
2025年春に放送され、心と体をいたわる“養生”をテーマにした温かな物語で多くの視聴者の共感を集めたNHKドラマ10「しあわせは食べて寝て待て」。その特別編となる「しあわせは食べて寝て待て~早春の養生編~」が、8月18日(火)夜10:00よりNHK総合にて放送される。本編では描かれなかった“早春”のエピソードを通して、主人公・麦巻さとこと団地で暮らす人々の穏やかな日常と新たな出会いが紡がれる。
今回は、麦巻さとこ役の桜井ユキ、さとこと団地で交流を深める羽白司役の宮沢氷魚、そして2人を温かく見守る美山鈴役の加賀まりこが約1年ぶりに集結。特別編ならではの見どころや撮影現場でのエピソード、作品に込めた思いなどを語ってもらった。
■「司と鈴さんに再会して、さとこに戻れた感覚がありました」(桜井)

――連続ドラマ放送時には、続編を期待する声も多くありました。待望の特別編、まずは制作が決まったときのお気持ちからお聞かせください。
桜井:単純にすごくうれしかったです。前作を撮り終わったとき、自分の願望も含めて、また皆さんと集まれるんじゃないかなという気がしていたんです。撮影が始まるのが楽しみでした。
宮沢:前回、最後の挨拶で「続編、もしくはスペシャルで皆さんにお会いするのを楽しみにしています」とお伝えしたんですけど、自分の中では「絶対にあるはず」という確信に近い願望があったんですよね。なので、自分が願っていたことがかなった、という気持ちでした。
加賀:鈴さんを演じたあと、「また鈴さんに会いたい」といったお手紙をいただいたりして。演じていて楽しかったし、やっぱりあの役は正解だったんだわと思っていたので、お電話をいただいたときは「やるやる!」と言ってしまいました。もう一度、鈴さんになれることがとても楽しみでした。
――クランクインは、さとこたちが暮らす団地のロケのシーンからだったそうですね。
桜井:1年しか空いてないものの、自分の中でさとこを取り戻せるのか、という若干の不安がありました。でも、司と会ったときにバチーンと来たというか、チューニングしてもらったような「あ、戻れた」という感覚がありました。そこはすごく氷魚くんに助けられたなと思っています。さとこって、こういう温度感だったなという感覚を、そこで取り戻せた気がして。そのあと、鈴さんに再会して、さらにさとこが完成したようなところがありました。
でも、今回の撮影に入る直前まで氷魚くんと別作品でご一緒していたので、視覚的にはちょっとバグを起こしたような感覚がありましたね(笑)。
宮沢:そうでしたね。役柄も全然違って、バチバチになる関係性でしたし(笑)。
桜井:一瞬、あれ?みたいなところはあったんですけど、やっぱり司になっている氷魚くんに会うとホッとするんです。不思議な感覚でした。
宮沢:撮影初日はもちろん、本読みがすごく楽しかったのを覚えています。桜井さんの第一声から、この作品の世界がまた再開するんだと思ってワクワクして。声だけなのに、自分の中でどういうシーンになるのか想像ができた。今までいろんな本読みをやってきましたけど、一番楽しかったです。
加賀:確かに、本読みは楽しかった。帰ってきた、という感じがありました。あと、団地もそう。皆さん、本当に温かいんですよ。キョンキョン(小泉今日子)さんがやった団地のドラマ(「団地のふたり」NHK総合/24年 、現在毎週(火)放送中)があったでしょう? 自転車で通りがかったおじさんに「あれ、キョンキョン?」と聞かれて「違うの。ちょっとキョンキョンが歳を取っちゃったのよ」なんて嘘ついたりして(笑)。そんな風に迎え入れてくれる団地の皆さんがとても愛おしくて。もう住みたいくらいでした。
■「身近にある幸せに改めて気付ける物語」(宮沢)

――今回の特別編で描かれるのは、連続ドラマの6話から7話をつなぐ物語。移住をあきらめたさとこが、そのあとどんな風に過ごしていたのか。さとこを取り巻く人々との日常が再び描かれていきます。改めて感じた本作の魅力を教えてください。
桜井:本編から地続きの話なので、さとこの悩みはいろいろと変わらずあるんですけど、やっぱりそこには変わらず鈴さんと司がいるんだなと。自分のことでいくら悩もうと、それを聞いてくれる鈴さんや司がそばにいるということが、今のさとこにとっては最大の強み。演じていてもお二人がいる安心感がありました。この3人の関係性の尊さ。それがこの作品の一番の魅力だなと改めて思いました。
宮沢:この作品を通して、身近な幸せの大切さ、美しさというものに改めて気付けたところがありました。広い世界や外に出ていきたいという思いを持つこともありますけど、いったん立ち止まって、自分の周りにいる人や環境に目を向けてみる。そこにいるだけで幸せを感じられる場所って、近くにありすぎてどうしても忘れがちになってしまうけれど、それを再認識する機会をまたもらえたなと思いました。
――今回も司は、少し落ち込んださとこを早朝の散歩に誘うなど、絶妙な距離感で登場しますね。
宮沢:前作の撮影を通して、その絶妙な距離感というものが沁みついてしまったのか、今回は意図的にそうしないとダメだなと思うことがなかったんです。それだけ自然と司に寄り添うことができているのかもしれないですね。僕自身も、そんな司を演じられることに心地よさを感じています。
――加賀さんは、鈴さんの魅力をどこに感じていらっしゃいますか。
加賀:鈴さんって、ビタミン剤みたいよね。鈴さん効果ってあるような気がするの。だって、元気なまま歩いて棺桶に入りそうな方でしょ。私自身は、ぽっくり逝きたいといつも願っているし、うちの母が同じように願ってたいら本当にぽっくり逝ったから、願えば通じるんだと思っているのだけど。鈴さんもきっとそういう人だろうなと思いながら演じています。
――ドラマを見ていると、だんだん鈴さんと加賀さんが混ざり合うような印象があります。
桜井:加賀さんは人間としても、役者さんとしても大先輩ですし、尊敬するところばかりです。ですが、その距離感を感じさせず、いつもフラットでいてくださる。そこが鈴さんっぽいところでもあるなと感じています。撮影をしていても、ずっとこの感じでいてくださるので、安心感があって。ちょっと失礼かもしれないですけど、一緒にいて楽しいんです。何も話さずとも、自然とそばに寄っていきたくなる空気感があるんですよね。
宮沢:加賀さんがいらっしゃる団地のシーンって、とにかく居心地がいいんです。カメラがまわっているときはもちろん、普通に他愛ない話をしているときが一番好きでした。もちろん緊張感がないわけではないんです。この作品に必要な緊張感を保ちつつ、いろんなことを楽しむ余裕を作ってくださっていたのが加賀さんなので、毎日スタジオや現場に行くのが待ち遠しかったです。きっと司も、鈴さんに同じような気持ちを持っているんだろうなと思います。
加賀:ありがとう。二人は本当に大人だから、ほどよい湯加減で、私はとても好き。時々いるじゃないですか。「まりこさーん!」って抱き着いてくるような感じは苦手なの。もともと自分が若いとき、そういうタイプじゃなかったから。二人が無理せず自然に、ほどよい距離感でいてくれたので、私も安心して撮影に臨めました。こんな三人が集まるって最高のキャスティングだなとつくづく思いますよ。いいトリオですよね。
――加賀さんご自身のバイタリティーの源は、どこにあるのでしょうか。
加賀:人間好き、好奇心、食欲が旺盛なところじゃないかしら。やっぱり一番は食欲よね。とても大事だと思う。食欲があって、代謝がいいというのが、私は一番自分が自慢できるところ。食欲がない人がいたら心配になっちゃうくらい。今回も前回と同じ飯島(奈美)さんがフードコーディネーターで、ご飯を作ってくださったんですけど、それがおいしくて。三人で食べたお鍋もね。
桜井:とっちゃなげ汁ですね。
加賀:そうそう。それを本当においしくいただきました。


■「大きな声で歌いながらの入浴シーンが楽しかった」(加賀)
――旬のものをいただく薬膳ごはんも本作の見どころですが、皆さんが個人的に夏を健やかに乗り切るために食べているパワーフードはありますか。
桜井:私は、ゴーヤですね。大好きなんです。
加賀:そうなの? 私はダメ。どうやって食べるとおいしんだろうって思っちゃう。
桜井:私の食べ方は、ゴーヤを切って塩もみして軽くゆでて、ごま油と塩、ごま、一味唐辛子をかけて、ナムルみたいな感じでいただくことが多いんですけど、毎年10本くらいお取り寄せして、タッパーにいくつか作り置きしています。それこそ旬の食材なので、夏バテにも効果があるような気がするんですよね。
宮沢:僕は、ぬか漬けです。あとは米麹とか塩麹のソースみたいなものを作って瓶詰めしたりして。それを魚に塗って1日漬けこんで翌日に焼くのもおいしいんですよ。アレンジができるので、それも楽しくて元気が出るというか。でも、やっぱり夏はぬか漬けかな。夏野菜もおいしいですし。
桜井:そこにゴーヤも加えてみてほしい(笑)。
宮沢:ゴーヤはまだ漬けたことがないですね。どんな味になるんだろう(笑)。
加賀:私は、やっぱり冷やし中華みたいなものをさっぱりといただくのがうれしいんだけど、加茂なすを作っている友達が京都にいて、毎年贈ってくれるの。それを見ると夏なんだなと感じますね。この加茂なすを食べて、初めて「なすってこんなにおいしいものなのか」と思ったくらいにとてもおいしいんです。焼きなすにしたり、ゴマを使ってみたりして食べています。
――では、最後に今回の特別編の見どころをお願いします。
加賀:今回は、皆さんが懐かしいと思うような入浴シーンがあるんですよ。鈴さんが大きな声で歌いながらお風呂に入っているシーンで、すごく緊張したけど楽しかった。実は、私はこういう入浴シーンは初めてで、ちょっとうきうきもして(笑)。鈴さん的な見どころは、そこですね。
宮沢:その鈴さんの歌声を司が聞いているというのも、この作品らしいんですよね。せわしない毎日を過ごしていらっしゃる方も多いと思いますが、この作品の中にはゆっくりと時間が流れる穏やかな世界がありますので、ちょっとした息抜きや自分の時間を楽しむひとときとして楽しんでもらえたらうれしいです。
桜井:前回に引き続き、この3人の空気感を楽しんでいただきたいですが、新たに登場するキャラクターもいます。また違った視点での物語を楽しんでいただけると思いますので、そこにもぜひ注目してください。「しあわせは食べて寝て待て」らしい、温かくてささやかな“しあわせ”を、今回も感じていただけると思います。



◆撮影=岡田健/取材・文=吉田光枝

