粉瘤(ふんりゅう)は皮膚の下にできるしこりで、多くは良性ですが、放置すると炎症や感染を起こし、腫れや痛みにつながることがあります。再発を防ぐための治療法や注意点を、ほんだ皮フ科クリニックの本田先生にわかりやすく解説してもらいました。

監修医師:
本田 治樹(ほんだ皮フ科クリニック)
2011年慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院皮膚科、帝京大学ちば総合医療センター皮膚科、北里大学北里研究所病院皮膚科、京都第一赤十字病院皮膚科、医療法人本田医院および京都府内の皮膚科・形成外科クリニックなどを経て2022年ほんだ皮フ科クリニックを開院。日本皮膚科学会認定専門医・指導医、難病指定医、VST認定医(ボツリヌストキシン注射認定医)、サーマクール認定医。日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会。
粉瘤とは? なぜできる?
編集部
粉瘤とは何ですか?
本田 先生
粉瘤は、皮膚の下にできる袋状の良性腫瘍のことで、アテロームとも呼ばれます。皮膚の老廃物や角質、皮脂などが袋の中にたまり、徐々にふくらんでいくことで生じます。見た目はしこりやイボのようで、触ると少し弾力があるのが特徴です。
編集部
なぜ粉瘤ができるのですか?
本田 先生
原因はさまざまですが、皮膚の毛穴や汗腺の出口が詰まり、皮膚の一部が内側に入り込むことで袋が形成されると考えられています。傷やニキビの跡から発生することもありますし、イボウイルス、ヒトパピローマウイルスなどが関係していることもあります。それから、遺伝的な要素が関係していることもあります。また、特別な原因がなく、自然にできることもあります。
編集部
どんな場所にできやすいですか?
本田 先生
顔や首、背中、耳の裏、陰部など、皮脂分泌の多い場所にできやすい傾向がありますが、全身どこにでもできる可能性はあります。大きさは数mmから数cmまでさまざまで、気づかず放置されて徐々に大きくなることもあります。
編集部
粉瘤とほかのしこりはどう見分けるのでしょうか?
本田 先生
見た目だけではわかりにくいこともありますが、粉瘤は中央に小さな黒点(開口部)があることが多いという特徴があります。また、指で押すと動くようなしこり感があります。それから、基本的に粉瘤は痛みがないという特徴もあります。ただし、確実な診断には皮膚科の診察やエコー検査が必要なこともあります。
放置することのリスクは? 自然に治る?
編集部
粉瘤は放っておいても大丈夫ですか?
本田 先生
小さいうちは症状がないため放置されがちですが、やがてボール大になることもあり、黒点状の開口部を強く押すと、臭い垢のようなものや、ドロドロした物質が出てくる場合もあります。また、放っておくと炎症や感染を起こす可能性もあります。
編集部
どんどん大きくなっていくのですね。
本田 先生
はい。粉瘤は基本的に皮膚と同じ構造を持っているので、時間の経過とともに袋が伸びて広がっていくという特徴があります。
編集部
自然に治ることはないのですか?
本田 先生
あまり大きくなる前に、自然に小さくなることはありますが、自然治癒は少ないとされています。また、袋(嚢胞)が皮膚の下に残っている限り、再発を繰り返す可能性が高いです。根本的に治すには、袋ごと取り除く処置が必要になります。
編集部
炎症を起こすとどうなりますか?
本田 先生
感染や外的な刺激など、なんらかのきっかけで炎症が起きると急に腫れて赤くなり、強い痛みや熱感が出ることがあります。内部で膿がたまって化膿性粉瘤になると、切開して膿を出す処置が必要になります。
編集部
悪性化することはありますか?
本田 先生
粉瘤自体は良性ですが、じつは悪性の腫瘍が紛れていたということもあり、治療を始める前に悪性との鑑別が大切です。特に何度も炎症を繰り返しているものや、急に大きくなったものは注意が必要です。また、何度も炎症を繰り返すと瘢痕(はんこん)化して悪性腫瘍の発生源になる可能性もあります。不安な場合は皮膚科で診てもらうと安心です。

