
「認知症かもしれない…」そんな小さな違和感は、誰にでも訪れる可能性があります。久しぶりの帰省で親の様子が気になったり、もの忘れが増えた自分にふと不安がよぎったり。いざというとき、どこに相談すればいいのか、受診や介護を拒否されたらどうすればいいのか——。知っているだけで、心の負担は少し軽くなります。今回は、認知症専門医・精神科医の繁田雅弘先生に、家族が迷わないための基本を教えていただきました。

教えてくれたのは▷認知症専門医・精神科医 繁田雅弘先生
栄樹庵診療所院長。メモリーケアクリニック湘南名誉顧問。2024年東京慈恵会医科大学名誉教授。『安心して認知症になれるまち』を目指す活動拠点「SHIGETAハウスプロジェクト」代表を務め、認知症医療の第一人者として活躍。
最初の相談はどこにすべき?
「認知症かも」と感じたとき、まず悩むのが相談先です。専門病院を受診しなければ、と思いがちですが、最初は医療機関でなくてもかまいません。大切なのは、本人や家族が不安に思っていることを、早い段階で言葉にして外に出すこと。身近な相談先としては、自治体が設置する「地域包括支援センター」がお勧めです。専門スタッフが幅広く相談に乗ってくれます。また、かかりつけ医がいれば、診察のついでに「最近もの忘れが気になって」と話してみるのもいいでしょう。地域の民生委員に相談先の橋渡しを頼むことも可能です。医療機関についても、丁寧に話を聞いてくれるところか、手際よく検査をしてくれるところかなどの情報が得られるかもしれません。さらに、「認知症疾患医療センター」や、経験者の話が聞ける「認知症カフェ」、電話相談なども心強い味方になります。
■「 認知症かも」と思ったときの相談先
【最初の相談窓口】地域包括支援センター
[窓口の特長]市区町村が設置する高齢者福祉の総合窓口。保健師、社会福祉士などが常駐し、介護保険サービスや地域の支援体制全般について無料で相談できます。電話での相談も可能です。
【最初の相談窓口】かかりつけ医
[窓口の特長]普段の健康状態を知っている医師に相談することで、専門医や専門医療機関への紹介をスムーズに受けられます。
【最初の相談窓口】認知症カフェ
[窓口の特長]認知症の本人や家族、専門職、地域住民が気軽に集い、安心して話せる交流の場です。同じ立場の方と経験を共有することで、孤立感の解消や心の休息にもつながります。地域ごとにさまざまな団体が運営。
【最初の相談窓口】認知症疾患医療センター
[窓口の特長]各都道府県・政令指定都市が指定しており、住んでいる地域で検索するのが確実。認知症の正確な鑑別診断や、行動・心理症状(BPSD)など専門的な医療を受けたいときに受診します。地域医療や介護との連携も担います。
【最初の相談窓口】認知症の電話相談
[窓口の特長]認知症の電話相談には、「認知症の人と家族の会」の相談窓口、自治体(地域包括支援センター)、認知症疾患医療センターがあります。不安な気持ちの相談から、介護制度や受診の目安まで、内容に応じて案内してもらえます。
受診や介護への拒否で困ったら?

「最近もの忘れが目立つが、まだ病院に行けていない」「診断はされたものの、本人が介護サービスを拒否している」。そんな、受診や介護の手前で立ち止まっているときに力強い味方となるのが「認知症初期集中支援チーム」です。通常、介護サービスは本人や家族が窓口へ出向いて申請して初めて受けられるものですが、このチームは向こうから自宅へやって来てくれます。だからこそ、限界を感じてからではなく、家族に余力があるうちにこそ使ってほしい支援です。
チームを構成するのは、認知症サポート医や看護師、保健師、社会福祉士など、認知症支援に精通したプロたち。必要に応じて家庭を訪問し、本人の様子や生活環境、家族の困りごとを丁寧に聞いて整理し、そのうえで、受診や介護サービスにつなぐための次のステップを一緒に考えてくれるのです。
家族が「病院へ行こう」と言うと角が立つ場合でも、そこはプロ。専門的なアプローチで本人と信頼関係を築き、受診の動機付けや、その後のスムーズな生活支援へとつないでくれます。支援期間はおおむね半年以内ですが、その間に医療機関や介護サービスとのパイプをしっかり作ってくれるので、家族の負担は一気に軽くなります。原則として相談や訪問に料金はかかりません(その後の医療費や利用料は別途必要)。窓口は、各自治体の地域包括支援センターを中心に、市区町村や認知症疾患医療センター、診療所、病院などに配置されており、介護保険の申請前でも利用できます。
早い段階で医療や介護が介入すれば、病気の進行を緩やかにし、その後の経過を良くすることができます。早いうちにこうしたプロの手助けに慣れておくことが、自立した生活を長く続けるための大きなポイントです。
※本企画は、書籍『知っトク認知症 家族と本人が自分らしく暮らし続ける超入門』(KADOKAWA)の内容を基に再構成・再編集したものです。
※情報は2026年2月現在のものです。法令や条例の改正などにより、内容が変更になる場合があります。
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家族が認知症になっても、一人で悩まず専門家に相談しながらサポートできるということを、知っておくだけで、心の負担はずいぶん軽くなります。
イラスト/docco 図版作成/島村千代子
文=徳永陽子

