断酒で何が変わる?“肝機能”の回復を促す「治療法」と食事のコツ【医師監修】

断酒で何が変わる?“肝機能”の回復を促す「治療法」と食事のコツ【医師監修】

お酒をやめることで、肝臓はどのくらい回復するのでしょうか?脂肪肝の段階であれば数週間から数ヶ月で改善が期待でき、肝炎でも断酒の継続によって炎症が落ち着くことがあります。肝硬変では完全な回復は難しいものの、それ以上の進行を抑えることはできます。食事・運動・定期受診を組み合わせながら、焦らず着実に取り組んでいくことが、長期的な健康維持につながります。

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

アルコール性肝障害の治療と日常生活での対策

アルコール性肝障害の治療は、断酒を基盤にしながら、食事・運動・薬物療法を組み合わせることが中心となります。このセクションでは、医療機関での治療内容と、日常生活で取り組める対策について具体的に解説します。

医療機関での治療方針と薬物療法

アルコール性肝障害の治療において、最も根本的かつ重要な治療法は断酒です。断酒なしにはどのような薬物療法も十分な効果を発揮しにくく、治療の前提として断酒の実行が不可欠とされています。

薬物療法としては、肝庇護薬(グリチルリチン製剤やウルソデオキシコール酸など)が使用されることがあります。これらは肝臓の炎症を和らげたり、胆汁の流れを改善したりする作用が期待されています。重症のアルコール性肝炎に対してはステロイド剤が使用される場合もありますが、感染症合併の有無などを考慮したうえで判断されます。肝硬変が進行し、肝機能が著しく低下した場合には、肝移植が治療の選択肢となることもあります。

なお、治療の内容は病状の段階によって大きく異なります。自己判断でサプリメントや市販薬を使用することは、肝臓にさらなる負担をかける可能性もあるため、必ず担当医と相談のうえで検討してください。

食事・栄養管理と生活習慣の改善

アルコール性肝障害がある人は、アルコールによるカロリー過多の一方で、必要なビタミンやミネラルが不足しやすい傾向があります。とくにビタミンB1(チアミン)の欠乏は、ウェルニッケ脳症(意識障害や眼の動きの異常などを引き起こす神経系の障害)のリスクにつながるため、早期からの補充が推奨されることがあります。

食事では、高たんぱく・低脂肪を基本としながら、野菜・果物・海藻類などビタミン・ミネラルが豊富な食品をバランスよく摂取することが大切です。肝硬変がある場合は、たんぱく質の摂取量や塩分制限について担当の管理栄養士または医師に確認してください。

適度な運動も肝臓の健康維持に役立ちます。ただし、肝炎が活動性の高い時期や、体調が優れないときは無理に身体を動かさず、担当医の指示に従って活動量を調整することをおすすめします。禁煙も肝臓への負担を減らすうえで有益であり、喫煙習慣がある人は併せて見直しを検討してみてください。

定期的な受診と検査で病状を管理する

アルコール性肝障害は、一度改善したように見えても、飲酒が再開されると再び悪化するリスクがあります。そのため、治療後も定期的に消化器内科や内科を受診し、血液検査・超音波検査などで肝臓の状態を継続的に確認することが大切です。

肝硬変の段階にある人は、6ヶ月に一度程度の画像検査と腫瘍マーカーの確認が推奨されることがあります。肝がんへの移行は時間をかけて進行することが多く、定期的な検査によって早期に発見できる可能性が高まります。自覚症状がないからといって受診を先延ばしにせず、主治医と相談しながら検査のスケジュールを決めていきましょう。

アルコール依存症が背景にある場合には、肝臓の治療だけでなく依存症への対応も並行して行うことが、長期的な回復につながります。一人で抱え込まず、医療・家族・支援機関を適切に活用することが、健康を取り戻すための第一歩となります。

まとめ

アルコール性肝障害は、初期段階では自覚症状がなく気づきにくい反面、飲酒習慣を見直すことで回復が期待できる病気でもあります。毎日の飲酒量を把握し、適正量を守り、休肝日を設けることが予防の基本です。症状が現れていなくても、習慣的な飲酒がある人は定期的な血液検査を受けて肝機能を確認することをおすすめします。気になる症状がある人や肝機能の異常を指摘された人は、早めに消化器内科や内科を受診し、専門の医師に相談してみてください。

参考文献

厚生労働省「アルコールと肝臓病」

厚生労働省「飲酒に関するガイドライン」

日本消化器病学会「患者さんとご家族のための肝硬変ガイドブック2023」

配信元: Medical DOC

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