
旅――あなたはどんなときにどのくらいの長さ、どこに行きたくなるだろうか?日常の現実から1日だけ非日常の旅へと赴くヒーリング旅行記「パク・ハギョンの旅行記」(全8話)が、8月21日(金)昼2時よりCSホームドラマチャンネルにてベーシック初放送される。(以下、ネタバレを含む)
■消えたい日、1日だけの旅へ――共感と癒やしの物語
本作は、イ・ナヨンが主演を務める韓国ドラマ。主人公は、平凡だが生徒の気持ちに寄り添う高校の国語教師・パク・ハギョン(イ・ナヨン)。日々真面目に過ごしていても、時には「今この瞬間、消えてしまいたい」と思うようなストレスや疲労が溜まることもある。
そんなとき、彼女が選ぶのが“1日だけの旅”。韓国国内のさまざまな都市へ赴き、その土地を歩き回り、名物料理を食べ、一時の癒やしを満喫する。その地に流れる時間と空間に身を委ね、ぼーっと心を解き放つハギョンの姿は、慌ただしい日常を送る私たちの心にも優しく寄り添ってくれる。
■主人公と一緒に巡る…画面越しに体感する韓国ローカル旅
本作の大きな魅力の一つが、1話につき一つの旅先を描く1話完結のスタイルだ。全8話を通して、ハギョンとともに釜山(プサン)、ソウル、済州島(チェジュド)、慶州(キョンジュ)など韓国国内の8カ所の都市を巡る疑似体験を味わうことができる。
ガイドブックに載っているようなメジャーな観光地だけでなく、その土地ならではの美しい景色やローカルフード、風情のある街並みが丁寧に描写されていて、まるで自分自身がハギョンと一緒に旅行をしているかのような没入感に包まれる。特別な目的があってもなくてもいい。ただその土地を歩いて、食べて、接して、身を置くだけで心が満たされていく――まさに旅の醍醐味そのものがここに詰まっている。
■ク・ギョファン、シム・ウンギョン…一期一会を彩る豪華俳優陣
旅先でハギョンを待っているのは、まさに“非日常”。予測不可能な瞬間と偶然の出会いだ。そして、その一期一会のドラマを彩る豪華なゲストキャスト陣も見逃せない。
映画「サヨナラの引力」などで注目を集めるク・ギョファンや、「エージェントなお仕事」のソ・ヒョヌ、映画「ミナリ」のハン・イェリ、映画「新聞記者」をはじめ日本でも活躍するシム・ウンギョンなど、主演級の俳優たちが続々と登場。さらに、「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」のキル・ヘヨンや「ヒョンジェは美しい~僕が結婚する理由(わけ)~」のパク・インファンといった実力派・ベテラン勢も。韓国俳優に詳しくなくても、“どこかで見たことあるぞ”という顔にきっと出会うはず。韓国国内の旅行を楽しみながら、そんな知ってる誰かを探すのも少しコアな醍醐味だ。
旅先で偶然すれ違う個性的で存在感のある人々。実力派キャストたちの自然体な演技が、旅先での出会いの尊さをより深く魅力的に引き立てている。彼らとハギョンが交わす何気ない会話や一時の交流は、互いの人生に時に小さな温もりを、時に小さな切なさを、時に小さな答えを残していく。
それは、たとえ名前も知らない、明日には顔もボヤっとしてしまうような本当に些細な出会いであっても、間違いなく心の奥底に刻まれている。旅先での出会いは皆、奇跡。だからこそ、もう二度と会うことはないかもしれないが、彼ら彼女らは“特別”なのだ。
そして、彼らと出会うことでその旅の色が鮮やかになるから面白い。全8話、ハギョン自体は同じトーンで旅をしているのに、テーマが時には恋で時には信仰で時には芸術で時には友情…と各話ごとにガラッと変わる。土台は癒やしで同じなのに全く違うリズムとジャンルが生まれる感じが、人生を凝縮しているようでドラマとしてもクセになる。
■マッド・トラベラーズと私――あなたが旅をする理由は?
19世紀末のフランスには、「マッド・トラベラーズ」と呼ばれる、突然すべてを捨てて旅に出る人々が続出したという。それは旅に魅入られたのか、それとも現実を見られなくなったのか、はたまた全く思いもよらないような何かなのか…人が旅に出る理由はさまざまだ。
本作では毎話、「消えたくなった時に行く たった1日の旅 歩いて 食べて ぼーっとできたなら…」というハギョンの静かなナレーションから物語という名の旅が始まる。彼女にとっての旅は、日常で擦り減った自分を取り戻すためのささやかな逃避行であり、充電の時間なのだろう。
筆者自身は、旅に出る理由は人生の刺激を摂取するためだ。非日常と不便と新しさの中での日常でしか得られない世界の拡張がある(と思っている)ため、私の旅スタイルは海外に1カ月以上滞在するという長期一発型。1日だけ国内旅行を頻繁に楽しむハギョンとはある意味真逆と言える。
つまり、一人ひとりにそれぞれの旅のスタイルや理由がある。画面越しにハギョンの足跡を追いかけながら、「自分なら今どこへ行きたいだろうか」「自分にとっての旅とは何だろうか」と思いを馳せてみるのも、この作品がくれる贅沢な時間なのかもしれない。
旅――あなたにとってはどんな意味を持つものだろうか?さまざまな事情で旅が苦手な人や、今は気軽に楽しめない人、あるいは断然お家派という人もいるはずだ。旅が好きな人もそうでない人も、この機会に一度、ハギョンと共に疑似旅行してみてはいかがだろうか。どんな人にとっても、きっとここでしか生まれない何かを得られるはずだ。
構成・文=戸塚安友奈

