家庭の冷凍庫は危険?“アニサキス”の激しい症状を招く落とし穴

家庭の冷凍庫は危険?“アニサキス”の激しい症状を招く落とし穴

腸アニサキス症を防ぐには、日常的な食材の選び方や調理の工夫が大切です。加熱・冷凍処理を正しく行うこと、鮮度の高い魚を選ぶこと、内臓を早めに除去することなど、実践できる対策はいくつかあります。「何に気をつければよいのか分からない」という方も、ここで紹介する具体的な方法を参考にしていただければ、日々の魚料理をより安心して楽しめるようになるかもしれません。

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

腸アニサキス症を予防するための食べ物の選び方と管理方法

腸アニサキス症は、一度発症すると激しい下腹部痛や腸閉塞などを引き起こすおそれがありますが、適切な食材の選び方や調理・管理方法を徹底することで効果的に予防することが期待できます。
このセクションでは、日常生活で今日から実践できる具体的な食材管理の方法と、感染予防につながる魚介類の扱い方について分かりやすく解説します。

アニサキスを死滅させる加熱・冷凍処理の方法

アニサキス幼虫は熱と低温に弱いため、適切な温度管理を行うことでほぼ死滅させることができます。

厚生労働省の指針によると、加熱処理については「中心温度70℃以上」、または「60℃で1分以上」加熱することが最も確実な死滅条件とされています。この条件を満たすように魚をしっかり煮たり、焼き魚にしたりして完全に火が通った状態で食べることが、アニサキス予防の最も基本かつ強力な対策となります。

冷凍処理については、「マイナス20℃以下で24時間以上」冷凍することで、アニサキス幼虫を完全に死滅させることができます。スーパーなどで販売されている刺身用生鮮魚介類のうち「解凍」と表示されているものは、通常この基準を満たした低温処理が施されているため安全性が高いとされています。一方で、一般的な家庭用冷蔵庫の冷凍室は、扉の開閉などにより庫内温度がマイナス18℃前後(またはそれ以上)までしか下がらない機種が多く見られます。そのため、家庭の冷凍庫に一晩入れただけでは完全に死滅しない可能性がある点に十分注意が必要です。

なお、醤油やわさびをつける、酢に漬ける(しめさば等)、塩漬け(塩辛等)にするといった一般的な調理法では、アニサキスは死滅しません。市販や手作りの加工品を食べる際にも過信は禁物です。

鮮度の高い魚を選ぶことと内臓の取り扱いの注意点

アニサキスは魚が生きている間は主に内臓の表面に寄生していますが、魚が死んで鮮度が落ちていくと、内臓を破って私たちが普段食べる「身(筋肉部分)」へと移動する習性があります。そのため、水揚げや購入後、できるだけ早い段階で内臓を傷つけずに取り除くことが、身への侵入を防ぐうえで決定的に有効です。

丸一匹の魚を購入する際は、新鮮なものを見極めることが基本です。目が澄んでいて濁りがなく、皮にピンとした張りや光沢があり、身が硬く引き締まっているものが鮮度の高い目安となります。購入後は放置せずすみやかに持ち帰り、冷蔵保存(10℃以下)を徹底してできるだけ早く調理しましょう。

ご自宅で生の魚をさばく場合は、まず内臓を丁寧に除去し、内臓の汁や便が身に付着しないよう水道水でしっかり洗い流すことが推奨されます。また、まな板や包丁などの調理器具を内臓用と身を切る用で分けるか、途中で綺麗に洗浄・消毒することも大切です。

刺身やたたきなどの薄切りにする際には、明るい光にかざして2〜3cmほどの白い糸状の虫が潜んでいないか目視で確認してください。さらに、魚の身に細かく刃を入れる「隠し包丁」を施すことや、食べる際に「よく噛むこと」も、幼虫の身体を物理的に傷つけて感染力を奪うための有効な補助手段となります。日頃から生魚を食べる機会が多い方は、これらの管理方法と調理の工夫を組み合わせることで、安全においしく魚料理を楽しみましょう。

まとめ

腸アニサキス症は、生魚を食べた後に腸へアニサキスが侵入することで起きる感染症で、強い腹痛や腸閉塞などの症状が現れることがあります。予防の基本は、魚の加熱処理や冷凍処理、鮮度管理の徹底です。感染後は腸への刺激が少ない食事を心がけ、再感染を防ぐための食生活の見直しも大切です。治療費については保険が適用され、高額療養費制度の活用で負担を軽減できる可能性があります。症状が気になる方は、早めに消化器内科へ相談されることをお勧めします。

参考文献

厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」

国立健康危機管理研究機構「アニサキス症とは」

食品安全委員会「アニサキスによる食中毒」

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

配信元: Medical DOC

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