脊椎空洞症は、脊椎が竹輪状に空洞化する難病です。
重症化すると車椅子を必要とすることもあるため、症状に気づいた時点でできる限り早めに治療を受けることが大切です。
では、この病気の具体的な自覚症状とはどのようなものなのでしょうか。また、発症に気づいた場合は何科を受診すべきなのでしょうか。
本記事では脊椎空洞症の検査や治療方法などについて解説します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
脊椎空洞症の検査と治療方法

どのようなタイミングで受診すれば良いか教えてください。
この病気は、治療が早いほど質の高い予後が期待できます。もし気になる症状がある場合は、できる限り早めに病院を受診してください。
たとえば次のような症状がある方は、念のため検査を受けるとよいでしょう。
手足のしびれ・麻痺
手足の脱力感
温度を感じない
痛みを感じない
何科を受診すれば良いですか?
対応している診療科は次の通りです。
脳神経内科
脳神経外科
整形外科
小児科(小児の場合)
どの診療科を受診すべきか迷ったときは、まず最寄りの内科やかかりつけ医に相談するのも1つの方法です。
必要があれば、適当な診療科に誘導してもらえる可能性があります。避けたいのは、受診を我慢してしまうことです。
この病気は放置すると麻痺が下半身に及び、日常生活に支障をきたす場合もあります。重症化リスクを避けるためにも、気になる症状は放置しないでください。
どのような検査をするのか教えてください。
代表的な検査方法はMRIです。MRIは磁気を利用して体内の様子を画像化する方法です。
MRIを利用することで、脊椎中の空洞の有無を確認できます。ペースメーカーなどの体内金属がある方はMRIは利用できません。
その場合は、CTや水溶性溶剤などを使って検査することもあります。
ちなみに、この病気はたまたま受けた健康診断・人間ドッグなどで発見されることもあります。
治療方法・手術内容を知りたいです。
治療方法は、大きく分けて「薬物療法・理学療法」と「外科手術」の2種類があります。
薬物療法・理学療法は、症状の軽減を目指す対症療法として用いられることがほとんどです。
たとえば手足のしびれ・痛みがある場合は、鎮痛剤などの薬剤を利用します。脱力感などによって手足が不自由な場合は、歩行訓練などのリハビリが有効です。
対して外科手術では、病気の改善(緩解)が期待されます。代表的な手術方法は次の2つです。
後頭蓋窩減圧術
空洞ーくも膜下腔短絡術
後頭蓋窩減圧術は、頭蓋から脊柱管の範囲を切り開いて押し広げる方法です。
頭蓋から脊柱管にかけての空間が広がることで、脳脊髄液の流れがよくなるため、脊髄の中に溜まりにくくなります。
特にキアリ奇形の方に有効な治療法で、多くの場合、術後3ヶ月内に空洞の縮小化が期待できます。
一方、空洞ーくも膜下腔短絡術は脊髄の空洞内に細いチューブを挿入する術式です。
より具体的にいうと、挿入したチューブから脳脊髄液を他所に流出させることで、空洞の縮小化を図る方法です。
後頭蓋窩減圧・空洞ーくも膜下腔短絡術は、適切な時期に実施すれば質の高い予後を期待できます。
一方で、すでに症状が進行している方は、手術を実施してもあまり効果を期待できないこともあります。
できる限り高い効果を得るためにも、手術治療は早い時期に行うことが大切です。
編集部まとめ

脊椎空洞症は国が指定する難病の1つです。早期に治療すれば改善が期待できるため、症状に気づいた時点で早めに病院を受診することが大切です。
質の高い予後を実現するためにも、気になる症状は放置しないようにしましょう。
参考文献
117 脊髄空洞症|厚生労働省
脊髄空洞症(指定難病117)|難病情報センター
脊髄空洞症、キアリ奇形|秋田県立循環器・脳脊髄センター

