理工系「女子枠」をめぐる論争の再燃
大学入学共通テストまで100日を切りました。そんななか、SNSでは、大学の理工系学部で「女子枠」を新設する動きに対しさまざまな議論が交わされています。これは、技術分野における女性比率の低さという構造的な課題を解消し、多様性を確保するための「ポジティブ・アクション」ともいえるでしょう。しかし、この措置は「受験機会の公平性」という原則と衝突し、SNS上で激しい論争を巻き起こしているのです。
議論が再燃しているのが、愛媛大学の事例です。同大学は2024年11月に2026年度入試から工学部総合型選抜IIにおいて計13人の女子枠を設ける方針を発表し、当時も物議を醸しました。そして、同校の総合型選抜入試IIの入試が来月に迫る2025年10月に入り、とある研究者がX(旧Twitter)で改めてこの方針を指摘する投稿を行ったことで、議論が再び大きな注目を集める形となりました。
投稿者は、女子枠導入が海事産業を除く分野で男性の受験機会を大幅に制限し、高等教育進学率の低い地方男子に「さらなる困難」をもたらすと警鐘を鳴らしました。批判側は「性別による選抜は逆差別だ」「能力主義に反する」と強く訴え、導入推進の背景にある「社会的な是正措置」という大義と激しく対立しています。
「公平性」がもたらす意図せぬ結果~区立九段中等の事例
女子枠の新設とは真逆の動きを見せたのが、男女別定員枠を撤廃した区立九段中等教育学校の事例です。同校は2024年度入試から性別による定員を撤廃し、完全に成績順での合否判定に移行しました。
その結果、男女の成績差や内申点の傾向がそのまま反映され、合格者の大半を女子が占めるという現象が発生したと、複数の教育関係者によって推測されています。もちろん、この事例は、中学入試の話であり、大学の入試とはまた異なります。しかし、「公平性の追求」が、意図せず「男女比の偏り」という別の不均衡を生み出す可能性は、今回の女子枠問題の複雑さを浮き彫りにしています。

