
【ストーリー】
父親を亡くした17歳のアンディ(ビリー・バラット)と、視覚障害を持つ義理の妹パイパー(ソラ・ウォン)は、里親制度によって郊外に住むローラ(サリー・ホーキンス)のもとで暮らし始めることに。
この家には、言葉を話さない少年オリバー(ジョナ・レン・フィリップス)が里子として預けられていた。
新しい生活に慣れるにつれ、アンディは自分には興味をまったく示さずに、パイパーにだけ異様な愛情表現をするローラに疑問を抱き、オリバーの不気味な存在感にも不安を募らせていく。
ある日、アンディはローラやソーシャルワーカーのウェンディ(サリー・アン・アップトン)に、18歳になったらパイパーの後見人になりたいと明かした。
ところがローラは、兄妹の知らないところである計画を実行し、アンディが後見人には不適格であるかのように仕向けるのだった。

■A24歴代最高収益のホラー映画を手がけたダニー&マイケル・フェリッポウ監督の待望の新作が完成!
監督を務めたのは、登録者数696万人(2026年8月現在)の人気YouTubeチャンネル「RackaRacka」で注目されたオーストラリア出身の双子の兄弟ダニー&マイケル・フィリッポウ。長編デビュー作『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』(2023年)が、2023年サンダンス映画祭で評判を呼び、A24が北米配給権を獲得。全世界興収9200万ドルを突破し、A24における歴代最高収益のホラー映画となったことで、フィリッポウ兄弟の名は広く世に知られることとなった。
呪物を使って霊を自分に取り憑かせるという危険な遊びを繰り返していた若者たちが、やがてとんでもない恐怖に飲み込まれていく姿を描いた前作の『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』。クライマックスで主人公の少女に訪れる悲劇と、そのあとのオチに衝撃的を受けたのを覚えている。
フィリッポウ兄弟と初タッグを組んだのは、第90回アカデミー賞作品賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』(2018年)、『パディントン』シリーズ(2016年、2018年)など幅広い作品で活躍するサリー・ホーキンス。
『パディントン』や『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2023年)で優しい母親役を演じていたサリーが、本作では不気味な里親役を演じていると知って驚いたが、いざ鑑賞してみると、狂気を秘めたヤバい女性ローラを見事に体現していてさすがだった。

主人公の兄妹、アンディとパイパーを演じるのは、BBCのTV映画『Responsible Child』(2019年/日本未公開)で存在感を示し、『クレイヴン・ザ・ハンター』(2024年)、Apple TVのドラマ『インベージョン』(2021〜2025年)などに出演する注目の若手俳優ビリー・バラットと、生まれつき視覚障害を持つソラ・ウォン。本作が俳優デビューとなったウォンは、新人とは思えないほど繊細な演技でパイパーの心情を丁寧に表現していた。

言葉を話さない少年オリバーを演じるのは、NetflixのTVシリーズ『スイート・トゥース:鹿の角を持つ少年』(2021〜2024年)にゲスト出演したあと、オーストラリア映画『How To Make Gravy』(2024年/日本未公開)で主演に抜擢され注目を集めたジョナ・レン・フィリップス。
オリバーは、目がクリクリとしたかわいい少年の姿で登場するが、物語が進むにつれて不審な行動をするようになり、兄妹を不安にさせる存在となっていく。そんなオリバーをジョナは圧倒的な存在感で見事に演じ切った。

■邪悪な秘密を持つ里親ローラが兄妹を陥れる、ベテラン女優サリー・ホーキンスの怪演に注目!
物語は、父親を亡くした兄妹アンディとパイパーが、里親制度によってローラの元で暮らすところから始まる。ところが、一見優しくて親切そうなローラの意外な一面が現れるたびに、観客とアンディは“おやおや?ちょっとこの人変では?大丈夫かなぁ…”と、不安になるのだ。
たとえば、アンディとパイパーが到着してすぐ、ローラが二人と一緒にセルフィーを撮るシーン。撮影した画像をアンディが確認すると、前に立つローラのせいで自分の顔はほとんど写っていなかった。ほかにも、アンディの名前“だけ”を間違えたり、食事の時にオリバー“だけ”がいなかったり、亡くなった犬の剥製が部屋に置かれていたりと、冒頭からローラに違和感を感じずにはいられないシーンが満載。そんなローラの不気味さを、いい塩梅で体現したサリー・ホーキンスの怪演に注目してもらいたい。

ローラに不信感を抱きつつも、アンディはかわいい妹をいつも気にかけ、言葉を話さないオリバーともコミュニケーションを取ろうと接触する。ところが、ローラとパイパーの留守中に、オリバーが大怪我を負う事件が発生してしまう。アンディは咄嗟にオリバーを病院へ連れて行こうとするが、庭に引かれた白い境界線の外に出た瞬間、オリバーは錯乱状態に陥ってしまうのだ。
オリバーが怪我をするシーンはかなりエグい描写になっており、“もうやめて〜!!”と心の中で叫ぶほどつらかった。その反面、庭の白い境界線から出た瞬間に様子がおかしくなったオリバーを見て、何か呪いのようなものがかけられているに違いないと気づき、それまでの伏線が回収されていく展開にはワクワクさせられた。

実はローラは、夜な夜な謎の儀式を録画したVHSテープを見ており、その儀式で“ある目的”を果たそうとしているのだ。そのためにアンディとパイパーが危険な状況に陥っていくのだが、どんな目に遭ってもパイパーだけは守ろうとするお兄ちゃんの姿に胸を打たれた。


物語の終盤、ローラの秘密に気づいたアンディは、彼女と死闘を繰り広げることに。そしてパイパーには恐ろしい姿に変貌したオリバーが接近し、背筋が凍るようなホラー展開へと突入する。
ローラの目的はなんなのか、なぜローラはパイパー“だけ”に異様な愛情表現をするのか、そしてオリバーは一体何者なのか…。
衝撃の真実に驚くこと間違いなしの本作を、ぜひ劇場で鑑賞してもらいたい。



文=奥村百恵
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