骨減少症を放置すると、骨粗しょう症へと進行するリスクが高まります。骨粗しょう症まで進むと、日常的なちょっとした動作でも骨折が起こる可能性があります。手首・背骨・股関節付近の骨折は特に注意が必要で、とくに大腿骨頸部の骨折は歩行困難につながる場合もあります。また、骨減少症は中高年女性だけの問題ではなく、無理なダイエットや摂食障害、無月経などによって若い世代にも見られます。スポーツをしている若い女性でも、無月経が続く場合は骨密度の確認をおすすめします。

監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医
骨減少症(オステオペニア)の基準値と診断方法
骨減少症かどうかを判断するには、骨密度検査の数値と国際的な基準値を照らし合わせる必要があります。このセクションでは、診断に使われる指標や検査の種類について詳しく説明します。
WHOが定めるTスコアの基準値
骨密度の評価には、世界保健機関(WHO)が定めた「Tスコア(T-score)」という指標が広く使用されています。Tスコアとは、健康な若年成人(20〜30代の骨量ピーク時)の平均骨密度を基準(0)として、現在の骨密度がその平均からどれだけ離れているかを示す数値です。
WHOの基準によると、骨密度の評価は以下のように区分されています。
Tスコアが-1.0以上:正常
Tスコアが-1.0未満〜-2.5超:骨減少症(オステオペニア)
Tスコアが-2.5以下:骨粗しょう症
つまり、Tスコアが-1.0から-2.5の範囲にある場合が骨減少症と診断される基準です。この段階では骨粗しょう症ほどの骨脆弱性(こつぜいじゃくせい)はないものの、放置すると骨粗しょう症へ移行するリスクがあるため、生活改善や場合によっては医療的なアプローチが検討されます。
なお、日本では若年成人の骨密度平均値(YAM値:Young Adult Mean)を基準に80%未満を骨減少症、70%未満を骨粗しょう症と判断する方法も用いられることがあります。YAM値とTスコアは単純には換算できませんが、YAM値70%前後は、おおむねTスコア−2.5前後に相当します。YAM値70%以上80%未満とTスコア−1.0~−2.5は、いずれも骨量低下の評価に使われますが、ただ両者の範囲は完全には一致せず、参考の値として使用されています。いずれの基準を用いても、医師による総合的な判断が重要です。
骨密度検査の種類と測定部位
骨密度を測定する検査には主にいくつかの種類があります。現在、日本の医療機関で広く用いられているのは「DXA(デキサ)法」と呼ばれる二重エネルギーX線吸収法です。DXA法は低被曝で精度が高く、腰椎(ようつい)や大腿骨頸部を測定することが一般的です。これらの部位は骨折リスクが高い場所であり、骨密度の変化が早く現れるため、診断に適した測定部位とされています。
そのほかに、かかとの骨密度を超音波で測定する「超音波法」や、手の指の骨密度をX線で測定する「MD法」なども用いられます。超音波法やMD法は健康診断などのスクリーニング(ふるい分け)検査として活用されますが、精度の面ではDXA法が優れているとされています。スクリーニングで骨密度の低下が疑われた場合は、DXA法による精密検査を受けることが推奨されます。
骨密度検査は痛みを伴わず、短時間で終わるため身体的な負担が少ないのが特徴です。閉経後の女性や骨折のリスクが高い方は、定期的に検査を受けることが望まれます。特に骨折の既往がある方や、ステロイド薬を長期に使用している方は、医師に相談のうえ検査の頻度について確認することが大切です。
まとめ
骨減少症(オステオペニア)は、骨粗しょう症の一歩手前の状態であり、自覚症状が乏しいながらも将来の骨折リスクに関わる重要な疾患です。特に女性は閉経後のエストロゲン減少により骨密度が低下しやすく、定期的な骨密度検査と早めの対策が骨の健康を守るうえで大切です。診断にはTスコアやYAM値による基準値が用いられ、生活習慣の改善が基本となりますが、リスクに応じた薬物療法が検討される場合もあります。治療費は保険診療の範囲内で一定程度カバーされるため、費用面で過度に心配せず、まずはかかりつけ医や内分泌内科・整形外科に相談することからはじめてみてください。
参考文献
日本骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版」
日本骨代謝学会「骨粗鬆症の 予防と治療ガイドライン 2015 年版」
国立長寿医療研究センター「骨粗鬆症外来」
厚生労働省「ウェブ検索結果日本人の食事摂取基準(2020 年版)」
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