
とりあえず村人に尋ねてみようと道を進んでいると、“第一村人”を発見。なんとその村人は、頭に「天蓋」と呼ばれる深編笠をかぶった虚無僧だった。虚無僧はこちらが訪ねるより先に「旅のお方…人探しですか?」とおもむろに聞いてきた。「え…なぜわかった?」と若者は不信感をあらわにする。「この村ではもうたくさんの人が消えてますから…」という虚無僧の言葉に若者の心はザワつくのだった。

本作『地獄鬼首蛇暴れ村』では、数々の不穏な出来事は起こっていくのだが、なかなか「ホラー展開にならない」というもどかしさが残る。ホラーとしての定石はこれでもかというくらい打たれているのだが、すべて軽々と打破されていく。ところが…だ!最後の最後でそれらがすべてひっくリ返されるのだ。

本作を描いたのは、現在自身初のミステリー漫画『仮門(かりもん) 消えた少女―10年目の真実』が好評発売中の漫画家の鳩ヶ森(@hatogamori)さんである。鳩ヶ森さんはもともとホラー漫画を得意とした漫画家である。そんな鳩ヶ森さんに本作について話を聞いてみた。

――「地獄鬼首蛇暴れ村」という村名、強すぎますね(笑)!“これでもか”というほどおどろおどろしい名前に、鳩ヶ森さんの“遊び心”を感じました。この村名にしたいきさつを教えてください。
因習村をテーマに漫画を描こうと思った際、やはり村の名前のインパクトが非常に重要だと考えました。そこでおどろおどろしい要素をこれでもかと詰め込み、「地獄」「鬼」「首」といったわかりやすく不穏な言葉に加えて、不気味なイメージを持たれやすい「蛇」も取り入れました。「蛇」と「村」の両方の漢字をタイトルに含むホラー映画が、調べた限りでは意外にも見当たらなかったというのも理由です(ゲームではありますが…)。
――すごく考えられたネーミングだったんですね。“遊び心”と言ってしまったのが申し訳ないです。
ただ、反省もあります。今にして思うと、この「蛇」というモチーフをオカルト要素としてもっと活かせたのではないかと思っています。村に伝わる「贄を求める神」と結びつけるなど、物語の根幹に関わる存在としてもう少し深く掘り下げればよかったなと…。次に似たような話を描くときはリベンジしたいと思います!
――ホラーの定石を全部外して、畳みかけてくるギャグに笑って読んでいましたが、最後にきっちり刺してくるところ、さすがでした!読者も驚いていたこの展開についてひと言お願いします。
因習村をテーマにプロットを練る中で、軽快なギャグをベースにしつつも「村の怖さ」というものを最後にドカンと描きたいと考えました。コメディ好きの私としては「主人公の男性が実家に戻ってほのぼのハッピーエンド」というオチにしたい気持ちもあったのですが、彼は一度は村を見限り出て行った「裏切り者」です。最後の結末は必然だったのかもしれません…。
――裏切り者…!!その視点は持っていませんでした。そう思って読み返してみるとギャグ展開のやりとりも怖く思えます。
pixivでは「父親がいないのはそういうこと?」「精神汚染でそう思い込まされているのでは?」という鋭いコメントもいただき、描いた私自身も「なるほど確かに…!」と唸らされました。さまざまな考察を交えながら読んでいただけていることが本当にうれしく、作者としてとてもありがたく思っています。

読者からは「ここまでほのぼの笑わせておいて最後にゾッとさせる…こんなことができるのか」「ギャグとホラーのさじ加減が、秀逸すぎる」などの声が届いた。また「父ちゃんがいないのはそういうことなんか?」という推察も…。ぜひ最後の一コマを楽しみに読み進めてみよう。
ちなみに鳩ヶ森さんの描いたミステリー漫画『仮門(かりもん) 消えた少女―10年目の真実』は、10年前の幼女失踪事件の真相を追うスピード感ある一作で、前半に散りばめられた数々の伏線を後半で見事に回収していく全192ページの本格派ミステリーである。真実が明らかとなる最後の最後まで気を抜けない読み応えある作品となっているので、こちらもあわせて読んでみて!
取材協力:鳩ヶ森(@hatogamori)
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