
郵便配達員たちは毎日、町の隅々まで郵便物を配達して回っている。そんな現役局員が実際に経験した不思議な話や怖い話を漫画化したのが『郵便屋が集めた奇談』である。作者は現役郵便局員の送達ねこ(@jinjanosandou)さん。同僚たちの体験談を漫画化するうちに、他局からもエピソードが届くようになったという。今回紹介するのは、T集配センターのNさんが配達中に遭遇した心霊現象『禍辻(まがつじ)』だ。


■交差点で遭遇した金縛り!怪異も退散する執念
Nさんが夜勤で配達用バイクを走らせていたときのこと。ある四つ角で停止すると急に悪寒が走り、何かが背中にしがみついてきた感触があった。振り返りたいが、首回りが硬直して金縛りにあったように動けない。そのときNさんは「マズい」と焦った。
作中ではその理由が事細かに描かれており、読者はその内容に衝撃を受けるはずだ。Nさんにとり憑いた怪異も、あまりの衝撃に金縛りを解いてしまったのではないだろうか。
Nさんが焦った理由について、送達ねこさんは「このときは配達先の受取人に特別な事情があって、Nさんも間に合わせようと必死だったようです。通常は、細かい時間のご希望に沿うことは難しいのですが…」と語る。
送達ねこさんによると、配達で避けられない「辻(交差点)」で不思議な目に遭う話はよく聞くという。
「そばに誰もいないのに声をかけられたとか、火の玉のようなものにバイクを追い越されたとか…。『交差点で赤ん坊を見たら最寄りの神社へ入れ』と申し送りを受けた夜勤者もいました。赤ん坊がいるような場所ではないので何か『魔』のようなものかもしれません」
■怪異より恐ろしい時間指定…配達のリアル
しかし配達員にとって、ときには怪異よりも時間指定のほうが怖いという現実がある。「配達は時間との戦いになりますね。ある配達員は『交差点の歩道橋の上から落ちてくる人影を見ても気にしないで』と申し送りで聞いていて、実際に遭遇したときは、影だけで地面に落ちた音も姿もないので『ああ、これか』と察して配達の先を急いだそうです。あとで『再配の時間指定に間に合わないほうがずっと怖かった』と振り返っていました」と送達ねこさんは明かす。
急ぐあまり恐怖を感じる暇もない。本エピソードには、読者から「命よりも仕事を優先する執念が好き」「10分在宅を配慮してくれるのすごいな」と、怪異に対する恐怖よりも配達へのプロ意識に対する感想が多く寄せられた。
Nさんは「夜勤で走るとおかしなことがよくあり、四つ角の辻が多いです」と締めくくっている。田舎の道は街灯も少なく真っ暗だ。バイクで走る配達員たちには安全運転を心がけ、まずは健康第一での配達を祈るばかりだ。
『郵便屋が集めた奇談』は「背筋がゾクッとしたけど、めちゃくちゃおもしろい」と好評を博している。日本のどこかでひっそりと起こる怪異を、ぜひ覗き見してみてほしい。
取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)
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