長期休みに入ると、子どもが夜更かしをしてしまいがち。できるだけ生活リズムを崩さないようにして欲しいけれど、夜更かしが駄目な理由をきちんと知りたい。どんなデメリットがあるの?今回は、さくらひだまり訪問クリニック院長の加藤久普先生にお話をお伺いしました。

夏休みや冬休みなどの長期休みに入ると、子どもたちの就寝時間はどうしても遅くなりがちです。「早く寝なさい!」と毎日叱ることに疲れ果てている親御さんも多いのではないでしょうか。
現役の医師として日々子どもたちを診察していると、長期休み明けに体調不良やメンタルの不調を訴えて来院されるケースが非常に多く見受けられます。その原因の多くは「睡眠リズムの乱れ」にあります。
今回は、医学的な視点を交えながら、夜更かしがもたらす悪影響と、子どもが自ら納得して眠りにつけるような説得方法、そして日常生活でできる「睡眠衛生指導」と最新の医学的対策についてお伝えします。
夜更かしと睡眠不足が子どもに与える「3つの悪影響」
子どもを説得するためには、まず親御さん自身が「なぜ睡眠が重要なのか」を正しく理解しておくことが大切です。米国小児科学会(AAP)や日本睡眠学会の知見に基づき、睡眠不足が引き起こす影響を3つの観点から解説します。
○健康・発育への悪影響(身体面)
子どもの成長に欠かせない「成長ホルモン」は、深い眠り(ノンレム睡眠)の間に最も多く分泌されます。夜更かしによって睡眠の質が低下すると、身体の成長が阻害されるだけでなく、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。
○感情のコントロールへの悪影響(メンタル面)
睡眠不足は、脳内の「セロトニン(精神を安定させる神経伝達物質)」の分泌を乱します。これにより、イライラしやすくなる、些細なことで怒る、集中力が切れる、気分の落ち込みが激しくなるといった情緒不安定な状態を引き起こします。
○学力への悪影響(勉強面)
脳は睡眠中に、日中経験したことや学習した知識を整理し、記憶として定着させます。睡眠時間が削られると、せっかく塾や宿題で勉強した内容が脳に定着せず、学習効率が著しく低下してしまいます。
「早く寝なさい」は逆効果?子どもを動かす説得術
「早く寝なさい」という命令形の言葉は、子ども(特に学童期〜思春期)の反発を招きがちです。説得のコツは、「睡眠のメリットを、子どもの興味に合わせて伝えること」です。
●スポーツを頑張っている子へ
「寝ている間に筋肉が作られて、足が速くなる魔法のホルモンが出るんだよ。ライバルに勝つために〇時には寝ようか」
●勉強やゲームを頑張っている子へ
「脳は寝ている間に、今日の勉強やゲームの攻略法をセーブ(保存)しているんだって。寝ないとデータが消えちゃうかもしれないよ」
このように、「寝ることが自分へのメリットになる」と納得させることが、自発的な行動の変化に繋がります。また、夜早く寝かしつけることよりも、「毎朝○時には必ず起きて、カーテンを開けて太陽の光を浴びる」というルールを一緒に決めてください。朝の光を浴びることで体内時計がリセットされ、約14〜16時間後に自然と眠気が訪れるようになります。

家庭でできる「睡眠衛生指導」のポイント
説得してもどうしても夜更かししてしまう場合、無理に布団に縛り付けるのではなく、睡眠の質を高めるための環境調整(睡眠衛生)を行ってみてください。
◇就寝1時間前の「デジタルデトックス」
スマートフォンやゲーム機からのブルーライトは、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を強く抑制します。就寝1時間前には画面を閉じましょう。
◇カフェインの摂取制限
エナジードリンクやコーヒーだけでなく、緑茶やコーラなどにもカフェインは含まれます。覚醒作用が長く続くため、午後〜夕方以降の摂取は控えるよう指導してください。
◇睡眠環境を整える
寝室は「暗く・静かに」が鉄則です。エアコンで快適な温度・湿度を保ち、「ベッドは寝るためだけの場所」として、ベッドの上でスマホを触ったり食事をしたりしないようにしましょう。
◇入眠儀式(ルーティン)をつくる
「お風呂に入る→パジャマに着替える→軽くストレッチをする→部屋を暗くする」など、毎日同じルーティンを繰り返すことで、脳が「これから寝る時間だ」と認識しやすくなります。
◇日中の活動量と入浴時間の調整
日中に適度に体を動かして疲労感を得ること、そして就寝の1.5〜2時間前までにぬるめのお湯(38〜40℃)に浸かり、深部体温が下がるタイミングで布団に入ることもスムーズな入眠をサポートします。
◇眠くなってから布団に入る
「寝よう寝よう」とすると逆に寝れなくなってしまうもの。眠くなってから布団に入るようにすることで、ベッドを寝るためだけの場所と脳に認識させ、寝付けずに悶々と過ごすことを防げます。
睡眠衛生指導でも改善困難な場合と、受診・最新の睡眠薬という選択肢
前述のようなご家庭での環境調整(睡眠衛生指導)を根気よく続けても、どうしても夜更かしや昼夜逆転が改善困難なケースもあります。睡眠が不足すると成長障害や学習効率の低下、疲労感の原因になったり、長期休暇明けの学校のリズムに適応できず不登校の原因になったりしてしまうことも。その場合は、無理をせずに医療機関(小児科や睡眠専門外来、精神科など)を頼ることも有効な選択肢です。
近年では、子どもや若年層にも使いやすい「新しいタイプの睡眠薬」が登場しています。
例えば、子どもの神経発達症に伴う睡眠障害に使われるメラトベル(睡眠ホルモンであるメラトニンの受容体に働きかける薬)や、脳を覚醒させる物質(オレキシン)の働きをブロックして自然な眠りを促すデエビゴ、クービビック、ボルズィといったお薬(オレキシン受容体拮抗薬)です。
これらは、従来型の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系など)に見られたような「耐性(だんだん効かなくなる)」や「依存性(やめられなくなる)」の心配が極めて少ないのが大きな特徴です。
医師の指導のもと、こうした新しい睡眠薬を「毎日同じ時間」に継続して飲むことで、その時間になると自然と眠くなってくるようになり、ズレてしまった体内時計の強力なリセット効果が期待できます。
おわりに
長期休みの夜更かし問題は、子ども自身が「睡眠の大切さ」を理解し、親と一緒に生活リズムを作っていくプロセスこそが、子どもの自立への大きな一歩となります。
まずはご家族で一緒に朝日を浴びたり、寝室の環境を整えたりすることから無理なくスタートし、それでも難しい場合は一人で抱え込まずに、医療のサポートも上手に活用してみてください。
※文章の校閲などで生成AIを使用しています。
執筆者

加藤久普
さくらひだまり訪問クリニック東京埼玉院院長
東京大学理学部、および名古屋大学医学部を卒業。羽島市民病院にて内科・救急等の幅広い臨床経験を積んだのち、慶應義塾大学精神・神経科学教室に入局し助教を務める。
その後、鶴ヶ丘ガーデンホスピタルや都立松沢病院など精神科医療の第一線で研鑽を積む。さらに複数の在宅クリニックにて精神科および内科の訪問診療に従事して地域医療の経験を深め、「さくらひだまり訪問クリニック」を開設。精神科専門医、精神科指定医、認知症診療医の資格を有する。
精神疾患や認知症を抱える方が、住み慣れたご自宅で穏やかに過ごせるよう、専門性の高い訪問診療に尽力している。
【クリニック情報】
さくらひだまり訪問クリニック
精神科・心療内科・内科・訪問診療
住所:東京都北区赤羽西3ー26-12ロッソカンパーナ205
TEL:03-6324-8406

