胃ポリープとは、胃の内側の粘膜から発生する隆起性病変を指し、一般的に良性とされています。しかし、種類や大きさによっては、がん化のリスクがあるものも存在します。本記事では、胃ポリープの種類、検査方法、治療法などについて具体的に解説します。

監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。
胃ポリープとは

胃ポリープとは、胃の粘膜から発生する隆起性の病変で、一般的には良性とされています。ただし、種類によってはがん化のリスクがあるものも存在します。
胃ポリープの概要
胃ポリープでは、胃粘膜を構成する上皮細胞が増殖、肉眼的に隆起を形成します。増殖するのは正常の上皮細胞であり、がん細胞ではありません。
胃ポリープの種類
胃ポリープは、山田分類という分類法で、肉眼的に以下の四種類にわけられます。
Ⅰ型(平滑隆起型):隆起の起始部がなめらかで、境界線が不明瞭
Ⅱ型(無茎型):隆起の起始部に明瞭な境界線がありますが、くびれはない
Ⅲ型(亜有茎型):隆起の起始部に明瞭なくびれがありますが、茎はない
Ⅳ型(有茎型):明らかに茎がある
また、後述する生検(組織検査)からわかる組織型によっても分類されます。組織型として発生頻度が高いのは以下の二種類です。
胃底腺ポリープ
周囲の粘膜と同じような色調のポリープで、ヘリコバクター・ピロリ(以下、ピロリ菌)感染などによる炎症の影響のない胃粘膜に発生します。
通常は良性で、基本的に経過観察で問題はなく、治療は必要ないと言われています。
過形成性ポリープ
過形成性ポリープは、主にピロリ菌感染による炎症を起こした胃粘膜に発生する、赤みの強いポリープです。過形成性ポリープと診断された場合は、ピロリ菌感染の有無を確認し、感染している場合には、除菌を行います。
除菌によりポリープが小さくなる、あるいは、消えてなくなる場合もあることがわかっています。
胃ポリープを調べる検査とは

胃ポリープを調べる検査には、胃透視検査、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)があります。
胃透視検査は造影剤(液体)を飲み、胃の中に薄く広げて、胃の形状や粘膜の異常をレントゲンで観察するものです。
胃カメラは長い管の先端に付いている小型カメラを口または鼻から挿入し、胃の中を直接観察するものです。
それぞれ以下のようなメリット、デメリットが存在します。これらのメリット、デメリットから、胃透視検査は、人間ドックなど、症状がない場合に行われ、症状がある場合や胃透視検査で異常がみつかった場合に、内視鏡検査が行われます。
造影剤検査のメリット
胃全体の変形をとらえやすい
手軽に行うことができる(バスによる巡回検診も可能)
検査にかかる費用が安い
検査時間が短い
造影剤検査のデメリット
小さな病変や早期の病変の検出が難しく、異常が見つかった場合は内視鏡検査が必要となる
まれに、造影剤の誤嚥による肺炎や、造影剤がなかなか排便されずに腸閉塞が起こることがある
胃カメラのメリット
高精度で小さな病変の検出も可能であり、必要に応じて組織検査や治療も同時に行えます。
胃カメラのデメリット
造影剤検査に比べるとやや高価である
侵襲的であり、患者さんによっては痛みや不快感を伴うことがある
まれに胃粘膜を損傷し、出血を起こしたり、穿孔を起こす場合がある
内視鏡検査(胃カメラ)の流れ
内視鏡検査には口から管を入れる経口内視鏡と鼻から管を入れる経鼻内視鏡が存在します。
いずれも検査前に、胃の中をきれいにするための消泡剤、胃の粘液を分解し除去する胃内粘液溶解除去剤を飲みます。
経口内視鏡の場合は、麻酔薬を飲んで喉に麻酔をかけ、経鼻内視鏡の場合は鼻にスプレーなどで麻酔をかけます。
検査室へ移動したら、台の上に身体の左側を下にして横になります。口、または鼻から胃カメラを入れ、検査が始まります。検査にかかる時間はおよそ5-10分です。希望があれば鎮静剤を使用し、検査中の不快感を軽減します。
生検(組織検査)とは
生検とは、内視鏡検査中に異常が疑われる場合の組織の一部を採取し、その病変が良性か悪性か、または炎症の程度などを顕微鏡で観察する検査です。
内視鏡検査でわかること・わからないこと
内視鏡検査は、食道や胃の粘膜の状態を直接観察することができ、潰瘍や炎症、ポリープ、がんなどの病変を発見するのに有効です。
しかし、機能的な異常(胃の運動機能異常や内臓の知覚過敏)やストレスの関与や粘膜の下にある病変(粘膜下腫瘍など)については、内視鏡だけでは診断が難しい場合もあります。そのため、必要に応じて超音波内視鏡検査やCT検査などを併用することがあります。

