「高タンパク食」で肝機能に負担?知らずに陥る“過剰摂取”の落とし穴【医師監修】

「高タンパク食」で肝機能に負担?知らずに陥る“過剰摂取”の落とし穴【医師監修】

近年、健康志向の高まりとともに、プロテインサプリメントや高タンパク食品を日常的に取り入れる方が増えています。しかし「タンパク質は多く摂るほどよい」という考えが広まるにつれ、気づかないうちに摂りすぎてしまうケースも少なくありません。なぜ現代の食環境でタンパク質が過多になりやすいのか、その背景と構造的な原因をわかりやすく解説します。

浅川 貴介

監修医師:
浅川 貴介(医師)

【経歴】
2004年私立海城高等学校卒業
2010年私立東邦大学医学部卒業医師免許取得
2012年公益財団法人日産厚生会玉川病院
2016年東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科
2018年医療社団法人七福会ホリィマームクリニック
2022年浅川クリニック
【免許・資格】
・医学博士
・日本内科学会総合内科専門医
・日本腎臓学会腎臓専門医
・日本透析医学会透析専門医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・東京都福祉局認定難病指定医

タンパク質を摂りすぎてしまう原因とその背景

タンパク質が過多になる背景には、食生活の変化や健康情報の広がりが大きく関わっています。このセクションでは、なぜ現代人がタンパク質を摂りすぎてしまいやすいのか、その原因と構造的な背景について解説します。

プロテイン・高タンパク食品の普及と過剰摂取のリスク

近年、筋肉量の維持やダイエット目的でプロテインサプリメントを利用する方が急増しています。スポーツジムに通う方だけでなく、在宅ワーク中の手軽な栄養補給としてプロテインドリンクを取り入れる方も少なくありません。コンビニエンスストアでも「高タンパク」「プロテイン入り」と表記された食品が広く流通しており、意識しなくても1日の摂取量が積み重なりやすい環境になっています。

プロテインサプリメントは1回の摂取量に20〜30g程度のタンパク質を含むものが多く、これを食事に加えて1日2〜3回摂取すると、食事から得るタンパク質と合算して1日の必要量を大きく超えることがあります。たとえば、体重70kgの成人男性の場合、厚生労働省の基準による1日に必要なタンパク質量の推奨量は65g程度とされていますが、プロテインを複数回使用し、肉・魚・卵・乳製品なども普通に食べると、総摂取量が150gを超えることも珍しくありません。

高タンパク食品には鶏胸肉や卵、牛肉、魚、大豆製品など多様な種類があり、それ自体は質の高い栄養素を含む優れた食品です。しかし「タンパク質は多く摂るほどよい」という誤解が広まった結果、身体が必要とする量を超えた摂取が習慣化してしまう方もいます。身体が一度に利用できるタンパク質には上限があり、使いきれなかった余剰分は代謝産物として処理されるため、CKD、蛋白尿、糖尿病、高血圧がある人は注意が必要です。

食事バランスの偏りと「タンパク質神話」の影響

「糖質制限ダイエット」や「ローカーボ食」が広く知られるようになったことで、炭水化物を減らしてタンパク質や脂質を増やす食生活を実践する方が増えました。糖質制限そのものに一定のエビデンス(根拠)があることは確かですが、炭水化物を極端に制限するあまり、タンパク質を過剰に摂取してしまうケースも報告されています。

また、「タンパク質は多く食べても太らない」「余分なタンパク質は尿として排出されるだけ」という情報が一人歩きしている側面もあります。実際には、タンパク質も1gあたり約4kcalのエネルギーを持つため、過剰に摂って消費されなければ体脂肪として蓄積されます。また、分解の過程で発生する窒素化合物(尿素などの老廃物)の処理は腎臓と肝臓が担っており、長期的な過剰摂取はこれらの臓器に継続的な負荷をかけ続けることになります。健康な方であれば一時的な過剰摂取が直ちに重篤な障害を引き起こすわけではありませんが、もともと腎機能や肝機能に不安がある方にとっては特に注意が必要です。

食事バランスの偏りは、タンパク質の過剰摂取だけでなく、食物繊維やビタミン・ミネラルの不足にもつながります。タンパク質を増やす一方で野菜や穀物が減ると、未消化のタンパク質が腸内の悪玉菌のエサとなって腸内環境の乱れや便秘を引き起こしたり、骨密度の低下などの二次的な問題が生じる可能性もあります。栄養摂取はバランスが重要であり、特定の栄養素だけを極端に増やす食事スタイルには慎重な見直しが求められます。

まとめ

タンパク質は身体にとって欠かせない栄養素ですが、必要量を大幅に超えた過剰摂取は腎臓・肝臓への負担や、クレアチニン値の上昇といった腎機能への影響につながる可能性があります。適正量の目安を把握し、食事全体のバランスを整えることが大切です。クレアチニン値の上昇や腎機能の低下が指摘された場合は、自己判断で対処するのではなく、腎臓内科や内科への相談を検討してください。日々の食事を少しずつ見直すことが、健康な身体を長く保つための確かな一歩となります。

参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

厚生労働省「慢性腎臓病(CKD)について」

国立循環器病研究センター「食事療法について」

日本腎臓学会「CKD診療ガイドライン2023」

配信元: Medical DOC

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