ほうれん草特有の「えぐみ」や渋みの原因は、「シュウ酸」という成分です。シュウ酸は腸内でカルシウムと結合しやすく、カルシウムの吸収を妨げる可能性があります。また、血液を通じて腎臓に運ばれ、尿中で結晶化すると腎臓結石の原因になることもあります。生のほうれん草100gあたりには約700〜800mgのシュウ酸が含まれており、調理方法の工夫でその量を大幅に減らせます。

監修管理栄養士:
武井 香七(管理栄養士)
保有免許・資格
管理栄養士資格
ほうれん草のシュウ酸が身体に与える影響
このセクションでは、ほうれん草のシュウ酸が身体のなかでどのように作用するか、特に腎臓結石との関係や日常生活での注意点について詳しく解説します。シュウ酸の影響を正しく知ることが、健康的な食習慣への第一歩です。
シュウ酸と腎臓結石の関係
腎臓結石とは、尿のなかに含まれるさまざまな成分が結晶化し、腎臓や尿路に石のように固まる状態のことです。日本において腎臓結石の患者さんは増加傾向にあり、男性に多く、生涯に一度は経験する割合が約15%に上るとされています(日本泌尿器科学会)。腎臓結石の種類のなかで最も頻度が高いのがシュウ酸カルシウム結石で、全体の約70〜80%を占めるとされています。
シュウ酸カルシウム結石が形成されるメカニズムは次のように考えられています。食事から摂取されたシュウ酸が腸管から吸収され、腎臓でろ過されて尿中に排出されます。このとき尿中のシュウ酸濃度が高くなると、カルシウムと結合しやすくなり、シュウ酸カルシウムの結晶が形成されます。結晶が腎臓の内部に蓄積すると、石として成長し、尿管(にょうかん)を通るときに激しい痛みを引き起こします。
ほうれん草のシュウ酸がこの結石形成に直接関与する可能性があるため、腎臓結石を繰り返す方や過去に経験のある方は、ほうれん草の摂取量や調理方法に特に注意が必要です。また、水分摂取量が少ない場合は尿が濃縮されてシュウ酸濃度が上がりやすくなるため、十分な水分を摂ることも腎臓結石の予防において重要とされています。
シュウ酸の影響を和らげるための食習慣
シュウ酸の影響を和らげるためには、いくつかの食習慣の工夫が有効とされています。まず重要なのが、カルシウムを同時に摂るという点です。腸管内でシュウ酸とカルシウムが結合すると、シュウ酸カルシウムとして便として排出されやすくなります。これにより腸管からのシュウ酸の吸収が抑えられ、尿中シュウ酸濃度が下がることが期待できます。ほうれん草を食べる際に、乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルトなど)や豆腐などのカルシウムを含む食品を組み合わせることは、理にかなった食べ方といえます。
水分摂取も欠かせない対策の一つです。1日に十分な量の水分を摂ることで尿量が増え、尿中のシュウ酸濃度が薄まるため、結晶が形成されにくい状態を保てます。一般的に成人では1日1.5〜2リットル程度の水分摂取が目安とされており、汗をかく季節や活動量が多い場合はさらに多くの水分摂取が望まれます。
※ただし、腎臓病などで医師から水分制限を指示されている場合は、必ずその指示に従ってください
さらに、ほうれん草の調理時には前述のとおりゆで調理を基本とし、ゆで汁を捨てて水にさらす工程を取り入れることが、シュウ酸を減らすうえで効果的です。生のほうれん草を大量に摂取する食べ方(スムージーなど)は、シュウ酸を多く摂取する可能性があるため、腎臓結石のリスクがある方は注意が必要です。日常の食事として適量を調理したほうれん草を食べる場合は、過度に心配する必要はありませんが、食べ方の工夫をこころがけることが健康維持につながります。
まとめ
ほうれん草は豊富な栄養素を持つ優れた野菜ですが、カリウムやシュウ酸という成分が身体に与える影響は、個人の健康状態によって大きく異なります。健康な方にとっては積極的に摂りたい食品である一方、腎臓病をお持ちの方や腎臓結石を経験した方にとっては、調理方法や摂取量の管理が欠かせません。「ゆで調理+水さらし」でカリウムとシュウ酸を減らす、カルシウムと組み合わせる、1日の摂取量に注意するといった工夫を取り入れつつ、腎臓の状態が気になる方はぜひ腎臓内科にご相談ください。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
文部科学省「食品成分データベース」
日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」
日本泌尿器科学会「尿路結石症診療ガイドライン2023年版」
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