ノロウイルス性胃腸炎の治療
ノロウイルスに対する抗ウイルス薬はまだありません。そのため治療は症状を和らげるための対症療法が中心になります。
一番大切なことは、下痢や嘔吐による脱水を防ぐため水分や電解質を補うことです。安静にして休養することも大切です。症状に応じて吐き気止めや整腸剤を使うこともあります。
多くは数日で自然に回復しますが、重症化しやすい小さな子どもや高齢者では、入院して点滴を受けることもあります。
ノロウイルス性胃腸炎になりやすい人・予防の方法
日本では、ノロウイルスは毎年冬を中心に流行します。国の調査では、12月から3月が感染のピークとされ、多くの集団食中毒や家庭内感染が報告されています。
例えば2005年には、食中毒事件全体の約18%がノロウイルスによるもので、患者数では全体の3割以上を占めました。
ノロウイルスは少量でも感染する力が強く、胃酸や熱、消毒に対してもある程度の強さを持っています。そのため、以下の対策が重要です。
手洗いの徹底
調理や食事の前、トイレの後は石けんで丁寧に手を洗う。
食品の十分な加熱
カキなどの二枚貝は85℃以上で1分以上加熱する。
吐物や便の適切な処理
使い捨て手袋やマスクを着け、ペーパータオルで拭き取り、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で消毒する。
調理器具の衛生管理
包丁やまな板をしっかり洗い、熱湯や漂白剤で消毒する。
感染者の配慮
症状がある人は食品を扱わない。症状が治まった後もしばらくは注意する。
また、感染症法では、「感染性胃腸炎」として5類感染症に分類され、全国の特定施設から毎週患者数が報告されることになっています。また、食中毒が疑われる場合は、24時間以内に保健所に届け出るよう定められています。
参考文献
片山和彦「ノロウイルス感染症」(国立感染症研究所、最終閲覧日2025年8月22日)
矢崎義雄 et al.「内科學第11版」(朝倉書店、2017年) 336ページ

