●羽田空港は責任を負わない可能性大
一方、被害者が羽田空港に責任を追及するのは、かなり難しそうです。
空港は通常、警備会社と業務委託契約(請負契約)を結んでおり、請負人が第三者に加えた損害について、注文者(空港)が賠償責任を負うことは原則ありません(民法716条本文)。
ただし、空港が指示や監督で過失を犯していた場合には、例外的に責任を問われる可能性があります(同条ただし書き)。
●被害者の請求先は?
前述のとおり、被害者は検査員本人に加え、警備会社に対しても損害賠償を請求できます。どちらに対しても全額請求でき、支払義務は連帯的です。ただし、二重取りはできず、一方から全額を受け取れば、他方への債権は消滅します。
仮に警備会社が全額を支払った場合には、従業員に対して求償するのが一般的です。ただし、使用者責任の趣旨から、会社も一定の責任を負うべきと判断される場合があります。
今後は、警備会社による内部調査や、再発防止に向けた管理体制の強化が求められそうです。
(弁護士ドットコムニュース・弁護士/小倉匡洋)

