
監修医師:
大坂 貴史(医師)
京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
尿膜管遺残症の概要
尿膜管遺残症とは、胎児期に膀胱とへそをつないでいた尿膜管が生まれた後も閉じずに残る病気です。尿膜管は出生前に自然に閉じて索状の組織に変わりますが、この過程が不完全だと一部または全部が残り、様々な症状を引き起こします。残り方にはいくつかのタイプがあり、膀胱とへそがつながったままになる「尿膜管瘻」、途中が袋状に残る「尿膜管嚢腫」、へそ側だけ開いた「尿膜管洞」、膀胱側が残る「膀胱憩室」などが知られています。
症状は型によって異なり、へそから尿や膿が出る、繰り返すへその炎症、下腹部のしこりや痛み、排尿痛や血尿などがみられることがあります。新生児期に気づかれることもあれば、成人になって初めて症状が出ることもあります。診断には超音波やCT、MRIといった画像検査が有用です。
治療の基本は手術であり、炎症を伴う場合にはまず抗菌薬や排膿処置を行い、その後に切除します。腹腔鏡手術は体への負担が少ない一方、膀胱に近い遺残では開腹手術が必要になることもあります。乳児では自然閉鎖する例もあるため、手術時期は慎重に判断されます。
尿膜管遺残症そのものを予防する方法はありませんが、感染を繰り返すと腎機能の低下につながる可能性があるほか、尿膜管遺残症は尿膜管癌の原因になることが知られています。尿膜管癌は発見時に進行していることが多く、治療が難しい疾患であるため、早期の診断と適切な対応が重要です。
尿膜管遺残症の原因
尿膜管 (にょうまくかん) とは膀胱と臍をつなぐ細い管のことです。赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるとき、初めの1カ月程度は尿膜管を介して老廃物を母体側に排出しています (参考文献1) 。通常は生まれる前に自然と閉じて紐状になります。ところが、この閉じる過程が不完全だと、尿膜管が一部あるいは全部が残ってしまい、さまざまな症状を引き起こすことがあります。これを「尿膜管遺残症」と呼びます。
残り方にはいくつかのタイプがあります (参考文献1, 2)。
尿膜管瘻:尿膜管全体が開いたままで、膀胱と臍がつながっているタイプ
尿膜管嚢腫:途中だけ袋状に残るタイプ
尿膜管洞:臍側のみ開いたままのタイプ
膀胱憩室:膀胱側が開いたままになるタイプ
生まれてくる子供の 1% 程度に尿膜管遺残があるのではと考えられているほか、女性のほうが患者数が多いようです (参考文献2)。

