操作された“脳”と計画された“愛”は本物か――韓国スリラー「家族計画」、特殊能力で制裁を下す爽快感と最後の言葉に驚愕

操作された“脳”と計画された“愛”は本物か――韓国スリラー「家族計画」、特殊能力で制裁を下す爽快感と最後の言葉に驚愕

「家族計画」
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恋人や友達、そして家族は時に問題に直面し、それを“解決”することで愛と絆を深める――。脳(記憶と感情)が愛を生み出す。じゃあ、その“問題”すらも計画されていたら?“脳”すらも操作されていたら?…案外“愛”は簡単に作れるものなのかもしれない。

日本映画「空気人形」などのペ・ドゥナが主演を務める、偽装家族が悪党を制裁する韓国ドラマ「家族計画」(全6話)が、8月19日(水)昼2時よりCSホームドラマチャンネルにてベーシック初放送される。(以下、ネタバレを含む)

■特殊能力を持つ“偽装家族”が戻った街が何だかおかしい…

「心は独自の世界 地獄を天国に変え 天国を地獄に変えうる」(ジョン・ミルトン「失楽園」より)という冒頭から始まる本作は、韓国で2024年11月からCoupang Playで配信され、歴代Coupang Playシリーズの初週視聴数等の記録を塗り替えたスリラードラマ。生き残るため家族になりすました特殊な能力者たちが、彼らを脅かす極悪非道な犯罪者らを制裁する模様を描く。

かつて暮らしていたクムス市に引っ越してきた、動物病院を営む両親と高校生の双子、そして祖父の5人家族。一見どこにでもいる一家だが、引っ越しの道中に起こした事故をきっかけに、開発地域ばかりを狙う連続失踪事件の容疑をかけられ、街の悪党たちと対峙していく。ブレインハッキング能力を持つ母・ヨンス(ペ・ドゥナ)を中心に、家族で力を合わせて事件を“解決”するために奔走する中で、彼らが抱える過去の秘密が少しずつ明らかになっていく――。

■“脳”に異常を抱える主人公の視点で描かれる不穏な世界

“ブレインハッキング”能力を持つ母が主人公の本作は、彼女の視点で物語が進んでいくのだが、ヨンスら家族には特別教育隊出身という共通点がある。特に、ヨンスと夫(リュ・スンボム)は幼馴染で物心つく前から特別教育隊で育ち、凄惨な訓練を受けていた。そんな特別教育隊を脱走してきたのが、この一家である。当時赤子だった双子はもちろんその記憶はないが、ヨンスもまた脱走時のショックやトラウマからか特別教育隊の記憶が曖昧になっていた。そう、“脳”が何かしら異常を起こしている彼女の視点で物語は進んでいくのだ。

■兵器のような彼女が“愛”を知る…?

さらに、ヨンスは特別教育隊という秘密組織のような過酷な環境で育ったこともあってか、感情が乏しく無表情で愛想もない。そんな人間というより兵器のような彼女が“愛”を知り、さまざまな感情を芽生えさせ、育んでいくのである。それこそが“彼女の青写真”でもあった――。

人は同じ世界に生きていても、それぞれの視点で世界を捉える。同じ地で生まれ同じ環境で育ち、同じ景色を見ていても、“天国”と思う人もいれば、“地獄”と思う人もいる。それほど“心”というものは厄介で複雑で、美しくて面白いものだ。たとえ実際には何もなく五感で感じていなくても、“脳”がそうだと認識し、“心”が反応すればそれが現実になってしまう。よく言われる、レモンを想像するだけでその酸っぱさを味わったかのように唾液が分泌される現象と同じだ。

まさにこの理論を使ったのが、ヨンスの特殊能力である“ブレインハッキング”。あまりに強烈で恐ろしい、永遠に相手の脳と心を破壊する能力。だが、もちろん使い方によってはトラウマではなく、愛や喜びといった一見ポジティブな洗脳を行うこともできる。

■絶妙なグロと笑いの塩梅にハマる

偽装家族だった彼女たちが、ヨンスの“解決”を重ねることで、次第に家族としての愛を深め、絆を強固にしていく。思わず顔をひそめてしまうほど痛々しくてグロいシーンもあるし、猟奇的で胸くそ悪い悪人が次々と出てくるのだが、なぜか基本的にはどこかコミカルで笑ってしまう。グロと笑いの塩梅が絶妙で、スリラーなのに重さを感じさせないのだ。気づけば全6話一気に観終わっていた。それも、私たち視聴者がまんまとこの壮大な“家族計画”にハマってしまった証拠だろう。

計画された“愛”は本物だろうか?――そしてその愛が生み出すものは、誰かにとっては“天国”で、誰かにとっては“地獄”である。一家が問題人物を一人ひとり“解決”していく爽快感と、少年漫画のように徐々に深まっていく家族愛への感動。だが、最後に“衝撃”の一言が告げられる。

■“愛”の正体=バイキング

遊園地のバイキングを見ると、ヨンスはトラウマとなっている言葉を思い出す。「上がったり下がったり 楽しそうに見える? でもね、実際に乗ってみると とても怖いのよ」。バイキングは雑に言えば、ただ同じ場所で左右に揺れているだけだ。だが、乗っている人たちはその単純な動きから楽しさや恐怖を感じる。実際にはどこにも移動できない船が上がったり下がったりするだけで心は揺さぶられ、強い感情が引き起こされる。

当初、ヨンスら家族という箱自体には何もなかった。ただ問題と解決という名の上下に揺れていただけで、その箱は今も本当は変わっていないのかもしれない。それでもバイキングに乗っている当事者にとっては、その狭い箱の中で感じた感情が本物になるのだ。

構成・文=戸塚安友奈

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