市販の頭痛「薬」で悪化?“やめる”目安になる「月10日」と『3つのリスク』

市販の頭痛「薬」で悪化?“やめる”目安になる「月10日」と『3つのリスク』

頭痛が起きるたびに市販の鎮痛剤を手に取る方は少なくありません。手軽に購入でき、服用後に楽になるため、日常的に使い続けているケースも見受けられます。しかし、使い方を誤ると「薬物乱用頭痛」と呼ばれる状態に陥り、かえって頭痛が増えてしまう可能性があります。このような悪循環の仕組みと、見直しが必要なサインについて解説します。

郷 正憲

監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)

徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

市販の鎮痛剤(頭痛薬)をやめるべき理由と判断の基準

市販の鎮痛剤は、適切に使用すれば頭痛の症状を和らげる有用な薬です。しかし、使用頻度が高くなるほど身体がその薬に慣れていき、薬が切れると新たな頭痛が起きやすくなる悪循環に入る場合があります。このセクションでは、なぜ市販の鎮痛剤をやめる必要が生じるのか、またどのような状態になったら立ち止まって考えるべきなのかについて解説します。

薬物乱用頭痛(MOH)とはどのような状態か

「薬物乱用頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)」とは、頭痛を抑えるために鎮痛剤を繰り返し使用した結果、逆に頭痛がより頻繁に起きるようになってしまう状態のことを指します。日本頭痛学会をはじめとする専門機関でも広く認識されている疾患概念であり、慢性頭痛の方の中にこの状態が隠れているケースは珍しくありません。

薬物乱用頭痛の仕組みは、脳の痛みを感じる回路の変化によるものと考えられています。鎮痛剤を頻繁に使用することで、脳が「痛みへの警戒」を強める方向に変化し、薬が体内からなくなるたびに新たな頭痛シグナルを発しやすくなります。「特に、処方薬であるトリプタン系の薬や、市販の鎮痛剤に含まれるアセトアミノフェン、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などを含む市販の鎮痛剤を、月に10日以上継続的に使用すると、このリスクが高まるとされています。

頭痛が起きるたびに薬を飲むという行動は一見自然に思えますが、月に10日以上という使用頻度が3ヶ月以上続いている場合は、薬物乱用頭痛の可能性を疑うことが推奨されます。この段階で一度立ち止まり、医療機関を受診することが大切です。薬を自己判断でいきなりやめると離脱症状として一時的に頭痛が強くなることもあるため、医師の指導のもとで対処する必要があります。

鎮痛剤の常用によって生じる身体へのリスク

市販の鎮痛剤を長期間・高頻度で服用すると、頭痛への影響だけでなく、全身への影響も出てくることがあります。代表的なリスクとして挙げられるのが、胃腸への負担です。NSAIDs系の鎮痛剤(イブプロフェンやアスピリンなど)は、胃の粘膜を保護するプロスタグランジンという物質の生成を抑制する働きがあるため、空腹時の服用や長期服用によって胃炎や胃潰瘍を引き起こす可能性があります。

また、腎臓への負担も見逃せません。NSAIDs系の薬を継続的に服用すると、腎臓の血流調節機能に影響を与え、腎機能の低下につながることがあるとされています。特に高血圧や糖尿病、腎臓に持病のある方は注意が必要です。アセトアミノフェンについても、過剰摂取によって肝臓への負担が生じるリスクが指摘されています。

さらに、精神的な依存も考慮すべき問題です。頭痛が起きた際に「とりあえず薬を飲めばいい」という考え方が習慣化してしまうと、痛みへの不安が常に先立ち、頭痛が起きる前から薬を飲もうとする「予防的服薬」につながる恐れがあります。これは医師の指示に基づく予防投薬とは異なる行動であり、薬物乱用頭痛をさらに悪化させる要因となります。このような状態に気づいたとき、それが市販の鎮痛剤を見直すサインと考えてよいでしょう。

まとめ

頭痛は日常的に経験しやすい症状であるため、市販の鎮痛剤を手軽に使い続けてしまうことは珍しくありません。しかし、使い方を誤ると薬物乱用頭痛という新たな問題を引き起こし、頭痛がかえって増えてしまう悪循環に入るリスクがあります。薬の成分・効果・適正量を正しく理解したうえで、月に10日以上の使用が続く場合や、薬が効かなくなったと感じる場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。頭痛との向き合い方を見直し、薬に頼りすぎない生活を目指すことが、長期的な健康につながります。頭痛に悩んでいる方は、ぜひ一度、専門の医師に相談してみてください。

参考文献

日本頭痛学会「慢性頭痛の診療ガイドライン2021」

医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医薬品に関する情報」

配信元: Medical DOC

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