カリウムには血圧を正常に保つ効果や、筋肉・心臓の正常な機能を支える役割があります。一方で、腎臓の機能が低下している方では、カリウムの排出が難しくなり「高カリウム血症」を引き起こす可能性があります。高カリウム血症は筋力低下や不整脈、さらには心停止につながる深刻な状態です。自分の身体の状態を把握したうえで、適切な量を取り入れることが大切です。

監修管理栄養士:
武井 香七(管理栄養士)
保有免許・資格
管理栄養士資格
ほうれん草に含まれるシュウ酸の基礎知識
このセクションでは、ほうれん草特有の成分として知られるシュウ酸(しゅうさん)について、その性質と身体への影響の基本を解説します。シュウ酸はほうれん草の「えぐみ」の原因でもあり、調理の工夫によってその影響を大きく変えることができます。
シュウ酸とはどのような物質か
シュウ酸とは、植物に含まれる酸味やえぐみを持つ成分の一種で、ほうれん草のほかにも、タケノコや里芋などの野菜に含まれています。ほうれん草は、このシュウ酸を特に多く含む野菜として知られており、その含有量は他の多くの野菜よりも高い傾向にあります。生のほうれん草をそのまま食べると感じる独特の「渋み」や舌のざらつきは、このシュウ酸によるものです。
シュウ酸は、食事から摂取されると、胃や腸のなかでカルシウムなどのミネラルと結びつきやすい性質を持っています。カルシウムと結びつくと「シュウ酸カルシウム」となり、水に溶けにくく、腸から吸収されにくい塊(かたまり)に変化します。そのため、せっかく食事からとったカルシウムが体内に吸収されずにそのまま排出されてしまう原因となり、カルシウム不足につながる可能性がある点に注意が必要です。
一方、シュウ酸そのものが腸管から吸収されると、血液を通じて腎臓に運ばれ、尿中にシュウ酸が排出されます。尿中のシュウ酸が多くなると、カルシウムと結合してシュウ酸カルシウムの結晶が形成されやすくなります。この結晶が集まって固まったものが腎臓結石(じんぞうけっせき)の一種であるシュウ酸カルシウム結石で、腎臓結石の大部分はこのタイプとされています。
ほうれん草に含まれるシュウ酸の量と調理による変化
ほうれん草100gあたりに含まれるシュウ酸の量はおよそ700〜800mgとされており、これは野菜のなかでも多い水準です。ただし、シュウ酸は水溶性の成分であるため、ゆで調理によって大幅に減少させることが可能です。ほうれん草をお湯でゆでると、シュウ酸の30〜60%程度が湯に溶け出すとされており、ゆで時間や水の量によってその割合は変わります。
具体的な調理のポイントとしては、たっぷりの湯でゆでた後に水にさらすという一般的な調理法が、シュウ酸を減らすうえで効果的とされています。ゆで時間は2〜3分程度が目安とされており、長くゆですぎると栄養素(ビタミンCなど)の損失も大きくなるため、適切な時間での調理が望まれます。また、電子レンジを使って加熱する場合は水にさらす工程が取りにくいため、シュウ酸の除去という観点からは湯でゆでる方法の方が適しています。
シュウ酸を多く含む野菜を継続的に大量に摂取することは、腎臓結石のリスクを高める可能性があるとされています。しかし、適切な調理を行い、一般的な食事の範囲内でほうれん草を食べる場合は、健康な方にとって過度に心配する必要はないと考えられています。問題となるのは、ほうれん草を生のまま大量に食べる場合や、腎臓の機能に問題がある場合、あるいは過去に腎臓結石を経験した方などです。
まとめ
ほうれん草は豊富な栄養素を持つ優れた野菜ですが、カリウムやシュウ酸という成分が身体に与える影響は、個人の健康状態によって大きく異なります。健康な方にとっては積極的に摂りたい食品である一方、腎臓病をお持ちの方や腎臓結石を経験した方にとっては、調理方法や摂取量の管理が欠かせません。「ゆで調理+水さらし」でカリウムとシュウ酸を減らす、カルシウムと組み合わせる、1日の摂取量に注意するといった工夫を取り入れつつ、腎臓の状態が気になる方はぜひ腎臓内科にご相談ください。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
文部科学省「食品成分データベース」
日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」
日本泌尿器科学会「尿路結石症診療ガイドライン2023年版」
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