網膜症を早い段階で見つけるには、定期的な眼科での検査が欠かせません。眼底検査・蛍光眼底造影検査・OCTなど、目的に応じたさまざまな検査があり、それぞれ異なる情報を得ることができます。どのような検査が行われるのかをあらかじめ知っておくことで、受診の際の戸惑いを減らすことにつながるでしょう。

監修医師:
柳 靖雄(医師)
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。
糖尿病網膜症の検査と診断方法
網膜症の早期発見には、適切な検査が欠かせません。このセクションでは、眼科で行われる検査の種類と、それぞれどのような情報が得られるのかについて解説します。
眼底検査・蛍光眼底造影検査とは
眼底検査は、眼底鏡や眼底カメラを用いて網膜の状態を直接観察する検査です。散瞳薬(さんどうやく)を使って瞳孔を開いた状態で行うことが多く、網膜の血管や出血・白斑の有無を確認します。
蛍光眼底造影検査は、腕の静脈から蛍光色素(けいこうしきそ)を注入し、それが眼底の血管に流れ込む様子を連続的に撮影する検査です。この検査によって、血管の閉塞(へいそく)や血液の漏れ、新生血管の有無などを詳しく確認することができます。単純な眼底検査では確認しにくい変化も検出できるため、網膜症の進行度の評価や治療方針の決定に用いられます。
散瞳薬の効果は通常4〜5時間程度続く(個人差があります)ため、その間は視界がぼやけたり、光がまぶしく感じられたりすることがあります。そのため検査当日は車の運転を控えることが必要です。
OCT(光干渉断層計)による網膜断面の観察
OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層計)は、光を使って網膜の断面を高精細に撮影できる検査機器です。特に黄斑浮腫の診断や、網膜の層構造の変化を確認するうえで非常に有用とされています。
体への負担が少なく短時間で行えるため、定期的なフォローアップに広く活用されています。抗VEGF薬治療の前後など、治療の効果を評価する際にも用いられることがあります。
視力検査・眼圧検査との組み合わせ
網膜症の評価には、眼底検査や造影検査に加えて、視力検査や眼圧検査も組み合わせて行われます。視力検査では網膜症の影響による視力低下の程度を確認し、眼圧検査では緑内障(りょくないしょう)など合併しやすい眼疾患の有無もスクリーニングします。
増殖網膜症が進行すると、虹彩や隅角に新生血管が生じる血管新生緑内障を合併し、眼圧が上がって視機能を脅かすことがあります。
まとめ
糖尿病網膜症は、高い血糖が続くことで網膜の細い血管が障害される合併症です。初期は自覚症状がほとんどなく、眼底検査で初めて見つかることが少なくありません。進行は単純・増殖前・増殖の段階で捉えられ、これとは別に黄斑浮腫が視力に大きく影響します。治療にはレーザー、抗VEGF薬の硝子体内注射、必要時の硝子体手術などがあり、いずれも内科での血糖・血圧管理とセットで行うことが大切です。費用は多くの場合保険診療の対象で、高額療養費制度や医療費控除の活用も検討できます。糖尿病と診断された方は、目の症状の有無にかかわらず眼科での定期検査を続け、見え方の急な変化があれば速やかに受診してください。
本記事の受診間隔や費用は一般的な目安です。病状や治療内容、自己負担は個人差が大きく、制度も改定されることがあります。最終的な判断は主治医・医療機関の説明に従ってください。
参考文献
厚生労働省「糖尿病の合併症について」
日本眼科学会「糖尿病網膜症診療ガイドライン」
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」
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