
蒼井優が主演を務める金曜ドラマ「Tシャツが乾くまで」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系)の第6話が、8月14日(金)に放送される。このほど、本作の音楽を担当するharuka nakamuraにインタビュー。毎回タイトルバックとともに流れるピアノのメロディーが印象的だが、本作における音楽のテーマ、土井裕泰監督からのリクエストなどを踏まえ、物語に溶け込む美しい旋律をどのように生み出したのか。完成までの工程や、軸に据えたものなどについて語ってもらった。
■二組の夫婦の喪失から始まる“愛”と“秘密”の物語
本作は、「silent」(2022年、フジテレビ系)、「いちばんすきな花」(2023年、フジテレビ系)、「海のはじまり」(2024年、フジテレビ系)などを手がけた脚本家・生方美久が、とある事故に巻き込まれた二組の夫婦の“愛”と“秘密”を描くオリジナルストーリー。主演を務める蒼井は、本作が18年ぶりの地上波連続ドラマ出演となる。
蒼井が演じる主人公・瀬尾咲子は、出版社で結婚情報誌の編集担当として働く40歳。優秀で仕事はできるが、私生活では面倒くさがりで少し抜けている部分も。何事もまっすぐ純粋に受け取るタイプで、愛する夫・充(松山ケンイチ)と幸せな結婚生活を送っていた。
だが、ある夏の日、充の乗っていたバスが事故に巻き込まれたことで、咲子の幸せな日常は突然崩れ去ってしまう。さらに、その事故が暴いたのは、愛する⼈の“第3⾦曜⽇の秘密”だった。
本作の演出は「カルテット」(2017年、TBS系)や映画「花束みたいな恋をした」(2021年)、「九条の大罪」(2026年、Netflix)など、ドラマや映画で数々のヒット作を手掛けた土井裕泰が担当。さまざまなジャンルの作品を手がけてきた土井が、“喪失”と“再生”の物語を繊細に描き出す。
■「主演の蒼井優さんの演技には毎話圧倒されています」
――本作の音楽を手がけることになったのは土井監督からの指名だったそうですが、当時の心境を教えてください。
土井監督の作品は少年時代から影響を受けてきました。特に印象的だったのは野島伸司さん脚本の作品や、火曜ドラマ「カルテット」(2017年、TBS系)なども。
そんな尊敬する土井監督が指名してくださったとのことで、ご一緒にものづくりができることを光栄に思い、僭越(せんえつ)ながら引き受けさせていただきました。
――生方美久さんの脚本を読み、どのような感想を持ちましたか?
とても素晴らしく、緩急があり、引きつけられました。脚本から、登場人物たちの心情に寄り添った音楽をイメージすることができました。コインランドリーという場所を軸に人間模様が交錯していくところも印象的ですよね。
初回から大きな展開が続いていますが、どこか不思議な世界観の中で物語が進んでいくところが興味深く、見ている方々からはさまざまな考察がなされるだろうと感じました。そして、やはり主演の蒼井優さんの演技には毎話圧倒されています。

■「物語からのインスピレーションも多分にあった」
――本作の音楽はどのように作っていったのでしょうか?
「話の展開はさまざまあれど、大きなテーマとして“隣にいる夫婦であれ、本当のところは分からなかったり、理解し合えていないところもありながらも生きている”というものがある」と土井監督からご説明いただきました。それらを抱えながらも前に進んでいく、慈しみのようなものがある物語だと捉え、登場人物たちの人間模様とともに寄り添うような音を意識しました。
土井監督からは、アンビエント(環境音楽)な雰囲気にまとまりすぎず、フレーズが印象に残るもの、そのフレーズとドラマのイメージが直結するようなメインテーマをリクエストいただいたので、登場人物たちの心情を表すような一歩踏み込んだメロディーを紡ぐ意識で、曲たちを作りました。
落とし込みの作業では、まずシーンのキーワードを伺ってから、マネージャーであり、いつも音楽制作として携わってくれているone cushionの山口響子とシーンのイメージなどを意見交換しながら、二人三脚で制作しました。
――普段から劇伴音楽作りをする中で意識していることはありますか?
物語へ捧げる音楽としては作品に寄り添って混ざり合うことが大切だと感じています。それがフィルムスコアリング(映像のカット割りを元に、音楽のタイミングを合わせながら作曲を行う手法)でも、今回のように完成した映像を見る前にインスピレーションから多くの楽曲を作り、(後で映像に)それらを織り交ぜていただく場合でも、音楽の自我を押し付けるのではなく、並走するようなイメージで作るように、なるべく心がけたいと思っています。
――ドラマ以外の音楽を手掛けられることも多いですが、制作面での違いや難しさを感じることはありましたか?
ここ数年は、さまざまな作品の劇伴音楽に携わらせていただいていますが、もともとはオリジナル・アルバムをリリースしてライブ活動を続けていました。劇伴音楽とオリジナルの違いについては興味深く考えています。
今回は、土井監督が指名してくださったこともあり、当初から音楽に対しての世界観が共有されていたので、僕の本来の音楽性からかけ離れたものではなく、音への信頼を感じていました。また、物語からのインスピレーションも多分にあったので、ありがたいことに自然に音楽を作ることができました。

■「キーワードについて自由に思うままに作ったものを受け入れてもらえた」
――改めて今回の制作過程を振り返っていかがですか?
今回は、シーンについてキーワードをいただいて、それについて僕が自由に思うままに作ったものを、監督をはじめ、スタッフの皆さんに受け入れていただくことができました。自然体なスタイルで取り組めたので、自分のサウンドのままで表現できたような気がします。
映像を拝見すると、スタッフの皆さんのおかげで音楽がそっと寄り添っているような形で完成していました。
――最後に、視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。
作品の力が素晴らしいおかげで、多くの方々に僕の音楽も届いているようです。懐かしい友人から連絡がくるなど、ドラマの力を感じました。
発表した後の作品は、自分の中からは手放すようにしていて、受け取っていただいた方のものとして考えています。最後まで皆さんの日常を少しでも彩ってくれることを願っています。

■haruka nakamura プロフィール
音楽家。2008年に1stアルバム『grace』を発表。近年は劇場アニメ「ルックバック」(2024年)の劇伴音楽と主題歌や、映画「この夏の星を見る」(2025年)の音楽・主題歌などを担当した。
また、蔦屋書店の音楽「青い森」シリーズを発表し、代官山蔦屋書店などで展覧会を開催。2026年には、自身のピアノ作品群から10曲を収めた初のオフィシャル楽譜本「ピアノ曲集」を発売した。
その他、音楽を手掛けた主な映像作品に、ドラマ「ひきこもり先生」(2021年、NHK総合)、ドラマ「息をひそめて」(2021年、Hulu)、アニメ「TRIGUN STAMPEDE」(2023年、テレ東系/※主題歌を担当)、ドラマ「あの子の子ども」(2024年、フジテレビ系)、ドラマ「アポロの歌」(2025年、TBS系)、映画「青い鳥」(2026年)などがある。
8月15日(土)より、「Tシャツが乾くまで」メインテーマの先行配信がスタート。


