見上愛が語る、演じる“りん”の成長と葛藤「正しさは一つじゃない」バディ・上坂樹里への思いも<風、薫る>

見上愛が語る、演じる“りん”の成長と葛藤「正しさは一つじゃない」バディ・上坂樹里への思いも<風、薫る>

連続テレビ小説「風、薫る」で主演を務める見上愛にインタビューを実施
連続テレビ小説「風、薫る」で主演を務める見上愛にインタビューを実施 / (C)NHK

見上愛と上坂樹里が主人公を務める連続テレビ小説「風、薫る」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)が現在放送中。同作は、看護師という職業の確立に大きく貢献した実在する二人の人物をモチーフに描く、看護の世界に飛び込んだちょっと型破りな二人のナースの冒険物語だ。

明治時代、西洋から伝わった看護学を学ぶ人々は“トレインドナース(正規に訓練された看護師)”と呼ばれ、医療看護の世界に新風を起こした。同じ看護婦養成所を卒業した一ノ瀬りん(見上)と大家直美(上坂)の二人が、患者や医師たちとの向き合い方に悩み、ぶつかり合いながら成長し、やがて“最強のバディ”となって世界を切り拓いていく姿を描く。

第19週の放送を終え、物語も佳境を迎える中、WEBザテレビジョンでは主人公・一ノ瀬りんを演じる見上愛にインタビューを実施。撮影現場でのエピソード、“朝ドラ”という作品、役柄への思いを語ってもらった。

■終わってからさまざまな感情が出てくるのだと思います

――「風、薫る」の撮影も終盤かと思います。今のお気持ちはいかがですか?

日々みんなで懸命に撮影に臨んでいるので、ラストスパートを撮っているという実感がまだあまり湧いていないんです。きっと、撮影が終わってしばらくしてから「あ、本当に終わったんだな」と気付き、寂しさやいろいろな感情が出てくるのではないかなと思っています。

――もう一人の主人公・直美を演じる上坂樹里さんは、「撮影が終わってしまうのが少し怖いような、寂しいような気持ちです」とお話しされていました。

樹里ちゃんをはじめ、「風、薫る」チームの皆さんと平日は毎日顔を合わせることが当たり前になっている1年間でした。しかも、この1年は“りん”という役以外を演じる機会がほとんどなかったので、撮影が終わって新しい作品や役に巡り合っていくということが想像できない部分もあります。ですが、この1年間を共に乗り越えたからこそ頑張れることもあると思うので、樹里ちゃんや大切な仲間とまたどこかで出会えるように、これからも頑張っていきたいです。

――りんとして激動の人生を歩んでこられましたが、見上さんの中で何か心境の変化や気付きはありましたか?

正直なところ、まだりんやこの作品から受け取った新しい考え方や価値観を、自分自身に還元して生活する時間がほとんど取れていません。自分自身でいる時間のほうが短いほど撮影に集中しているので、心境の変化に気付くのはこれからのような気がします。きっとすべてが終わってから、「あのとき自分は、りんの持っている強さに救われていたんだな」と実感するのではないかなと想像しています。

■“正しさ”とは何かを問い続けたりんの成長

――演じる中で、りんという人物の印象が変わった部分はありますか?

最初はすごくのんびりしていて、思ったことを正直に口に出してしまう子だなという印象でした。間違ったことが嫌いで自分を貫く人なので、出会った当初は「ほわっとしている人」に見えても、知れば知るほど芯の強さに驚かされる人物なのではないかと思って演じていました。

ですが、りんも看護婦として、そして一人の人間として、何を選択することが正しいのかを深く悩み、葛藤するようになります。今までは“正しい”と信じる方を自信を持って選んできた生き方だったのが、物語が進むにつれて「そもそも正しさって何だろう?」「正しさは一つではないんだ」ということに気付いていく。さまざまな困難を経験する中で、自分がどれほど恵まれていたかを知り、成長していくりんの姿を肌で感じています。

――シマケンこと島田健次郎(佐野晶哉)から、「歯を食いしばり顔に笑いの面をつけてきたのであろう」「僕は、そんな面は取ってほしい」と言われたシーンも印象的でした。

りんは、自分の願望よりも「誰かを救いたい」「目の前の誰かのために」という目的で動くことが多い人です。つらいことがあっても隠そうとする性格だと思うのですが、りん自身は素直に行動できていると思い込んでいて、実は複雑な想いを内に秘めている。直美と出会うことでその本質を見透かされながらも、周囲には笑顔や元気さとして出力していく、そんな人間味のある部分を意識して演じていました。
連続テレビ小説「風、薫る」より
連続テレビ小説「風、薫る」より / (C)NHK


■佐野さんの姿に「私も頑張ろう」と背中を押されました

――りんを取り巻く大切な存在として、虎太郎役の小林虎之介さん、シマケン役の佐野晶哉さんがいます。改めて共演されていかがでしたか?

小林さんとはクランクインの那須ロケからご一緒しているのですが、素朴さや真っすぐさの中に、ギラッと光る強いものを持っている方だなと感じています。それがお芝居の中でも虎太郎という役を通して見え隠れするのがとてもすてきなんです。虎太郎はりんに対してすごく優しいですし、りんのことを思って行動してくれる。前半は気持ちをうまく伝えられない虎太郎が描かれましたが、東京で再会してからの虎太郎には大きな変化があり、小林さんがとても丁寧に演じられていますので今後も楽しみにしていただきたいです。

佐野さんは、ずっと年上だと思っていたのですが、実は年下だと知って驚きました。それくらい落ち着いていてしっかりされています。落ち着きや、自分の好きな仕事に対して一生懸命に突き詰めていこうとする姿勢がシマケンそのもので、勝手に役と重ね合わせて見てしまうことが多かったです。

アイドル活動もお忙しいはずなのに、現場で弱音を吐いているところを一度も見たことがありません。撮影の直前にシマケンさんのセリフにフランス語の追加があった際も現場で先生とずっと練習されていて。ベストな状態で撮影に挑めるよう努力されるひたむきな姿には、「私も頑張ろう」と背中を押されました。

■試練を乗り越えた第19週「自分の手で誰かを救いたい」

――第19週では、感染症の現場で働く姿が描かれました。どのような思いで撮影に臨まれましたか?

第19週は、りんの人生にとってとても重要な週だと考えていました。第15週までの出来事によって「未来の看護婦を減らしてしまった」という責任感を感じたり、さまざまな迷いの中で適応障害に近い状態になり、一度看護の世界から離れて新潟へ行くことになります。そこで「やっぱり自分は自分の手で誰かを救いたい」と改めて自覚することが大きなテーマでした。

また物語の序盤、父親が亡くなる時に何もできなかったという後悔が彼女の根底にありましたが、正しい知識や専門技術を身につけた今、かつての父と重なるような状況で誰かを救えたことは、りんの中でずっと引っかかっていたものから救われるきっかけになったと思います。すべてが解放されたわけではなくても、その思いを大切に持ったまま前に進むための原動力になったのだと思っています。

それまで患者さんに触れようとすると手が震えたり過呼吸になったりする場面が続いていたので、目の前に困っている人がいても咄嗟に手が出ない状況や、自分に何かできるんだろうかという葛藤が、お芝居をする中でもリアルに生まれていたのを覚えています。
連続テレビ小説「風、薫る」より
連続テレビ小説「風、薫る」より / (C)NHK


■新潟での出会いと、りんの恋愛観

――新潟編で出会った横沢記者(井上祐貴)はりんにどのような影響を与えたと感じていますか?

新潟に行った時のりんは心が疲れきっていて、うまく心が動かない状態でした。そんな中、自分以上に思ったことをはっきり口にする横沢記者と出会います。これまで家族にしか見せなかったような嫌な顔をしたり、「嫌です」と素直な気持ちを自然に出せたりしたのが横沢さんでした。彼女が心を取り戻していく上でとても大切な存在だったと思いますし、彼の素直さに助けられたのだと感じています。

――横沢から求婚される展開もありましたが、りんの恋愛感情についてはどう捉えていましたか?

第18週までのりんは、恋愛以上に、連れ出してきた娘の環に対する責任感を強く持っていて。「とにかく環のために働いて、この子に自由な道を、夢を持って歩んでもらいたい」という一心だったと思います。りん自身、少し鈍感なところもありますし、恋愛についてはあまり考えていなかったのではないかなと。ですがようやく、シマケンへの気持ちを自覚したところですね。

――ロケ地・新潟での思い出はいかがですか?

新潟は日本海と雪積もる山々が一度に見渡せる雄大な景色が印象的で、りんと同じように気持ちを新たにできる感覚がありました。撮影後にプライベートで少し散策したのですが、地元の方々から「一ノ瀬りんさん!」と役名で声をかけていただけて。“朝ドラ”の影響力の大きさと、地域の方々の温かさに胸がいっぱいになりました。おいしい海鮮をいただいたり、劇中に登場する飴屋さんのモデルとなったお店にもお邪魔したりと、すてきな時間を過ごせました。

■大切にしている“対話”「温かい現場を作ることが、温かい作品作りにつながる」

――見上さんがお仕事に向き合う中で、一番大切にされていることは何ですか?

対話をすることです。今作の撮影に入る前の会見でも「まず温かい現場を作ることが、温かい作品づくりにつながる」とお話しさせていただきました。プロデューサーさんや監督もすごく寄り添ってくださり、その思いを共有しながら撮影を進めてきました。

大勢のスタッフやキャストが関わる1年間の撮影で、全員が一度も嫌な思いをせずに走り切るというのは難しいことかもしれません。でも、より良い作品を作るための前向きな葛藤であれば、しっかり対話をすることで解消できると感じています。現場で疑問に思うことがあればすぐに監督に相談しますし、監督からの提案に対しても自分の考えを伝えながら、お互いの認識をすり合わせていくことを意識しています。

――明治時代の女性、かつ良家に生まれたりんを演じるうえでの苦労はありましたか?

育ちが良い役柄なので、所作にはかなり気を配りました。毎日必ず所作指導の先生がついてくださり、細かな動きまでモニターで徹底的にチェックして指導してくださいました。りんの育ちの良さや、そこから醸し出される上品な空気感が画面越しにしっかり伝わるように意識して丁寧に演じています。

――長く演じる中で、ご自身とりんに似ていると感じる部分はありますか?

全然ないかもしれないです(笑)。普段から自分と役が似ているかどうかは極力考えないようにしています。共感できるか、という自分の価値観だけで役を考えてしまうと、25年しか生きていない自分自身の枠組みの中に収まってしまい、表現の自由度が減ってしまう気がするんです。脚本家や監督が描こうとしている人物像から離れてしまうのが怖いので、あえて自分と重ね合わせないようにしています。

■“朝ドラ”だからこそ届けられる力があるんだなと実感しました

――“朝ドラ”ならではの大きな反響を実感される機会も多いのではないでしょうか。

たくさん反響をいただいていて、本当に励みになっています。中でも身近な方からのうれしかった言葉がふたつあって。
ひとつは、現在転職活動中で勉強をしている親友からの言葉です。毎朝8時から15分間の『風、薫る』を見て、「今日はうまくいかないなと思う日でも、主人公のふたりが頑張っている姿を見ると『私も頑張ろう』と思える。これが“朝ドラ”なんだと思った」と言ってくれて。長くひとりの人生を描き続ける“朝ドラ”だからこそ届けられる力があるんだなと実感しました。

もうひとつは、恩師からいただいた言葉です。恩師がお母さまの介護をされていて、最近はお母さまの感情があまり表に出なくなっていたそうなのですが、テレビに映る私を見て「(あなたの)教え子じゃない!」と気付いて、すごく笑顔になってくださったそうで。『風、薫る』に登場した“おっちょこちょい節”も歌ってくれていると伺い、すごくうれしかったです。

■バディとしての絆がどんどん強くなっていると感じます

――バディである直美は、りんにとってどのような存在だと感じますか?また、演じる上坂さんの魅力も教えてください。

序盤の女学校編では、りんが直美を助けたり輪に入れるようにサポートしたりする場面が多かったのですが、物語が進むにつれて、直美がりんの進むべき道に導いてくれる存在になっていきます。全てにおいてただ手を引っ張り導くのではなく、りんが新たな一歩を踏み出すきっかけを常に与えてくれるのが直美なんです。お互いに支え合いながら、バディとしての絆がどんどん強くなっていると感じます。

樹里ちゃんは、主人公・直美役の発表の時からすごくしっかりしていて、年下とは思えないほど落ち着いた頼もしい存在です。彼女はものすごく感受性が豊かで、演じる直美と樹里ちゃん自身がリンクする瞬間が何度もあり、直美と一緒に心を動かしながら撮影している姿を隣にいながら感じる場面がたくさんありました。今後の放送でも、樹里ちゃんと直美が重なって見えるような瞬間がたくさんあると思いますので、ぜひ注目してご覧いただきたいです。

■長丁場を走りきるために大切なのは“体と心の健康”

――1年間同じ役を演じ続ける“朝ドラ”だからこそ得られた学びはありましたか?

これまでは同じ期間にいくつかの作品を並行して撮影することが多かったのですが、“朝ドラ”では1年間ひとつの役に時間をかけてじっくり向き合える分、思考をどんどん深いところまで掘り下げていくことができました。

また、映画のように脚本が完成してから挑むのではなく、撮影を進めながら新しい台本が上がってくるスタイルも新鮮でした。未来の展開から逆算して作るのではなく、その時々の感情を現場で積み上げていく役作りの形は、役者として大きな学びになりました。

――長丁場の撮影を乗り切るために、やっておいて良かったことはありますか?

撮影に入る前に、しっかりと長めのお休みをいただいたんです。1年間走り切るためには体力が第一ですし、何より心が健康でなければいけません。自分の心が疲弊していると、周りのスタッフやキャストにも影響を与えてしまうかもしれない。しっかりと英気を養ってからクランクインできたことが、本当に良かったなと感じています。

――これまでの撮影を振り返って、楽しかったシーンと大変だったシーンを教えてください。

楽しかったのは、女学校でみんなが集まるシーンですね。私自身も女子校に通っていたので、当時の学生時代を思い出すような懐かしい空気感がありました。朝から晩までの撮影でも、みんながいたから乗り越えられたと思えるほど温かい現場でした。

大変だったのは、第14週、15週です。それまで看護する側だったりん自身が、心を病んでいく過程をどう表現したらいいだろうかとすごく悩みました。でも、あの苦しい期間を全力でやり切ったことが、第16週以降のりんの姿にも生かされているのではないかと思います。

■職業への敬意、そして視聴者へのメッセージ

――今回、看護婦の役を演じたことで、職業に対する思いの変化はありましたか?

看護婦の役を演じるにあたり、“医療技術を磨くこと”に意識が向きがちだったのですが、指導いただいた看護師の皆さんとお話しする中で、看護師という仕事は、技術以上に患者さんの心に寄り添う仕事なのだと感じました。
病気と向き合いながらどう生きたいか、一人ひとり異なる患者さんの人生に正解やマニュアルはありません。その人にとっての幸せは何かを常に問い続け、寄り添い続ける。想像以上に心を使うお仕事なのだと知ることができたことは大きな発見でした。

――最後に、視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

私自身も今後の展開でまだ知らない部分がたくさんあり、ワクワクしながら撮影に臨んでいます。そして半年という長い放送期間、毎朝見守ってくださる視聴者の皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。りんと直美のふたりがどのような人生を選択し、今、私たちが生きるこの時代にどんな影響を与えていったのか。ふたりが起こす“風”を、ぜひ最後まで温かく見届けていただけたらうれしいです。

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