家族の「死にたい」はアピールではない?「精神疾患」を抱え込まず医師へ繋ぐ方法

家族の「死にたい」はアピールではない?「精神疾患」を抱え込まず医師へ繋ぐ方法

家族内で「この行動、ちょっとおかしいかも?」と思うことはありませんか? もしかしたら、それは精神疾患の初期症状かもしれません。家族の精神疾患で周囲ができることについて「こどもとおとなのクリニックパウルーム」の黒木先生に教えていただきました。

黒木 春郎

監修医師:
黒木 春郎(こどもとおとなのクリニックパウルーム)

千葉大学医学部卒業。千葉大学医学部文部教官などを経た後の2008年に「医療法人嗣業の会」理事長に就任。2023年、東京都港区に位置する「こどもとおとなのクリニックパウルーム」の院長に就任。医学博士。日本小児科学会専門医・指導医・出生前コンサルト小児科医、日本感染症学会専門医・指導医・評議員。千葉大学医学部臨床教授、公認心理師、臨床発達心理士、子どもの心相談医、医師少数区域経験認定医師。

編集部

家族が精神疾患を発症したら、周囲はどんなことに気をつければいいのでしょうか?

黒木先生

まずは「傾聴すること」、つまり相手の立場に立って、気持ちに共感しながら理解しようとすることが重要です。「そういう考えはよくない」「〜をすべき」などと指示をしたり責めたりするのではなく、ただ「そうだね」「つらかったね」と共感しながら話を聞いてあげましょう。本人が話したくなさそうであれば、無理に聞こうとしないことも大事です。そっと見守るという姿勢でサポートしてあげましょう。

編集部

そのほかに気をつけることはありますか?

黒木先生

家事などの家のことはできるだけ代わってあげて、本人の負担を減らすことも大切です。例えば、奥さんが産後うつになったら、ご主人が家事を全ておこなってあげましょう。そして、奥さんが相談できる人を誰か、見つけてあげてください。うつなどの精神疾患は、脳という臓器の病気です。胃が疲れて体調が悪いときには極力、飲食しないようにしたり、負担に良いものを食べたりして胃を休ませますよね。脳もこれと同じで、具合が悪いときには脳を休ませることが大切なのです。

編集部

本人が「死にたい」という言葉を漏らしたときには、周囲の人はどうしたらいいのでしょうか?

黒木先生

「そんなことを言ってはいけない」と説教をするのではなく、否定も肯定もせずに「そうか、大変だったね」と気持ちを受け止めてあげましょう。それから一息おいて、「相談に行こうか」と誘ってあげましょう。ときどき「死にたい」と漏らしたり、実際にリストカットしたりするのは「こんなにつらい、というアピールだ」と言う人がいますが、その解釈は間違いです。そのように捉えて放置してしまうと、いずれ本当に自殺してしまうリスクもあります。信頼できる医師に相談する、すぐに受診できないなら医療機関によっては電話相談をおこなっているので、こうしたサービスを活用してもいいでしょう。

編集部

とにかく、医療者を間に入れることが必要なのですね。

黒木先生

はい。うつ症状を示したり、「死にたい」と漏らしたりすることには、必ず背景があります。そのようなとき、「あれが原因だ」「こうするべきだ」などと、家族同士で話しても解決を期待することはできません。そのため、第三者である医師に入ってもらい、医療的な介入を求める必要があります。そうすることで家族の疲労も軽減されますし、スムーズに治療を進めることができるのです。

編集部

そのほか、家族が気をつけることはありますか?

黒木先生

うつ症状を示している人や精神疾患の気配が感じられる人に、お酒を勧めるのは控えましょう。お酒を飲むと気分が高揚して、これまでできないと思っていたことができるような気がすることがあります。そのため、自殺願望のある人が、お酒を飲んだはずみで本当に自殺してしまうことも多いのです。「つらいことはお酒を飲んで忘れよう」といった考えで、安易にお酒を勧めるのは極めて危険です。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

黒木先生

精神疾患は誰でも発症し得るので、もし家族が変だと思ったら早めに信頼できる医療者に相談することが大切です。また、家族の誰かが精神疾患を発症すると、ほかの家族もイライラしたり、相手を責めたりしがちですが、そうならないようにすることも重要です。本人がつらい気持ちを吐き出しているときには相手の気持ちに寄り添い、共感しながら受け止めてあげましょう。加えて、本人が「つらい」「死にたい」などを口にせず、1人で悩みを抱え込んでいるときもあると思います。そのようなときには、家族が一緒に楽しめることに誘ってあげましょう。家族は人類にとって本質的なもの家族の誰かが心の調子を崩したとき、その不調にいち早く気づくことができるのは家族です。医療や公共サービスなどを上手に活用しながら、家族全員の負担を減らす方法を探してみるようにしましょう。

※この記事はメディカルドックにて<家族の“心身の異変サイン”、見逃してない? 「精神疾患」の前兆・受診の目安を医師が解説>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

配信元: Medical DOC

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