子どもの姿勢が悪いのは視力のせい?猫背解消法を眼科医岩見理事長が解説

子どもの姿勢が悪いのは視力のせい?猫背解消法を眼科医岩見理事長が解説

子どもの姿勢が悪いのが気になるけれど、もしかしたら体幹や運動をしていないこと以外に「視力」も関係しているかも?最近急に、本や液晶画面に顔を近付けるようになったら要注意!医療法人社団久視会いわみ眼科理事長岩見久司先生から姿勢と視力の関係についてお話しいただきました。

「また猫背になってるよ」
「もっと背筋を伸ばして!」
勉強している子どもを見て、こんな声をかけたことがある方は多いのではないでしょうか。
でも、子どもの姿勢が悪いのは、本人がだらしないからとは限りません。

机や椅子が体に合っていない。足が床についていない。長い時間、同じ姿勢で勉強している。体を動かす時間が少ない。体が硬く、楽に座れる姿勢が限られている。
そして眼科医として、もう一つぜひ確認してほしいことがあります。
「その子は、ちゃんと見えているでしょうか?」

「姿勢が悪い」のではなく、「見えないから近づいている」ことも

子どもが本やタブレットに顔を近づけていると、「もっと離れて見なさい」と言いたくなります。
ところが、すでに近視など視力や屈折の問題があり、見やすい位置を探して無意識に近づいている子もいます。

一方で、視力には問題がなくても、顔を近づけて見ることが癖になっている子もいます。
つまり、
「見えにくいから近づいて、姿勢が崩れている子」と、
「見えているけれど、近づく癖があって姿勢が崩れている子」
の両方がいるのです。
特に子どもは、自分の見え方を大人のようには説明できません。片方の目だけ視力が悪い場合には、もう片方の目で補ってしまい、本人も家族も気づかないこともあります。
以前より本やタブレットに顔を近づけるようになった。テレビを見る位置が前になった。勉強するときに顔を机へ寄せるようになった。
そんな変化があれば、「姿勢の問題」と決めつけず、まず一度、眼科で視力を確認してみてください。

姿勢を叱る前に、まず環境を見直そう

視力に大きな問題がなければ、次は「良い姿勢を取りやすい環境になっているか」を考えます。
実は、子どもの学習時の姿勢については、文部科学省も具体的な目安を示しています。

「学校環境衛生管理マニュアル」では、理想的な学習姿勢として、いすに深く座り、膝を直角に曲げ、足の裏を床につけ、背筋を伸ばし、肩の力を抜くことなどが示されています。また、机やいすは、子どもの体格や成長に応じて日常的に合っているかを確認することが望ましいとされています[1]。

大切なのは、「姿勢を良くしなさい」と本人に任せるだけではなく、大人が環境を整えることです。
足がぶらぶらしていないか。机が高すぎたり低すぎたりしないか。本を見るために顔を極端に近づけていないか。まずそこから確認しましょう。

食卓で宿題をしても大丈夫?

家庭では、子どもがダイニングテーブルで宿題や読書をしていることも多いでしょう。
食卓で勉強すること自体を問題にする必要はありません。見るべきなのは、「食卓か学習机か」ではなく、その家具が子どもの体に合っているかです。

食卓やダイニングチェアは大人も使うため、子どもの体格によっては足が床に届かなかったり、天板が高くて肩を上げたり、体を前に倒さなければ書きにくかったりします。
そんな場合は、足台を置く、座面を調整する、体格に合った椅子を使うなどして、足と体を安定させてあげてください。座面を高くする場合は、足が浮いてしまわないよう足台も一緒に考えます。
本やノートも、できるだけ体の正面に置きましょう。

最近は、顔が近づきすぎると本人に気づかせてくれる筆記具や、前かがみになりすぎるのを防ぐ補助グッズもあります。特定の道具が必須ということではありませんが、「何度も注意する」代わりに、子ども自身が姿勢の崩れに気づける工夫は一つの方法でしょう。

眼科医が気になるのは「背中」だけでなく「目と本との距離」

猫背そのものが近視を起こすと証明されているわけではありません。
しかし、姿勢が崩れて顔がどんどん机に近づけば、目と本やタブレットとの距離も短くなります。
2026年に33研究をまとめたメタ解析でも、子どもでは近くを見る作業が多いほど近視との関連が強くなることが確認されています[2]。
また、国際近視機関(IMI)のガイドラインでは、20cm以下という非常に近い距離で読むことや、45分を超えて連続して近くを見ることは、近視との関連が報告されている近業習慣として挙げられています[3]。

ですから私は、「背筋をきれいに伸ばすこと」そのものより、
「無理なく、目と本との距離を保てる姿勢になっているか」
を見てほしいと思います。
そして、ずっと座り続けないこと。途中で立つ、伸びをする、少し歩く。そんな小さな切り替えも大切です。

寝転がって見る、斜めから見る。左右の目にも同じ負担?

ソファに寝転がってタブレットを見る。頬杖をつき、いつも同じ方向に頭を傾けて勉強する。
これもよく見かける姿勢です。
ここには、眼科的に興味深い問題があります。
本やタブレットを正面から見ていれば、左右の目から対象物までの距離はほぼそろいます。しかし、頭を大きく傾けたり、体を斜めにしたりして非常に近い距離から見たりすると、一方の目は対象物に近く、もう一方は少し遠い状態になります。
つまり、左右の目に必要なピント合わせの量が同じではなくなる可能性があります。
IMIの報告でも、短い近業距離と左右非対称な頭の姿勢が組み合わさると、左右の目に必要な調節、つまり「ピント合わせ」の負荷に差が生じ、頭を傾けた姿勢では一方の目がもう一方より継続的に大きな調節負荷を受ける可能性が指摘されています[4]。

では、それが左右の近視の差、つまり「不同視」を作るのでしょうか。
ここは、まだ断定できません。
2万3,114人の子どもを調べた研究では、不同視の子どもは近業時間が長く、見る距離も短い傾向がありましたが、他の要因まで調整すると独立した関連は確認できませんでした[5]。
一方、その後に7,035人の8歳児を2年間追跡した縦断研究では、30cm未満の近い距離で近業をすることは、新たに不同視になるリスクの上昇と関連していました[6]。
つまり、
「斜めに見たから不同視になる」
とは言えません。
しかし、成長期の目で、毎日のように極端に近い距離から左右非対称に見る習慣を積極的に勧める理由もありません。
できるだけ正面から、左右の目と対象物との距離が大きく違わない姿勢で見る。これは体の姿勢という意味だけでなく、目の使い方という意味でも意識してよいポイントだと思います。

左右の近視が大きく違う「不同視」

右目はほとんど近視がないのに、左目だけ強い近視。
このように左右の目の度数が大きく違う状態を「不同視」と呼びます。

不同視が強くなると、単に「片方の目だけ見えにくい」という問題では済まないことがあります。左右の目を一緒に使う「両眼視」や、立体的に物を見る力にも影響することがあります[7]。
さらに、不同視や斜視などのある子どもでは、日常生活や心理面との関連も報告されています。

斜視や不同視のある5~11歳の子どもを調べた研究では、目に関する生活の質と、読書速度、身体能力についての自己評価、友達から受け入れられているという感覚、フラストレーションや心配などとの関連が報告されています[8]。
「片方の目が見えているから大丈夫」とは、必ずしも言えないのです。
不同視になっても、左右差を小さくできる可能性があります。

一方で、近視性不同視については、治療によって左右差を小さくできる可能性も分かってきました。
その一つが、夜眠っている間に特殊なコンタクトレンズを装用する「オルソケラトロジー」です。
オルソケラトロジーには子どもの近視進行を抑える効果があります。そして近視性不同視では、より近視の強い眼の「眼軸長」、つまり目の奥行きの伸びがより強く抑えられ、左右差が小さくなることが複数の研究で報告されています[9~11]。
60人の近視性不同視の子どもを対象とした無作為化比較試験では、1年間で眼軸長の左右差が、眼鏡群ではほとんど変わらなかったのに対し、オルソケラトロジー群では0.47mmから0.35mmへ縮小しました[9]。

108人を調べた別の研究でも、約1年間のオルソケラトロジー使用で、眼軸長の左右差が0.54mmから0.46mmへ、近視度数の左右差も1.38Dから1.25Dへ小さくなっています[10]。
さらに2026年には、オルソケラトロジーを使用した9,978人、延べ7万9,409回の診療データを解析した大規模研究が報告されました。不同視が大きい子ほど、近視の強い眼の眼軸伸長がより強く抑えられ、左右の眼軸長差が縮まる方向に働くことが示されています[11]。
私自身も学会で、近視性不同視の女の子に片眼からオルソケラトロジーを開始し、経過とともに眼軸長の左右差が小さくなった症例を報告しました[12]。

もちろん、一人の症例をすべての子どもに当てはめることはできません。しかし、海外から報告されている研究と同じ方向の変化を、実際の診療でも経験しています。
すべての不同視にオルソケラトロジーが適しているわけではありません。それでも「左右差がついてしまったから仕方がない」と考えず、成長期のうちに眼科で評価する意味があります。

姿勢が気になる子こそ、外で遊ぼう

「姿勢を良くするには、体幹を鍛えればいいのでしょうか?」
こう聞かれることもあります。
もちろん筋力は大切です。しかし、「体幹さえ鍛えれば姿勢が良くなる」というほど単純ではありません。

まずは座りっぱなしの時間を減らして、体を動かすこと。体が硬い子であれば、無理のない範囲でストレッチを取り入れる。それだけでもよいでしょう。
そして眼科医としては、ぜひ外遊びを勧めたいところです。
屋外で過ごす時間を増やすことには、子どもの近視発症を減らすエビデンスがあります。中国で行われた無作為化試験では、学校で毎日40分の屋外活動を追加すると、3年間の近視発症率が低下しました[13]。

「良い姿勢のために特別な筋トレをさせなくては」と難しく考える前に、座っている時間を少し減らして外で体を動かす。
子どもの体にも目にも、取り入れやすい対策です。

「姿勢が悪い!」と叱る前に見てほしいこと

もちろん、すべての姿勢の悪さを家庭だけで直そうとする必要はありません。

○いつも同じ方向に大きく体が傾く。
○左右の肩の高さが明らかに違う。
○背中の形に左右差がある。
○痛みがある。
○体の柔軟性が極端に低い。

こうした場合には、単なる癖だけではなく、整形外科的な問題がないか、小児科や整形外科などで一度評価してもらいましょう。必要に応じて理学療法士などによるストレッチや運動指導を受ける方法もあります。整体などのケアを利用する場合にも、医学的な評価の代わりにはしないことが大切です。
そして、

●本やタブレットに以前より顔を近づける。
●テレビを見る位置がどんどん前になる。
●片目をつぶって見る。
●いつも同じ方向に頭を傾ける。
●学校の視力検査で左右差を指摘された。

こんな様子があれば、「姿勢の問題」と決めつけず、眼科で視力をチェックしてください。

子どもの姿勢を良くするために大切なのは、「背筋を伸ばしなさい」と何度も叱ることではないと私は思います。
まず、ちゃんと見えているか。
次に、足がつく椅子になっているか。食卓で勉強するなら、その食卓と椅子が子どもの体に合っているか。
そして、目と本との距離を保ち、できるだけ正面から見られているか。
途中で体を動かしているか。外で遊ぶ時間はあるか。
大人が「良い姿勢を取りやすい環境」を作ってあげることが大切です。
そして時々、背中だけではなく、子どもの目と本との距離も見てみてください。
その姿勢は、成長していく体だけでなく、成長していく「目」からのサインかもしれません。

【主な参考文献】
[1]文部科学省.学校環境衛生管理マニュアル「学校環境衛生基準」の理論と実践[平成30年度改訂版].「机、いすの高さ」「理想的な学習姿勢」.
[2]Song Y, et al. Near-work activity duration and myopia in children: An updated systematic review and meta-analysis. Biomed Rep. 2026;24(5):58.
[3]Gifford KL, et al. IMI – Clinical Management Guidelines Report. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2019;60(3):M184-M203.
[4]Logan NS, et al. IMI Accommodation and Binocular Vision in Myopia Development and Progression. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2021;62(5):4.
[5]Lee CW, et al. Prevalence and association of refractive anisometropia with near work habits among young schoolchildren: The evidence from a population-based study. PLoS One. 2017;12(3):e0173519.
[6]Lee CW, et al. Risk factors for anisometropia in schoolchildren: A population-based, longitudinal cohort study. Ophthalmic Physiol Opt. 2023;43:1500-1509.
[7]Zhuang CC, et al. Accommodation and Binocular Vision in Children with Myopic Anisometropia. J Ophthalmol. 2024;2024:6525136.
[8]Birch EE, et al. Associations of Eye-Related Quality of Life With Vision, Visuomotor Function, and Self-Perception in Children With Strabismus and Anisometropia. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2020;61(11):22.
[9]Zhang Y, Sun X, Chen Y. Controlling anisomyopia in children by orthokeratology: A one-year randomised clinical trial. Cont Lens Anterior Eye. 2023;46(1):101537.
[10]Lu W, Jin W. Clinical observations of the effect of orthokeratology in children with myopic anisometropia. Cont Lens Anterior Eye. 2020;43(3):222-225.
[11]Huang K, et al. Longitudinal rebalancing of axial length asymmetry in anisometropic children under orthokeratology: a large-scale cohort study. Cont Lens Anterior Eye. 2026;49(3):102666.
[12]岩見久司ほか.片眼のオルソケラトロジー開始により眼軸性不同視の改善が得られた一例.第78回日本臨床眼科学会.2024.
[13]He M, et al. Effect of Time Spent Outdoors at School on the Development of Myopia Among Children in China: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2015;314(11):1142-1148.

※記事の作成にあたり、校正の補助として生成AIを使用しました。ファストチェックは医師が確認しています。

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執筆者

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岩見久司

岩見久司

大阪市立大学医学部卒
医療法人社団久視会 いわみ眼科理事長
眼科専門医・レーザー専門医
医学博士
兵庫医科大学非常勤講師

経歴
1日100人を超す外来をこなしながら、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。
加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などを得意とする網膜内科医。
網膜の病気に将来繋がっていく可能性のある小児の近視が現在急増しており、近視治療にも積極的に取り組んでいる。
令和5年度より、「100歳まで見える目」をたくさんの方が持てるように啓蒙活動を展開している。

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