適応障害は、ある環境や出来事による強いストレスが原因で心身に不調が生じる疾患です。近年、仕事や職場の人間関係などが原因で適応障害を発症するケースが注目されています。「もしかして適応障害かも?」と思ったら、正しく理解し早めに対処することが大切です。
本記事では、適応障害の主な症状や原因、特に仕事が要因となる状況、そして適応障害になったときの対処法や職場復帰のポイントを解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。
適応障害の症状と原因

適応障害の主な症状を教えてください
適応障害では、精神面と身体面の両方にさまざまな症状が現れます。主な精神症状には、気分の落ち込み(抑うつ気分)、不安、イライラ、集中力の低下などがあります。身体症状としては、めまい、頭痛、倦怠感、食欲不振、不眠といった不調が出ることも特徴です。これらの症状はうつ病にも似ていますが、適応障害の場合は明確なストレス要因に反応して起こり、原因となるストレスから離れると症状の改善が期待できる点が特徴です。
適応障害を発症するメカニズムを教えてください
適応障害は、過度なストレスに対する心身の反応が長期間続いた結果、生じると考えられています。人間はストレスに対抗することで一時的に頑張れますが、ストレスが慢性的に続くとストレスにうまく対処できなくなります。その結果、疲労感や倦怠感、食欲不振、不眠、めまい、抑うつ気分などの症状が現れるようになります。このようにストレスに対処しきれなくなった状態で心と身体の不調が出るのが適応障害です。
適応障害になりやすい状況や仕事

仕事が原因で適応障害を発症することはありますか?
はい、仕事上のストレスは適応障害の大きな要因になりえます。実際、日本では適応障害の増加傾向が指摘されており、特に職場環境への不適応が原因で発症するケースが多いとされています。例えば、職場での過重労働や人間関係のトラブルが続くと、それが強い心理的ストレスとなって適応障害に陥ることがあります。仕事のプレッシャーや責任が重すぎる状況、ハラスメントを受けている状況などでは、心身がストレスに耐えきれず発症することがあります。
参照:『日本における「適応障害」患者数の増加』(社会政策学会誌『社会政策』)
どのような状況で適応障害になりやすいですか?
適応障害は生活環境の大きな変化やストレス要因によって引き起こされる傾向があります。具体的には、以下のような状況になることがあります。
適応障害を発症しやすい状況 具体例
環境の変化 就職・転職、転勤、引っ越し、結婚、出産など
人間関係の問題 職場での上司あるいは同僚とのトラブル、いじめ、失恋など
役割・業務の
プレッシャー
昇進による責任増加、大きなプロジェクトの失敗など
こうした出来事が重なり、本人のストレス耐性を超えてしまうと適応障害を発症してしまいます。
適応障害になりやすい職場環境や業務の特徴を教えてください
適応障害を誘発しやすい職場にはいくつか共通する特徴があります。例えば以下のような環境や業務が挙げられます。職場で適応障害を発症しやすい要因 内容
長時間労働・過重労働 慢性的な残業や休みなしの勤務が続くことで強いストレスとなる
ハラスメントの存在 パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなど、いじめ・嫌がらせがある
サポートの欠如 上司や同僚から支援が得られず孤立しやすい、相談相手がいない
業務内容のミスマッチ スキルや適性に合わない配置、急な部署異動で馴染めない
人員不足・過度な責任 人手不足で業務が集中する、責任が過度に重いプロジェクトを任されているょ
このような職場では、本人が我慢して頑張り続けた結果として心身に不調をきたし、適応障害に陥ることがあります。特にパワハラや長時間残業に耐え続けると徐々に憂うつ感や不眠などが現れ、やがて出社できなくなることもあります。

