「アルツハイマー型認知症」は”発症の10年以上前”から進んでる?症状と他の認知症との違い

「アルツハイマー型認知症」は”発症の10年以上前”から進んでる?症状と他の認知症との違い

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が徐々に減少し、機能が低下していく病気です。その背景には「アミロイドβ」と呼ばれるたんぱく質の蓄積や、「タウたんぱく質」の異常など、複雑なメカニズムが関わっています。症状が現れる10〜20年前から変化が始まる可能性があるとされており、早期からの理解が大切です。

伊藤 規絵

監修医師:
伊藤 規絵(医師)

旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

アルツハイマー型認知症とは何か|脳で何が起きているのか

このセクションでは、アルツハイマー型認知症の基本的なメカニズムと、脳内で実際に何が起きているのかについて詳しく解説します。病気の全体像と脳の変化を把握することで、食事や運動をはじめとする生活習慣との深い関係がより理解しやすくなります。

アミロイドβの蓄積が引き起こす脳の変化

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が徐々に減少し、脳の機能が低下していく病気です。その主な発症原因として注目されているのが、「アミロイドβ(ベータ)」と呼ばれる特殊なたんぱく質の異常な蓄積です。アミロイドβは健康な方の脳でも日常的に作られますが、通常は分解・排出されるためほぼ溜まりません。ところが加齢や体質、生活習慣など何らかの要因で排出がうまくいかなくなると、まるで「脳のゴミ」のように少しずつ蓄積していきます。

蓄積したアミロイドβは「老人斑(ろうじんはん)」と呼ばれる斑点状のかたまりを作り、周囲の神経細胞にダメージを与えます。これが引き金(カスケード反応)となって、今度は神経の構造を支える「タウたんぱく質」が異常に固まり、神経細胞の内部を破壊していきます。この二つの有害なタンパク質の変化が組み合わさることで、脳の神経細胞はシナプス結合を失って死滅し、脳全体が徐々に萎縮していきます。

重要なのは、これらの脳内の変化が症状(物忘れなど)として現れる10〜20年も前の段階から静かに始まっているとされている点です。記憶力の低下や日常生活への支障を自覚したときには、すでに脳内の神経細胞の破壊がかなり進んでいる場合があります。だからこそ、症状が現れる前の健常な時期や軽度認知障害(MCI)の段階からリスクを正しく理解し、予防的な対策を講じることが大切です。

アルツハイマー型認知症と他の認知症との違い

認知症にはいくつかの種類がありますが、アルツハイマー型認知症は日本国内の認知症全体の約6〜7割を占める最も多いタイプとされています。次いで多いのが脳梗塞や脳出血など脳の血管障害が原因で起こる「脳血管性認知症」です。また、幻視やパーキンソン症状を伴う「レビー小体型認知症」や、感情制御が難しくなる「前頭側頭型認知症」なども知られています。

アルツハイマー型認知症の大きな特徴は、新しい記憶を司る脳の司令塔である「海馬(かいば)」と呼ばれる部位から真っ先に萎縮が始まることです。そのため、古い昔の記憶は保たれているものの、「数分〜数日前の新しい記憶」を保持できない近時記憶(きんじきおく)の障害が最初に現れやすくなります。例えば、体験した出来事そのものや食事をしたこと自体を丸ごと忘れる、同じ質問を何度も繰り返すといった変化が初期段階から目立ちます。

脳血管性認知症では生活習慣病の管理や再発予防によって進行を抑えられる場合があります。一方、アルツハイマー型認知症においては、近年アミロイドβを除去して進行を遅らせる新しいお薬(抗アミロイドβ抗体薬)が登場したものの、減ってしまった神経細胞を元に戻す完全な根本治療法はまだ確立されていません。進行を緩やかにする薬物療法とともに、食事・運動・睡眠といった日々の生活習慣の見直しが、病気の予防や進行抑制において今なお極めて重要な意味を持ちます。

まとめ

アルツハイマー型認知症は、日々の食事・睡眠・運動・人とのつながりといった生活習慣と深く関わっています。特に50代は、ホルモンバランスや生活習慣病のリスクが重なる重要な時期です。脳を守るための行動を早めに始めることが、発症リスクの軽減につながる可能性があります。気になる症状がある方は、脳神経内科や物忘れ外来にご相談ください。今日からできる小さな習慣の積み重ねが、将来の脳の健康を支えます。

参考文献

厚生労働省「認知症施策推進大綱」

国立長寿医療研究センター「認知症の予防」

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2026」

配信元: Medical DOC

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