バセドウ病眼症の治療には、健康保険が適用されるものと全額自己負担となる自由診療があります。ステロイド療法や眼窩減圧術などは医学的必要性が高い場合に保険適用となりますが、審美的な改善を目的とした施術は自由診療となることがあります。また、高額療養費制度の活用で自己負担を抑えることもできます。治療費の目安と制度の概要をわかりやすくご紹介します。

監修医師:
柳 靖雄(医師)
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。
バセドウ病眼症の治療費―保険適用と自由診療の違い
バセドウ病眼症の治療を受けるにあたって、多くの方が心配されるのが費用の問題です。治療法によって公的医療保険が適用されるかどうかが異なり、費用の幅も広いため、事前に概要を把握しておくことが大切です。このセクションでは、主な治療法と費用の目安について解説します。
保険適用の治療と費用の目安
バセドウ病眼症の治療には、健康保険が適用されるものと全額自己負担となる自由診療があります。一般的に、目の機能障害や激しい炎症を抑えるといった医学的必要性が高い治療は保険適用となりますが、見た目の改善(審美目的)のみを追求する施術は自由診療となるケースが多いです。
保険適用が認められる代表的な治療には、以下のものがあります。
ステロイド療法(点滴パルス療法または内服):眼の奥(眼窩内)の激しい炎症やむくみを抑えるために用いられます。数日間の入院による点滴投与の場合、医療費は3割負担で数万円から十数万円程度が目安となり、入院日数や使用量によって異なります。外来での内服治療であれば費用は比較的抑えられます。
放射線治療(眼窩放射線療法):ステロイド療法と組み合わせて検討されることがあり、眼の奥の炎症を鎮める目的で行われます。通院で複数回行うことが多く、保険適用の場合は自己負担額を抑えられます。
眼窩減圧術(がんかげんあつじゅつ):眼球を収めている骨の一部や脂肪組織を除去してスペースを作り、飛び出た眼球を後ろに引っ込める手術です。眼窩減圧術は、視神経圧迫や重度の突出・閉瞼不全など、視機能や角膜の保護が必要な場合に検討されます。複視に対しては、まずプリズムや斜視手術などが検討されることが多く、減圧術自体が複視を悪化させる可能性もあるため、適応は専門医が慎重に判断します。
1ヶ月の医療費の自己負担額が所得に応じた上限額を超えた場合に超えた分が払い戻される「高額療養費制度(厚生労働省)」を活用できます。長期の治療が必要な場合や、入院・手術を伴う場合は、事前に限度額適用認定証を準備するなどしてこの制度を積極的に活用することをおすすめします。
自由診療と費用の目安
外見の審美的な改善のみを主な目的とする手術や、国内で保険承認されていない一部の最新治療法・術式を選択する場合は自由診療となります。自由診療の場合は費用が全額自己負担となるため、事前に医療機関で詳細な見積もりを確認しておくことが重要です。
例えば、機能障害を伴わない段階での目元のたるみ・まぶたの形を整える整容手術や、見た目を整えるためだけに眼窩の脂肪除去を行う場合などは美容的な要素が強く、自由診療となることがあります。こうした手術の費用は、実施する医療機関や術式によってさまざまであり、数十万円から百万円以上になることもあります。
なお、甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑えるためのチアマゾールなどの飲み薬(抗甲状腺薬)による治療はバセドウ病そのものに対するものですが、眼症状の悪化を防ぐ上でも不可欠です。こちらは保険適用となるため、通院ごとの自己負担は比較的抑えられます。
費用や適用される制度については医療機関や症状の重症度によって異なるため、治療計画を立てる段階で担当医や病院の医療相談窓口(メディカルソーシャルワーカー)へ気軽に確認してみることをおすすめします。
まとめ
バセドウ病眼症(甲状腺眼症)は、バセドウ病に関連して眼窩の組織に炎症・腫脹が起きる状態で、女性に多くみられます。初期は異物感・充血・まぶたの腫れ・眼瞼後退など、疲れ目や花粉症と紛らわしい症状から始まることがあり、放置すると複視や、まれに視神経障害など視機能に関わる状態へ進むことがあります。評価では「炎症が今あるか(活動性)」と「症状の重さ(重症度)」を分けてみるのが重要で、時期によって薬物治療と手術の役割が異なります。喫煙は悪化と強く関連するため禁煙が大切です。治療費は保険診療と自由診療の境界、高額療養費・医療費控除などの制度を医療機関や相談窓口で確認すると安心です。目の調子がいつもと違う、バセドウ病治療中に眼症状が気になる場合は、内分泌内科と、バセドウ病眼症に詳しい眼科へ早めに相談してください。
本記事の数値や費用は一般的な目安です。症状の進み方や必要な検査・治療は個人差が大きく、すべての方に同じ経過・同じ費用が当てはまるわけではありません。
参考文献
日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」
厚生労働省「健康・医療高額療養費制度を利用される皆さまへ」
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科「甲状腺」
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