警察庁からも異例の反響 狩野Pが語る“犯罪被害者支援”を描く意義と、岡山天音“鴨居”の今後の展開<さよならノワール>

警察庁からも異例の反響 狩野Pが語る“犯罪被害者支援”を描く意義と、岡山天音“鴨居”の今後の展開<さよならノワール>

「さよならノワール」より
「さよならノワール」より / (C)フジテレビ

現在放送中のドラマ「さよならノワール」(毎週火曜夜9:00-9:54、フジテレビ系/FODほかにて配信)。事件解決ではなく犯罪被害者とその遺族の支援にフォーカスした斬新な切り口と、小池栄子演じる夏海と、北香那演じる絵梨子の女性バディの温かい掛け合いが反響を呼んでいる。物語はいよいよ後半戦へと突入するが、本作を手掛ける狩野雄太プロデューサーに、これまでの振り返りと今後の見どころ、制作の裏側について聞いた。

「さよならノワール」は、警視庁西池袋署に新設された「犯罪被害者支援室」を舞台にした警察ヒューマンドラマ。かつて暴力団対策係で活躍した元刑事・黒木夏海と、対人コミュニケーションが苦手な心理学者・白石絵梨子が異色のバディを結成。心に深い傷を負った犯罪被害者に寄り添い、再び前を向いて歩き出せるように支援していく女性たちの奮闘を、ユーモアとシリアスを交えながら繊細に描き出している。

■光の当たりにくい「被害者支援」という題材とバディの距離感

——「犯罪被害者支援室」というテーマで連続ドラマを描こうと思った理由をお聞かせください。

犯罪被害者支援室という存在自体を教えていただいたのは、たしか井上由美子先生からだったと記憶しています。これまでたくさん刑事ドラマは描かれてきましたが、ただ淡々と事件のてんまつが進んでいくだけのドラマにはしたくないという思いが強くありました。そこで「犯罪被害者支援室」にフォーカスを当ててみるのはどうかと井上先生と河毛監督との話し合いの中でアイデアが出てきました。

事件が起きると容疑者や犯人にばかりフォーカスがいき、被害者は世間から忘れ去られがちですが、そこには必ず当事者たちの深い悲しみや、立ち直ろうとする姿があると思いました。そうした心の機微を描くことができれば、これまでにないドラマになるのではないかと思ったのが出発点です。

——大きな事件が起きない中でエンタメとして成立させるのは難しいと思いますが、5話までを終えて手応えはいかがですか。

お二人が演じているのは、非常に複雑で難しいキャラクターです。小池さんも北さんも、毎回、全力で役に向き合ってくださっていて、心から感謝しています。台本というのは文字情報ですから、具体的な声のトーンや細かな振る舞いまでは書かれていないことも多いのです。しかし小池さんと北さんの圧倒的なお芝居の説得力によって、あの繊細な世界観が見事に成立しています。カメラが回っていないところでもお二人が仲良くやってくださっていることも、ドラマにとって良い影響を与えていると感じます。

——ストーリーが進むにつれ、2人の関係性に少しずつ変化が見られます。急激に仲良くなるわけではなく、縮まったり離れたりする過程が非常にリアルです。これは順撮りだったのでしょうか。

部分的にまとめて撮るシーンもあるので完全な順撮りではありませんでしたが、比較的順撮りに近いスケジュールで撮影を進めることができました。距離感については、台本の段階から強く意識していました。エンタメとしては、分かりやすくどんどん仲良くなっていく右肩上がりの関係性を描く方が簡単なのかもしれません。しかし実際の人間関係はそうではないのではと脚本打ち合わせでも議論になりました。「3話くらいまでは、お互いを知っていく過程なので絆が積み上がっていくけれど、4話で意見がぶつかって一度関係が後退してしまう。」といった、今後の2人がどうなっていくのかという議論は、井上先生や河毛監督ともかなり綿密に行いました。

■現場で生まれるアドリブと、コンプレックスを抱えるキャラクターの魅力

——その「うまくいかない感じ」を表現するのは難しいと思いますが、現場では小池さんと北さんで相談しながらお芝居を作られているのでしょうか。

雑談で盛り上がっている時もありますが、基本的には常にお芝居の話をされていますね。お二人だけで話し合うこともありますし、監督やプロデューサーも交えて、どう見せるべきか意見を交わすこともありました。回を重ねるごとに、お芝居以外の部分でも実際に小池さんと来たさんご本人同士の絆が深まっているので、はじめましてのよそよそしい雰囲気から、だんだんと本当の相棒になっていく空気感が画面を通してもプラスに働いているのだと思います。

——アドリブなども多いのですか?

物語を大きく変えるようなアドリブではありませんが、細かいところではちょこちょこと入っています。例えば、支援する対象者のもとへ向かう際に「先生、行くよ」と声をかけるシーン。小池さん演じる夏海が言うのは自然なのですが、北さん演じる絵梨子が「先生、行くよ」と言う時には、なぜかすごく自慢げな表情になったりするんです。そういった細かなニュアンスや空気感は台本には書かれていない部分なので、見ていて本当に楽しいです。

——アドリブは、北さんの方から仕掛けることが多いのですか?

夏海というキャラクターは、過去の事件による複雑なコンプレックスを抱えている設定なので、役柄的に少しアドリブがしづらい部分があると思います。どちらかというと、絵梨子や(戸田恵子演じる)田村貴子といったキャラクターの方が、アドリブを入れやすいポジションなのだと思います。

——最初に台本を読んだ時のイメージと比べ、小池さんの夏海はどのように変化しましたか。

夏海の抱えるコンプレックスを映像としてどう表現するかは、企画段階から非常に高いハードルだと感じていました。しかし、小池さんが見事に演じてくださったことで、非常に説得力のあるキャラクターへと昇華されました。河毛監督と井上先生のタッグといえば「きらきらひかる」(1998年、フジテレビ系)などの名作がありますが、私が子どもの頃に見て「魅力的だな」「いいキャラクターだな」と感じていた登場人物たちと同じくらい、血の通った素晴らしい人物に仕上げていただけて、本当に嬉しく思っています。

■謎めく登場人物たちと、池袋の匂い立つ空気感

——中盤戦から存在感を増しているのが、岡山天音さん演じる鴨居です。彼が登場すると画面がざわつくような不穏な空気がありますが、今後の展開はどうなるのでしょうか。

ネタバレになってしまうので詳しくはお話しできないのですが…。ただ鴨居を追い続けていただければ、「ちょっと驚くような展開」が待ち受けています。鴨居という存在に対して抱いている「不穏さや、引っかかり」は決して間違っていません。ぜひ、このまま見続けていただければ、必ず「見てよかった」と思っていただけるはずです。

——岡山さんのお芝居についてはいかがですか。

いつも真剣に鴨居というキャラクターについて考えてくださっていて「すごい!」と本当に思います。普段から他のキャストとは一線を画す、どこかアンニュイで深い影を背負っているような独特の佇まいを、完璧なトーンで表現してくださっていると思います。鴨居が絵梨子と絡むことには、大切な意味がありますし、2人のシーンは見ていてセリフ以外にもまとっているオーラがすごいので目が離せません。現場でも、岡山さんの役どころについては監督たちと綿密に話し合い、一緒になってあのミステリアスなキャラクターを作り上げてくださったので感謝しかありません。

——渡部篤郎さんも今のところ登場シーンは少ないですが、物語の根幹に関わってくるのでしょうか。

はい。「とても重要な人物です」としか言えないのですが(笑)。小池さん演じる夏海の過去に大いに関わって来るキャラクターなので、物語の根幹に深く関わってきます。

——捜査チームの刑事たちも非常に魅力的です。味方良介さん、眞島秀和さん、濱尾ノリタカさん、荒川良々さんといった面々のバランスが絶妙ですが、キャスティングの狙いを教えてください。

それぞれに明確な意図を持ってオファーさせていただきました。味方さんは、監督と私が以前別のドラマでご一緒させれいただいた時の事もあり、我々が味方さんが演じるキャラクターとしてカッコイイと思う、オールバックの髪型でお願いしました。眞島さんは、一見すると悪そうな雰囲気を漂わせながらも、実は夏海にほのかな片想いをしているという、今までにあまり見たことがない眞島さんを見たいと思いました。濱尾さんは、若手で少し調子に乗っているマル暴刑事の「とっぽい」感じを出してほしいとお願いしました。過去作とは一味違うキャラクターを見せてくれています。

そして荒川良々さんは、所轄の刑事らしい、少し泥臭くて「あんな刑事がいたら怖いよな」と思わせるような、リアルで貫禄のある刑事課長を荒川さんに演じていただいたら面白いと思い、ご出演をお願いさせていただきました。

——舞台を「池袋」に設定したことには、どのような意図があったのでしょうか。

河毛監督が以前、「新宿」を舞台にしたドラマを撮られていたので(笑)「次はどこの街にしようか」と議論していました。上野や六本木、渋谷なども候補に挙がったのですが、最終的に池袋にしようとなりました。池袋は「池袋ウエストゲートパーク」(2000年、TBS系)以降、ドラマでそこまで深く描かれていない印象があり、久々に舞台にしたらフレッシュで面白いのではないかとなりました。実際に私自身も脚本を開発中によく1人で池袋中を歩き回り、東口のラブホテル街や住宅街、さらには椎名町周辺まで足を運んでシナハンを行ったりもしました。

——岡部たかしさん演じる五十畑というキャラクターも、善人か悪人か読めない思わせぶりな存在です。

五十畑は、絵梨子にとっての「師匠」のようなポジションにいる人物です。彼も単なる脇役ではなく、今後の物語を大きく揺るがす出来事に深く関わってくる非常に重要なキーパーソンですし、最後まで大事な役割がいくつもあります。それと、衣装が独特なのは河毛監督のこだわりです。

——味方さん、眞島さん、渡部さんなど、全員が「善にも悪にも転びうる」危うさを持っていて、一瞬も気が抜けません。

出演されている皆さん、本当にお芝居が達者な方ばかりなので、自然と深みが出ているのだと思います。制作側としては、考察をさせようとか狙っているわけではないので、純粋に物語の行方を楽しんでいただければ幸いです。

■警察庁からの反響と、誰もが驚く後半の見どころ

——前半の放送が終了しましたが、視聴者や周囲からの反響はいかがですか?

SNSなどでも「面白い」という声をたくさん拝見しており、本当にありがたく思っています。また驚いたのは、警察庁などの関係機関の方から直接ご連絡をいただいたことです。世の中に刑事ドラマは星の数ほどありますが、警察からコラボ等についてアプローチをいただけることは滅多にありません。結果、今回は警視庁の方とドラマの出演者の対談が実現したりしました。

——視点を変えるだけで、今まで知らなかった支援部署のリアルを知るきっかけになりますね。

犯罪被害者支援は、警察庁だけでなく法務省や厚生労働省、さらには民間の支援団体など、さまざまな機関が連携して取り組んでいる国策としての側面を持つ重要な分野です。ドラマというエンターテインメントの枠組みの中で分かりやすくデフォルメしている部分もありますが、「実際にこうした支援制度や取り組みが存在する」ということを多くの方に知っていただけるだけでも、このドラマを届ける意義があると思っています。

——最後に、後半の見どころを視聴者の皆様へお願いします。

お互いに消えない傷を抱え、欠落を補い合っている夏海と絵梨子の2人が、これからどんな被害者と出会い、支援をしていく中で、関係性を深めていくのか。特に後半では、夏海の過去の事件の真相や、鴨居との因縁、そして渡部さん演じる失踪しているマル暴刑事・山崎の存在など、物語の核心に迫る怒涛の展開が待ち受けています。ぜひ最後までご注目いただければ幸いです。

◆取材・文=磯部正和

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