歌舞伎町で中学生が転落死、通行人も負傷…飛び降りに「巻き込む」法的問題は?

歌舞伎町で中学生が転落死、通行人も負傷…飛び降りに「巻き込む」法的問題は?

東京都新宿区歌舞伎町で10月13日、女子中学生が雑居ビルから転落し、死亡した。下にいた男性も頭にケガを負ったが、命に別状はないという。

報道によると、この中学生は歌舞伎町の「トー横」と呼ばれる一帯に出入りしており、事件当時、市販薬を過剰摂取する「オーバードーズ(OD)」状態だったとみられている。

詳しい経緯は明らかになっていないが、飛び降りに「巻き込まれた」かたちで通行人がケガを負うケースは過去にもある。こうした場合、法的にはどのような責任が問われるのか。冨本和男弁護士に聞いた。

●飛び降りで他人をケガさせた場合の責任

──飛び降りた本人が下にいた人にケガをさせた場合、法的責任はどうなりますか。

仮に本人が生存していた場合、刑事上は殺人未遂罪や傷害罪、過失傷害罪に問われる可能性があります。

また民事上は、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負うと考えられます。

どの罪にあたるかは、飛び降りた際に本人が下の状況をどの程度認識していたかなど、具体的な事情によって判断されます。

一方で、本人が亡くなっている場合、刑事責任は問われません。

ただし、親などの監督義務者が監督を怠ったことと、本人の行為による損害との間に相当因果関係が認められる場合は、監督義務者が損害賠償責任を負う可能性があります(民法714条・709条)。

また、親が監督義務を怠っていなかったとしても、相続放棄をおこなわずに本人の債務を相続した場合には、相続人となる遺族が損害賠償責任を負うことになります。

●「オーバードーズ」状態は責任に影響するか

──中学生はオーバードーズ状態だったと報じられています。これは責任に影響しますか。

本人が自分の意思で薬を大量摂取し、その結果としてオーバードーズ状態になったのであれば、自己の行為を制御できないことを自ら招いたと評価されるため、責任が軽減されることは基本的にありません。

一方で、親などの監督義務者については、日常的に本人がオーバードーズを繰り返していたことを知りながら適切な対応をしなかった場合、監督義務の懈怠があったとみなされ、民事上の責任を問われる可能性があります。

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