細い糸状をしており、じっくり観察すれば肉眼でも十分に確認できる大きさです。アニサキスの幼虫は、海の中でオキアミなどの小さな甲殻類に取り込まれ、それを捕食した魚やイカの体内に移行・寄生します。

アニサキスが多く見られる魚介類として、特によく知られているのはサバです。サバはアニサキスが寄生しやすい代表的な魚とされており、「しめさば」など酢で締めた料理であっても、一般的な濃度の醸造酢や塩漬け、醤油、わさび程度ではアニサキス幼虫は死滅しないため、十分な注意が必要です。そのほかにも、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、ヒラメ、タラ、天然のサーモンやサケといった魚にも頻繁に寄生が確認されています。また、スルメイカなどのイカ類を生で食べる際にも感染リスクが存在します。

さらに、これらの魚を生や生に近い状態で食べる機会が多い刺身や寿司、カルパッチョ、なめろう、ルイベ(半解凍の刺身)などの料理は、感染リスクが高い食べ物として位置付けられています。魚介類を新鮮な生のまま食べる食文化が定着している日本では、アニサキス食中毒は決して他人事ではない身近な問題といえるでしょう。

腸アニサキス症が起きやすい食べ方と原因

アニサキス症の中でも「腸アニサキス症」は、胃に症状が出る「胃アニサキス症」に比べると発生頻度自体は低いものの、発症までの時間が長く、診断が遅れやすいという厄介な特徴があります。胃アニサキス症が食後数時間以内に急激な上腹部痛で発症するのに対し、腸アニサキス症は食後数時間から数日後(多くは10時間〜数日経過後)に波のある激しい下腹部痛などの症状が現れます。

腸アニサキス症が起きやすい状況として、一度に複数のアニサキス幼虫を摂取してしまったケースや、幼虫が胃粘膜に刺さらずに通過して小腸や大腸まで到達してしまった場合が考えられます。特に、釣った後や収穫後の時間が経った魚では、本来内臓の表面にいたアニサキスが筋肉(身の部位)へ移動しやすくなるため、内臓処理の遅れた生の魚を食べることはリスクを急上昇させます。

また、強力な人間の胃酸であってもアニサキスは完全には死滅しないため、元気に胃を通過した幼虫が小腸(主に回腸)や大腸の粘膜へと到達します。幼虫が腸の壁に潜り込んで刺さると、アニサキスの分泌物に対する激しいアレルギー反応や強い局所の炎症反応が起こります。これによって腸の壁が著しく腫れ上がり、劇的な下腹部痛、嘔吐、さらには腸管が塞がってお通じやガスが通らなくなる「腸閉塞(ちょうへいそく:イレウス)」などの重篤な症状を引き起こします。

このような観点から、生の魚介類を食べる量や頻度だけでなく、魚の鮮度管理(購入後すぐに内臓を取り除くこと)や適切な冷凍・加熱処理は、腸アニサキス症のリスク軽減に直接関わります。適切な食材の選び方と調理法を徹底することが、感染予防において極めて重要な役割を果たしているといえます。

まとめ

腸アニサキス症は、生魚を食べた後に腸へアニサキスが侵入することで起きる感染症で、強い腹痛や腸閉塞などの症状が現れることがあります。予防の基本は、魚の加熱処理や冷凍処理、鮮度管理の徹底です。感染後は腸への刺激が少ない食事を心がけ、再感染を防ぐための食生活の見直しも大切です。治療費については保険が適用され、高額療養費制度の活用で負担を軽減できる可能性があります。症状が気になる方は、早めに消化器内科へ相談されることをお勧めします。

参考文献

厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」

国立健康危機管理研究機構「アニサキス症とは」

食品安全委員会「アニサキスによる食中毒」

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

配信元: Medical DOC

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