バセドウ病眼症の治療は長期にわたることがあるため、公的医療費支援制度を活用することが負担軽減につながります。高額療養費制度や医療費控除、傷病手当金など、利用できる制度はいくつかあります。また、受診の流れや、内分泌内科と眼科の連携についても把握しておくと役立ちます。経済的な不安を和らげながら、焦らず着実に治療を進めていくための情報をお届けします。

監修医師:
柳 靖雄(医師)
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。
バセドウ病眼症の治療費を抑えるための制度と受診の流れ
バセドウ病眼症の治療は長期にわたることが多く、医療費や生活費の負担が気になる方も少なくありません。利用できる公的制度をあらかじめ把握し、上手に活用することで、経済的な不安や負担を大きく和らげることができます。このセクションでは、制度の概要と受診の流れについて解説します。
利用できる公的医療費支援制度
バセドウ病眼症の治療にあたって、利用を検討できる公的制度には次のようなものがあります。
まず、先述の「高額療養費制度(厚生労働省)」があります。これは、同一月内の医療費自己負担額が一定額を超えた場合に、超過分を申請によって払い戻してもらえる仕組みです。所得区分によって上限額が異なりますが、収入が標準的な方であれば、1ヶ月の自己負担が数万円程度に抑えられます。事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、病院の窓口での支払いを最初から上限額以内に抑えることができるため、入院や手術を予定している場合は、加入している健康保険組合や市区町村の窓口に事前問い合わせを行うことをおすすめします。
次に、「医療費控除」があります。これは、1年間(1月〜12月)に支払った世帯全員の医療費の合計が原則10万円(または総所得の5%)を超えた場合に、確定申告によって所得税の還付を受けられる制度です。通院にかかった交通費(電車・バスなどの公共交通機関)も対象となることがあるため、日付や金額の記録・領収書を残しておくと役立ちます。また、会社員などで症状の悪化により長期休職が必要になった場合は、公的健康保険から手当金が支給される「傷病手当金」も重要な支援策となります。
さらに、治療が長期にわたる場合は、民間の医療保険が適用されることもあります。入院や手術、特定先進医療などに対して給付金が支払われる保険に加入している方は、保険会社に問い合わせて適用条件を確認することをおすすめします。
受診の流れと診療科の選び方
バセドウ病眼症が疑われる場合、どの診療科を受診すればよいかわからない方もいるかと思います。一般的には、以下の流れで受診が進むことが多いです。
まず、動悸や体重減少などの甲状腺の症状が疑われる場合は内分泌内科(ホルモンの異常を専門に診る科)を受診し、血液検査でバセドウ病の診断を受けます。その後、目のゴロゴロ感や腫れといった眼症状が現れた場合や予防的な確認が必要な場合は、バセドウ病眼症に対応できる眼科を受診して眼球突出の程度や視機能の評価を行います。重症の場合は眼形成外科(目元の手術専門)や放射線治療科など、複数の専門医師が連携して治療にあたります。
眼科では、ヘルテル眼球突出計と呼ばれる専用の器具を用いて眼球の突出量をミリ単位で測定したり、眼球運動の確認や視力・視野検査が行われたりします。さらに眼の奥の筋肉や脂肪の腫れ具合を調べるため、CTやMRIといった画像検査を行うことが一般的です。
初めて受診する際には、現在の症状(いつから・どのような症状があるか)、バセドウ病の診断を受けているかどうか、現在服用している薬、生活習慣(特に喫煙の有無)をメモにまとめておくと診察が非常にスムーズに進みます。特にたばこは眼症を急激に悪化させる最大の要因であるため、禁煙指導を受けることも大切です。自分の症状や不安を医師にきちんと伝えることが、安心できる治療への確実な第一歩です。
まとめ
バセドウ病眼症(甲状腺眼症)は、バセドウ病に関連して眼窩の組織に炎症・腫脹が起きる状態で、女性に多くみられます。初期は異物感・充血・まぶたの腫れ・眼瞼後退など、疲れ目や花粉症と紛らわしい症状から始まることがあり、放置すると複視や、まれに視神経障害など視機能に関わる状態へ進むことがあります。評価では「炎症が今あるか(活動性)」と「症状の重さ(重症度)」を分けてみるのが重要で、時期によって薬物治療と手術の役割が異なります。喫煙は悪化と強く関連するため禁煙が大切です。治療費は保険診療と自由診療の境界、高額療養費・医療費控除などの制度を医療機関や相談窓口で確認すると安心です。目の調子がいつもと違う、バセドウ病治療中に眼症状が気になる場合は、内分泌内科と、バセドウ病眼症に詳しい眼科へ早めに相談してください。
本記事の数値や費用は一般的な目安です。症状の進み方や必要な検査・治療は個人差が大きく、すべての方に同じ経過・同じ費用が当てはまるわけではありません。
参考文献
日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」
厚生労働省「健康・医療高額療養費制度を利用される皆さまへ」
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科「甲状腺」
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