
和田雅成&高橋大翔がダブル主演を務めるドラマ「あなたを殺す旅」が毎週金曜日、FODにて配信中。主人公の若頭・片岡はひと言で言えない複雑な魅力が感じられ、世話係の小田島が持つ片岡へのある思いと使命にドキドキとさせられる。本記事では第1話~第3話の見どころを紹介する。(以下、作品のネタバレを含みます)
■ジャンルの中でも根強い人気を誇るヤクザBLを実写化
本作の原作は浅井西が手掛ける同名漫画で、BLジャンルの中でも根強い人気を誇るヤクザBLとなっている。多くの組員から愛される若頭・片岡と密命を背負う組員・小田島のひりつくような愛を活写。片岡を和田が、小田島を高橋が演じている。
物語は、仁義を重んじて侠気のある若頭・片岡がとある騒動の責任を取る形で、組長の実子・桐井(遊屋慎太郎)から「ほとぼりが冷めるまで身を隠せ」と命じられた、行方をくらます旅から始まる。そんな片岡の世話役に任命されたのは、かつて組長の付き人をしていた小田島。運転や食事から性欲処理まで淡々と役目をこなすが、実は桐井から片岡を「殺せ」と厳命されていた。小田島にはかけがえのない親友・朝日(堀海登)を片岡のせいで亡くした恨みがあるのだった。
■片岡というキャラクターの吸引力に注目!
まず注目して欲しいのは片岡というキャラクターの吸引力だ。第1話の序盤で片岡は気に入らない相手には非情な暴力をふるい、口答えすると薄笑いを浮かべて底しれない冷酷ぶりを見せる。しかし、一方で、傷ついた小鳥の世話を子どもから頼まれると両手で包みこんで面倒を見てやるという心ある姿を見せる。酷薄な人物なのか、情に厚いのかわからない飄々としていて掴みどころがないキャラクターだ。
しかも、小鳥で両手が塞がっていてもカップ麺があれば食べたがり、小田島に食べさせろと言う。猫舌で飛び上がって熱がり、ふて腐りながら「フーフーしろ」と命令。冷ますといそいそと食べて、「んー」とご満悦の笑みを浮かべる。駄々をこねている子どものようで、美味しくてご機嫌になる単純さには憎めない愛らしさがある。組員たちから慕われるのも頷け、見ているといつの間にやらハートを掴まれてしまう複雑な魅力を持っているのだ。
■原作者もお気に入りの“フェリーのシーン”が見どころに
次に注目すべきは小田島の過去と片岡への思い。第3話では家族を殺したと言っていた小田島の事情が描かれる。自分自身が生まれちゃいけなかったという小田島の胸中を思うと胸が苦しくなる。
そして、そんな小田島がたった一人、家族のような存在として心の拠り所にしていたのが親友の朝日。人懐こくて名前の通りに明るく、あどけなさが残る笑顔が印象的だ。片岡に憧れていた彼が片岡のせいで命を落としてしまい、小田島は本当の意味で孤独に。あまりにも辛く、小田島が片岡への怨恨を募らせるのも納得できる。片岡の側にいる小田島が実は片岡を恨み、殺す密命を受けていることに緊張感は高まり、さらに片岡がどこまで把握しているのか分からないところもドキドキとさせられる。
さらに第3話のフェリーのシーンも見どころのひとつ。小田島が見せたいものがあると言って片岡を小さな島に連れて行った帰り。小田島が体を重ねたのは片岡が初めてだと告げ、片岡は予想以上に重大に受け止めて責任を取ると言って笑う。空と海が広がり風を感じる船上でのこの場面は、血生臭くて閉塞感のあるこの作品のなかでは珍しく開放感がある。心情的にも息が詰まりそうになる物語のなかでふと前向きな気持ちになり、原作者の浅井西も原作コミックの中で好きなシーンに挙げている注目ポイントだ。
吸引力が高いキャラクターの片岡と彼への恨みと密命を抱えた小田島による逃避行を描いた、ロードムービーの趣を感じさせる本ドラマ。果たして小田島は使命を果たすのか、片岡と小田島の関係はどうなるのか、しっかりと見守っていきたい。
◆構成・文=牧島史佳
※高橋大翔の「高」は、正しくは「はしごだか」

