地震は予知できるの?地震予知・地震予報の現状

地震は予知できるの?地震予知・地震予報の現状


画像:PIXTA

日本は世界でも有数の地震大国で、どこに住んでいても被災するリスクがあります。地震は気象災害のように事前に予想ができず、いつどこで発生するかわからない災害です。

しかし、科学が進歩した現代においても地震予知は難しいのでしょうか。今回の記事は、地震予知や地震研究の現状について解説します。「地震予知は今後できるのか?」という問いへの回答も記載しています。疑問に感じている方は確認ください。

予想されている大地震の種類

近い将来、広範囲にわたり大災害をもたらすといわれているのが、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、南海トラフ地震、首都直下地震などです。以下の表に、想定される被害や想定死者数についてまとめました。

北海道から九州まで、判明しているだけでも約2,000の活断層があります。下の図で紹介されているように、全国各地の断層付近で大地震の発生が予想されています。

画像引用:政府 地震調査研究推進本部「主要活断層の評価結果」

また、上記の表以外の場所でも大地震が発生すると考えられます。実際、2016年に発生した熊本地震の原因となった「布田川断層帯」「日奈久断層帯」の30年以内の地震発生確率は1%未満でした。

各地には、まだ見つかっていない断層もあるともいわれています。大地震が予想されているエリアはもちろん、予想されていないエリアでも地震対策が欠かせません。

地震予知はできない

現在の科学では、「地震が発生する正確な場所・日時・規模」を示す地震予知はできません。

一方で、「南海トラフ地震の発生確率は30年以内で60%~90%程度以上」とする幅を持たせた予測は可能と考えられています。その理由は、過去に100~150年といった一定の周期で大地震が発生している地域が特定されているためです。

「過去100年間で大地震が発生していないので、これから50年以内に大きな地震が発生しそう」という話は、過去の大地震の周期からある程度は想定できます。

地震予知ができない理由は、気象災害と異なり地震の発生が予想できる明確な材料がないためです。「地震の前に地震雲が出る」「地震の前にナマズが暴れる」など、地震の前兆と噂される現象はいくつかありますが、どれも科学的根拠はありません。

そもそも、小規模な地震は毎日のように発生しています。人命に関わる大地震の前だけに都合よく前兆が現れるとは考えにくいです。

デマに注意! 地震予知が騒がれた事例

地震予知は、定期的にデマがささやかれて世間をにぎわせています。最近の例では「2025年7月5日に巨大地震が起きる」という噂が流れ、一部では日本への渡航を控える外国人観光客が増えて、航空便が減便されるなど経済的な影響も生じました。

このデマは、ある漫画家の著書に描かれた内容をもとに広がり、SNSやYouTubeなどを通じて、国内外に拡散されました。

漫画家本人も特定の日付での災害発生を否定していましたが、デマが急速に広がったことで気象庁長官も異例の会見を行い、「日時・場所・規模を特定した地震予知は現代の科学では不可能であり、そのような情報は完全なデマである」と強く否定しています。

また、地震予知に関するデマは定期的に発生しては消えていくという傾向もあります。こうしたデマの背景には、多くの人が地震への不安を抱いていることも挙げられます。

デマに振り回されないためにも、公式の科学的情報を信頼し、冷静に行動することが大切です。日ごろから地震への備えを怠らず、信頼できる情報源から情報を得ましょう。

震源地で異常な現象が発生したときに出される地震臨時情報はある

地震予知はできませんが、地震発生の可能性の高まりを呼びかける情報はあります。その一つは、気象庁が発表する「南海トラフ地震臨時情報」です。

南海トラフ地震に関する情報には以下の2つがあります。

(引用:気象庁「南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件」を元に一部改変して著者作成

「南海トラフ地震臨時情報」とは、南海トラフ地震が予想されているエリアにおいて大地震が発生したり、岩盤に大きな伸縮が見られたりした場合に「南海トラフ付近に異常が起こっているので大地震など不測の事態に備えてください」と注意を促し、解説する情報です。

ただし、南海トラフ地震の発生前に異常な現象が発生するとは限らないため、この臨時情報が発表されずに大地震が発生する可能性もあります。

このように、気象庁では地震を予測するためにさまざまな取り組みを行っています。これらの情報を知ることも地震防災の面で大切です。

配信元: 防災ニッポン